堀込泰行

堀込泰行

自分にとって
音楽は小さな総合芸術

なるほど。そして、2014年からはご自身の名前でソロ活動を本格スタートされましたが、馬の骨ではなく、堀込泰行名義にしたのはなぜですか?

キリンジをやりながらのソロプロジェクトではなく本業に変わったからです。本名で活動しつつ、馬の骨はいつかサイドプロジェクトをしたいと思った時に使えると思って。自分の名前のほうでは自分にとっての王道の音楽をやって、馬の骨では歌が入っていない音楽とか、前衛的なものをやってみるとかもできるし。

プロジェクトだからこそ自由に挑戦した音楽を作ることができると。

そうですね。馬の骨がそういう実験ができる場所にもできると考えたりしました。

泰行さんの楽曲を改めて聴き直させていただきましたが、特に歌詞が曲を聴くだけでスッと頭の中に入ってきて、世界感を自然と理解しつつ脳内で景色すらも再生されるほどに伝わってくるので、その物語を楽しみつつ、より理解を深めるために歌詞を文字でも追いかけました。この感覚は泰行さんの楽曲だから受けるものだとも思ったのですが、歌詞についてのこだわりはありますか?

ありがとうございます。音楽の歌詞なので一から十まで説明する必要はないと思いながら書いているところもありますね。音楽にはサウンド、リズムなど他にも色々と構成する要素があるので、それらの力を借りることで言葉では描き切れない気分や感情を表現してくれることがあると思います。なので、それらと合わせて魅力的な詩になればいいなと。そうしないと日本語だとメロディーに対して言葉の音数が多くなってしまう傾向があるから、音楽的でなくなってしまうことが多い。日本語は俳句などもそうですが、間引いても何か通じる世界だから、あまり言葉だけで完結するものでもなく、曲調と相まって世界感が伝わるもの、意味が伝わるものになればいいなと思いながら書いていますね。

なるほど。メロディーに合わさる歌詞、でも意味を込めた言葉を音楽に寄りそうかたちで選ばれているから、耳からでも伝わってくるのだと分かりました。さて、泰行さんはデビューから数えると、音楽活動を始めて30年近くになりますが、泰行さんにとって音楽とはどんな存在でしょうか?

もうそんなに長くなるのか~。ヤバいな(笑)。音楽に関しては分からないけど、ここまで続けているので趣味とは言いたくなくて…例えば、子供の時にラジコンが好きだったり、小中学校でサッカーをやってきたりと、その時々で好きなものがありましたが、途中でやめたりして。でも、音楽だけはやめないでいられている感じです。

始まりは趣味や好きなものだったかもしれないですが、そこから仕事という目線でつき合う音楽に対して嫌になったことはなかったのですか?

曲とか音楽的な部分に関しては、自分の自由にやらせてもらっているので、そこに嫌だと思うことはなかったですね。

泰行さんにとっては音楽が自分を表現するひとつの方法になっているのでしょうか?

そうですね。本が好きでも僕は小説が書けないし、映画が好きでも映像作家にはなれないみたいなことがあるけど、音楽をやっていると歌詞を書く必要が出てきたり、音楽は音だけで映像的なものを喚起させたりもするし、物理的にはCDのジャケットにかかわりもできたりするので、自分にとっては小さな総合芸術みたいな感じかな? 自分の好きなものが詰まっていて、全てを表現できるのが音楽だと感じるので、ずっと飽きずに続けられている気がします。

では、最後になりますが泰行さんにとってのキーパーソンは?

なんだかんだ自分の源流を辿って行くと父が必ず出てきますね。家でレコードを鳴らしていたとか、ギターを家に持ち込んだとか、いろんなきっかけを作ってくれた人なので、キーパーソンは父ですかね。

何よりお父様が音楽を好きで、身近に触れる環境を作ってくれていたのが大きなきっかけだったのでしょうね。

いろんなジャンルの曲が子供の頃から家で鳴っている環境だったので、大人になってからもいろんなタイプの音楽を聴いても拒絶反応がなかったりもするし、僕の基礎を作ってくれた人ですね。

取材:岩田知大

OKMusic編集部

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