鮎川 誠(シーナ&ロケッツ)

鮎川 誠(シーナ&ロケッツ)

鮎川 誠(シーナ&ロケッツ)
- Key Person 第4回 -

初めてバンドでギター弾いた時、
それまでの全てが飛んでいくくらいの
最高の世界があって、今日に至る

J-ROCK&POPの礎を築き、今なおシーンを牽引し続けているアーティストにスポットを当てる企画『Key Person』の第4回は、シーナ&ロケッツのリーダーである鮎川 誠(Vo&Gu)。1978年のバンド結成以降40年以上にわたってロックを鳴らし続ける鮎川だが、音楽を楽しむ感覚は幼い頃から変わっていない様子だった。ギターとの出会いや、初めてのバンド演奏をはじめ、インターネットやサブスク配信で音楽を聴く今の時代について訊いた他、さまざまな人と出会う中で“Key Person”となった人物を挙げてもらった。

鮎川 誠 プロフィール

アユカワマコト:伝説のめんたいロックバンド、サンハウスのメンバーとして活躍し、現在はシーナ&ロケッツでロックンロール・ダンディを体現し続けるギタリスト。日本人離れしたルックスもそうだが、細身の長身でギターをガシッと構える姿がこれほどさまになる男もいないだろうし、ブリティッシュビートやブルース、パブロックなどに根ざしたソリッドなギタープレイには多くの心酔者がいる。グループ活動以外にソロアーティストとしては、これまでに3枚のアルバムを制作。そのどれもがロックに対する深い愛情を体現したものだ。特に93年に発表された『London session #1』『London session #2』は鮎川がこれまでに影響を受けたブルース〜R&Bのカバーアルバムで、ウィルコ・ジョンソンらとともに嬉々とした演奏を繰り広げている。公式サイト(アーティスト)

音楽は交流のきっかけやったし、
友達を選ぶ踏み絵でもあった

小学生の頃にRay Charlesのレコードを購入したそうですが、きっと当時の小学生の間で流行った音楽とは違いましたよね。

違うと思う。流行りの音楽も好きだけど、それが全てとは子供ながらに思ってなかったんだろうね。家にお父さんが持っていたレコードがいっぱいあって、それを分からない英語を読みながらプレーヤーに乗せると音が出るっていう、その全部が好きやったんです。僕はとても音楽が好きやったから、歌謡曲も分け隔てなく聴きよったよ。ラジオから流れてくる音楽はいい曲ばっかりやった。若山 彰とか、三浦洸一とか、三橋美智也とか、活気があったね。音楽はみんなをつなぐ。でも、ラジオで聴いて、初めて稲妻に打たれたような感覚になったのはRay Charles。それから呪文のように“Ray Charles、Ray Charles”と言ってレコード屋さんを回って、やっと1回聴いた切りやった「What'd I Say」を見付けた。みんなそれぞれ好みは違うから、友達がRay Charlesを知らなくても良かったんですよ。日本で流行った洋楽の曲に日本語の歌詞が付いて、日本のアーティストが歌う時代やったから、文化が融合し始めて、外国の音楽が自然と日本に入ってきた時代やったね。

その頃から音楽にのめり込んでいたんですね。

うん。子供の頃に音楽に出会える環境があったのはすごくありがたかった。ラジオはお母さんと一緒に聴くんですよ。チャンネルを回して、音楽がかかったところで止めてね。その次の日にはいつもより早く学校に行って、音楽好きだけが集まってラジオで聴いた音楽の感想をクラスの片隅で話しよった。音楽は交流のきっかけやったし、人との出会いのきっかけやった。友達を選ぶ踏み絵でもあったし(笑)。

自分もバンドをやろうと思ったきっかけは何だったんですか?

高校3年までは音楽を聴くことに夢中やったし、演奏はどうしていいのか分からん状態で、ずっと憧れやったんです。修学旅行の積み立てたお金が自分の自由になる唯一のお金やったから、友達がエレキギターを売りたいっちゅう時に修学旅行をキャンセルして、そのお金でギターを手に入れたのが高校2年の時。そのギターで聴こえてくる音楽をなぞったり、追いかけたりしよったね。それでもテレビで観る憧れの人たちが弾く音には程遠くて、いろんな友達に技術的なことを教えてもらって覚えていく。高校3年の時、The Beatlesが日本に来て、テレビの生中継で初めてバンドマンが動くのを観たんですよ。たった3人しか前におらんで、後ろにRingo Starrがいて、3人が目配せして“せーの”って演奏を始める。その全てが自分にとってはワクワクするものやったね。でも、それは自分の周りに存在するものではなくて、遥か向こうの夢の世界と思いよった。そしたら夏休みに友達に声を掛けられてバンドの練習場に行ったら、いきなり“弾ける?”ってギターを渡されて、初めて「Day Tripper」を合奏したんです。その場でバンドの一員になって弾いた時、高校生活とか、授業で習ったこととか、通信簿とか、それまでの全てが飛んでいくくらいの最高の世界があって、心をひとつにして演奏できる音楽の素晴らしさに、他のものはどうでもよくなった瞬間でした。それから今日に至る(笑)。54年くらい経ったのかな。それからはバンドの音楽が生涯の喜びです。ひとりでやるのも良かろうと思うんやけどね。それはまだ未知の体験。ずっとバンドでしかできない音楽にこだわってやってきて、レコーディングごとにバンドを変えたりもせず、自分たちで演奏をして、良いも悪いも自分たちで決めて。人に左右されないバンド生活をずっとやってきたね。

OKMusic編集部

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