【hide with Spread Beaver
ライヴレポート】
『hide Memorial Day 2023
"hide with Spread Beaver appear!!
in TOKYO"』
2023年7月27日 at 豊洲PIT
本公演の開演は18時30分予定なのだが、それを待たずして木村世治(ZEPPET STORE)がステージに登場する。I.N.A.とhideの実弟であり所属事務所であるヘッドワックスオーガナイゼーション代表取締役の松本裕士氏に“ちょっと会場を温めてきてくれないか”と言われたとのことで、ミニDJタイムがスタート! hideが刺激を受けた曲というKISSの「ROCKET RIDE」、共演予定だったMarilyn Mansonの「Beautiful People」、かつてhideがカバーしたT-Rexの「20th Century Boy」とThe Damnedの「New Rose」でフロアーを盛り上げる。4曲4様のサウンドではあるが、それらを初耳のリスナーもそのどれもがhideサウンドの血肉になっているものだと実感できた時間だったのではないだろうか。
そして、今度はオープニングアクトとして木村世治がアコギを抱えて再びステージに。まずはZEPPET STOREの代表曲「FLAKE」を披露。《Make Me Happy, Make Me Smile》と歌うやさしい旋律にhideも絶賛していたメロディーセンスを感じずにはいられない。続いて“hideさんが愛してくれた曲をやります”とメジャーデビューシングルでもある「声」を歌唱。やさしく、切なく、メロウで温かいメロディーに会場が酔いしれたたことは言うまでもないだろう。
映像終わりでPCキーボードのパンチ音とインターネットにつなぐモデムのダイヤルアップの接続音が場内に響き、hide with Spread Beaver名義のアルバム『Ja,Zoo』と同じくSEの「SPREAD BEAVER」で幕を開けると、ステージ中央に鎮座するhide愛用のギター、通称“イエローハート”がスポットを浴びる中、メンバーが次々と登場し、JOEのカウントからの「ROCKET DIVE」のイントロダクションがオーディエンスの一色触発状態にあったテンションを着火! 場内をレーザーが彩り、ついに雲の上のhideとの2元中継ライヴが始まった。ステージ後方のビジョンの中に「ROCKET DIVE」のMVシーンのhideが降臨し、K.A.Zがのっけからギターをドライブさせ(KIYOSHIがそんなK.A.Zに駆け寄って頬にキスする場面も!?)、間奏部ではD.I.E.がショルダーキーボードを抱えてステージを駆け回り、フロアーの高揚感をさらに焚きつけていく。そのまま「BACTERIA」「DOUBT'97(MIXED LEMONed JELLY MIX)」とアグレッシブなナンバーが連続投下され、フロアーは序盤から爆上がりし続ける。
明日はもうやってないよ。
やっちゃってくださいな、お客さん!”
ーーhide
そんなhideの言葉を受けて、KIYOSHIが“アツいな、トーキョー! お助け怪人を呼び込みましょうか”とステージにPATAを招き入れる。そして、PATAが鳴らすぶっ太い轟音のギターが「CELEBRATION」のイントロを奏で、JOEとCHIROLYNが繰り出す軽快なビートの上で、3本のギターが痛快なリフを刻むと、それにフロアーは笑顔とワイパーで呼応。会場の床が揺れた。
大阪、横浜とやってきまして、東京ファイナルでございます。
全員で雲の上のhideちゃんとつながって楽しんでいこうぜ!
やっちゃってくれますか?
雲の上のあの人を呼んでみましょうか?
hideー!”
ーーI.N.A.
会場の呼びかけに応えてhideが「限界破裂」をタイトルコール。曲中、2ndツアー『hide solo tour 1996 -PSYENCE A GO GO-』の映像とリンクして、当時と同じく舞踏グループ・友惠しづねと白桃房のダンサーがマッドでセクシーな衣装で登場したことも特筆すべきところだろう。
また、ピンポン玉のラリー音がイントロの「POSE」では、スクリーンに卓球台がCGが写し出され、CHIROLYNとD.I.E.がラケットを手にラリーしたり、「BEAUTY & STUPID」ではカラフルなアフロヘアーのウィッグを被ったダンサーが華やかにパフォーマンスしたりと、視覚的にも楽しませてくれるのはhideのライヴの醍醐味。また、ツアーでは毎公演セトリを変えるなど、hideはお客さんを楽しませることを一番に考えていて、本公演も⼤阪・神奈川公演のセットリストが更新され、新たにD.I.E.のムーディーなピアノの上でhideがシャンソン風に歌う「EYES LOVE YOU(DEATH HOLLYWOOD ver)」を導入に据えた「EYES LOVE YOU」と前述の「BEAUTY & STUPID」「BACTERIA」が追加され、さらにhideのリップシンク映像もブラッシュアップされている。ファンを何よりも⼤切にするhideの意志がしっかりと受け継がれているところにも注目したい。
“ここいるみんなもよ、
俺たちもよ、配信観ている奴らもよ、
みんな、hideが大好きで、大好きで、
hideっていう病気なんだよ。
俺たちみんな、hideっていうクラスターだからよ。
せいぜい感染していこうぜ!
hide、ロックンロールするぞ!!”
ーーKIYOSHI
KIYOSHIがMCで映画『TELL ME 〜hideと見た景色〜』がきっかけでhide with Spread Beaverのワンマンライヴが決定したことに触れ、hideが永眠してから、そして本公演を行なうにあたって松本裕士氏が奮闘し、頑張ったことを労い、過去のツアーの映像を全部観直して誰もが一番楽しめるセットリストを考えたI.N.A.に感謝を述べ、最後に語った上記の言葉が会場をひとつにする。そして、本編ラストを飾った「ever free」のキャッチーなメロディーとポップなサウンドに会場中が笑顔となり、存分に弾けまくるのだった。
インターバルを経て、ミラーボールが回り、シンセストリングスが緩やかに流れる中、ゆっくりとメンバーが登場し、hideの“私はデュエットがしたかった”との前振りから“みんな、元気だった?”とデュエット相手のCHIROLYNが女装するロザンナが姿を見せる(25年の月日の中で体型がぽっちゃりしているのはご愛嬌)。“hideとロザンナ”が復活し、「LEMONed I Scream」をデュエット…なのだが、ステージにはCHIROLYNらしきベーシストの姿も!? なんと映画『TELL ME 〜hideと見た景色〜』でCHIROLYN役を務めたSHINGO☆(SEX MACHINEGUNS)がサプライズ参加していたのである。
ライヴはhideによるメンバー紹介を挟んで、PATAがエレキをアコギに持ち替えてバッキングを務める「HURRY GO ROUND」へ。同曲を聴き入りながらI.N.A.が『Ja,Zoo』の取材の際に“歌詞ができて、録る段階で歌がメインのアレンジに作り直した”と言っていたことを思い出した。だからこそ、こんなにも歌がやさしく届き、こんなにも歌詞がメッセージ性を持って響いてくるのだろう。その後、エッジーでスリリングな「DICE」が投下され、再びフロアーは熱狂を引き起こす。
あと1曲でラストだぜー!
悔いが残んないように、
最後まで死ぬ気で楽しんでくれよー!
いくよ、hideー!”
ーーCHIROLYN
そうCHIROLYNが声を上げる後ろで、PATAがステージに鎮座していたイエローハートに手を伸ばし、ストラップを肩にかける! これがこの日一番のハイライトだろう。このメインで使用していたイエローハートがライヴで⾳を奏でるのは1997年12⽉31⽇に東京ドームで開催されたX JAPANの解散ライヴ『THE LAST LIVE〜最後の夜〜』以来、実に26年振りだ。そして、hideが“じゃあ、最後の曲です。「TELL ME」!”と伝え、空を駆け上がるような威風堂々としたイントロと一緒に金テープが威勢良く放たれる。D.I.E.もシェルキーで前に出て、観客も大合唱で演奏に参加し、ギターソロはもちろんhide×PATAのツインリード。最高潮の盛り上がりの中、大団円を迎えたのだった。
俺も楽しみました”
ーーPATA
いつもは寡黙なPATAも去り際に、そんな言葉を残した本公演。25年振りのhide with Spread Beaverワンマンライヴということで、これまでをリアルタイムで見てきた者にとっては思い入れも強いし、感慨深いものがあるのだが、そういうものを度外視して感じたのは、各メンバーの存在やプレイの素晴らしさはもちろん、やはりhideの残した楽曲の秀逸さだった。『Ja,Zoo』の取材の際にJOEが“バックのアレンジだけでも十分に聴けるようなものを作ろうとする”と言っていた。そのこだわりが楽曲の精度とオリジナリティーを高め、普遍性も生むのかもしれない。しかも、I.N.A.の手によって“2023年ver”に研磨されている。だから、四半世紀も前の楽曲であっても古さを感じさせないのだ。そんなことを改めて実感したライヴでもあった。その余韻を楽しむため、8月3日18:00~8月16日23:59の期間中、uP!!!にて配信されているアーカイブ(見逃し配信)を観るのもいいかもしれない(視聴チケット発売中!)。もしくは12月10日に神奈川・CLUB CITTA'にて開催されるhideのバースデーイベント『hide Birthday Party 2023』に足を運ぶのもいいだろう。
写真提供:(c)HEADWAX ORGANIZATION CO.,LTD./Photo by 田中和子(CAPS)/取材:土内 昇
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