【YOSHIKI ライヴレポート】
『YOSHIKI CLASSICAL 2018
~紫に染まった夜~ YOSHIKI with
Philharmonic Orchestra』
2018年11月15日
at 東京国際フォーラムA
2017年1月の米・カーネギーホール公演以来となった本公演でも、フルオーケストラをバックにケイティ・フィッツジェラルド&アシュリー・ナイトをゲストヴォーカルに迎えながら、幼い頃からのピアノレッスンで培ってきた豊かなクラシックの素養を存分に発揮してくれた。2部構成の前半では『愛・地球博』の公式イメージソング「I’LL BE YOUR LOVE」を皮切りに、「GOLDEN GLOBE THEME」(2012年ゴールデングローブ賞公式テーマソング)、「HERO」(映画『聖闘士星矢 Legend of Sanctuary』主題歌)等、これまでソロとして提供してきた楽曲の数々を披露。その聴く者の心を揺さぶるドラマチックな旋律と荘重なアンサンブルで、ジャンルも国境も超えて彼の音楽が求められる所以を実感させる。
一方、「GOLDEN GLOBE THEME」は大晦日の夜から十数時間ピアノを弾き続けて完成に至ったという裏話を話したり、映画『We Are X』のテーマ曲である「La Venus」の演奏前には“過去は未来によって変えられる”という曲に込めた想いも吐露。素顔の見えるトークで観衆を惹き付けるエンターテイナーとしての一流ぶりにも驚嘆させられる。そして、“彼のように、100年200年経っても受け継がれる音楽を僕も生み出していきたい”と敬愛する作曲家・ベートーヴェンの「MOONLIGHT SONATA」をカバーしたあとは、天皇陛下御即位十年の奉祝曲「ANNIVERSARY」で第1部が締め括られる。交錯する長調と短調が生むダイナミズムに、観ているだけで緊張感が高まるスリリングなピアノ演奏は、威風堂々と会場を包み込んで、平成元年にXとしてデビューした彼の平成に対する感謝の想いを伝えてくれた。
休憩を挟んでの第2部ではクラシックアレンジしたX JAPANの楽曲を中心に届けつつ、チャイコフスキーの「SWAN LAKE」では男女のバレエダンサーが登場して楽曲のドラマを引き立てたり、予定になかったQUEENの「BOHEMIAN RHAPSODY」をピアノだけで即興演奏するシーンも。曰く“子供の時に好きだったアーティスト”のナンバーを、心の赴くままプレイする彼の姿を目撃できたのは、実に貴重なひと時だった。続いて“次は新曲やってみようかな”とYOSHIKIがピアノを弾き始めると、ステージは一気に赤く染まり、上手からHYDEが登場! アニメ『「進撃の巨人」Season3』の主題歌として10月に発表したコラボ作「Red Swan」を、振り絞るようなヴォーカルでエモーショナルに届け、場内から万雷の拍手を浴びる。
その後のMCで“この曲は歌うたびに深みが増していって、今では泣きそうになるくらい。歌詞からYOSHIKIさんの意志や夢が伝わってきて感動するんです”と語っていたが、それこそが歌声の熱さの理由だったのだろう。歌い終えて白コートのYOSHIKIとハグする黒スーツのHYDEという構図も実に美しく、“ふと見るとYOSHIKIさんのお顔が! やさしいオーラなんですけど独特の緊張感があって。本当に光栄です”と伝える彼の口ぶりと表情が、その言葉が真実であることを如実に表していた。ちょうど前日の14日には『NHK紅白歌合戦』の出場歌手が決まり、彼らもYOSHIKI feat. HYDEとして初出場することが発表されたばかり。出場者会見で“度肝を抜くようなことを考えている”と打ち明けたYOSHIKIに、HYDEは“何をやるんですか?”と戸惑いを見せていたが、“僕の頭の中では出来上がってる”とのことなので大晦日を楽しみにしていたい。
2部の後半では波乱万丈なバンドの歴史を振り返り、“快進撃の中で大切なものを見失ってしまったんだろうね”と呟いたYOSHIKIは、それでも“神様は乗り越えられない試練は与えない”と言い切り、“こうしてX JAPANが復活して、YOSHIKIとしてもステージに立てること、本当に感謝してます”と涙ぐんだ。そして、“心の痛みは永遠に消えないけど、向き合ってこれからも進んでいきたい。HIDE、TAIJI、僕に音楽を与えてくれた父親に捧げたいと思います”と奏でた「Without You」から「KURENAI」「ART OF LIFE」と続いたブロックは、まるで彼の生き様を描いた組曲のような重厚さで場内を圧倒。渾身の力を込めて美麗な旋律を紡ぎ出す一方で、ピアノの入らないパートになると何かを堪えるかのようにジッと目を閉じる姿が印象的だった。激動の音楽人生の中、ロサンゼルスに拠点を移して四半世紀。“今でも闘いの毎日です”と告げながら、ラストナンバーを前にYOSHIKIはこう語った。
“自分の使命は何なのか? ずっと考えてきたけれど、それを探す旅が人生なんじゃないか、闘いをやめる時は永遠の眠りにつく時なんじゃないかと思う。みんなにもらった第二の人生、恩返しするために闘っていくんで、そんな僕を応援してください。昔は破滅の美学だったけど、今は継続して頑張る美学を貫きたいです”
と、そんな彼に客席から“お誕生日おめでとう!”の声が。11月20日の誕生日を目前に控え、“じゃあ、弾いてみようか。…自分に弾くなんて”と苦笑しつつ、「HAPPY BIRTHDAY TO YOU」をこれまた即興で弾いて、全員で“HAPPY BIRTHDAY DEAR YOSHIKI”を合唱するというスペシャルな体験をオーディエンスにプレゼントしてくれた。さらに“愛するみんなへ、感謝を込めて”と贈られた「ENDLESS RAIN」でも、最後はYOSHIKIのピアノとオーディエンスの歌声だけに。鳴り止まぬ拍手に応えたカーテンコールではHYDEら出演者たちと手をつないで登場し、“We Are X!”の叫びで最後までファンに応え続けた。シーンの頂点に君臨して栄光を欲しいままにしながらも、それ以上の代償を払い、痛みに耐え続けてきた彼の、それでも傷の付くことない純な魂と比類なき音楽の才能。それら稀有なる資質をもって人々を癒し、励まし、生きる力を与えてゆくことこそ、神から与えられた彼の使命なのではないかと感じさせられた一夜だった。
取材:清水素子
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