ゆいにしお

ゆいにしお

【ゆいにしお インタビュー】
より自分をポップにパワフルに、
引き上げてくれるシングルができた

シンガーソングライターのゆいにしおから“社会人女子の夏”をテーマにした3曲入りシングル「ワークライフアイランド」が届いた。日常にちょっとした楽しみを加えようと呼びかける楽曲たちは、どのような背景から生まれたのだろうか?

苦しい状況でも
どうにか逃げ道を探せたら

メジャーデビューから約半年経ちましたが、この半年間はゆいさんにとってどのような日々になりましたか?

本当にあっと言う間の半年間でした。ちょっとずつメジャーデビューをした自覚が芽生え始めて、メンタル面の切り替えが必要だなと思っているところですね。

その“自覚”とはどんな瞬間に生まれたのでしょうか?

ヴォイトレの先生がメジャーデビューをすごく喜んでくださって、“これからはゆいちゃんがスタッフさんを食わせていかなきゃいけないね”とおっしゃったんです。メジャーに身を置くからには会社に貢献して、スタッフさんに還元するべきだということは、常々覚えておかないといけないなとその時に思って。だからこそひとりで抱え込むのではなく、相談できる部分はもっと相談して、もっとチームで“ゆいにしお”をパワーアップさせていかないとなと思っています。

メジャーはタイアップ曲の書き下ろしの機会にも恵まれやすいと思いますが、そちらもどうやら楽しめているようですね。

タイアップ曲の書き下ろし、大好きですね。もともとは自分の経験をもとに曲を作っていたんですけど、メジャーデビュー前あたりから友達の話を聞いて曲を作ることが多くなっていて。自分の力だけでは作れなかった曲が作れることが、すごく嬉しいんです。

それは“自分ではない誰かになりきって書く”という感覚ですか?

というよりは、俯瞰的な視点で書いています。あくまでも自分の視点から発信していきたいんですよね。普段から歌詞の題材を思いついたらすぐスマホのメモに書いておくんですけど、そのストックばっかりでメロディーが一向に降りてこなくて曲にできない気持ちがいっぱいあるっていう状態です(笑)。もしこの先メロディーが全然浮かばなくなって、他の人がメロディーを書くことになったとしても、歌詞だけは絶対に自分で書いていたくて。自分の書いた言葉を自分の歌声で届けていきたいんですよね。

では、“社会人女子の夏”をテーマにした今回のメジャー1stシングル「ワークライフアイランド」は、ゆいさんによる俯瞰的な視点から生まれたものなんですね。

そうですね。私は今年26歳になるんですけど、ここ数年ぐらい“女性としての人生”というものを考えていて。やっぱり女性には出産の可能性もあるので、20代半ばくらいから人生を選択する瞬間が多くなると思うんです。私も同じように悩んでいるので、同世代の女の子を勇気づけられるような作品が作れたらとは前から考えていたんです。リリース時期的に夏にまつわる作品を作りたかったので、そのふたつの要素をくっつけました。

以前からゆいさんは同世代の女性が共感できる、リアリティーあふれる楽曲を制作なさっていますが、そういう作風を目指したきっかけというのは?

実は同世代の女性を意識するようになったのは結構最近なんです。コラムニストやラジオパーソナリティーとして活躍なさっているジェーン・スーさんをすごく尊敬していて、ジェーンさんの書かれた女性の生き方についての本を読んだり、Podcastを聴いて、“私はシンガーソングライター界のジェーン・スーになりたい!”と思い始めたんですよね。今はジェンダーレスな時代とはいえ、どうしたって女性にしかない悩みってあると思うんです。自分自身が女性としてどういう選択をしていくべきなのか悩んでいるのもあって、この方向性で頑張りたいと思っているところです。

だから、ゆいさんの楽曲の主人公は、自分なりのやり方で目の前に立ちはだかる荒波に向かっていくような逞しさを持つ人が多いんですね。

まさにそのとおりで、逞しさやしなやかな強さを持った女性がすごく好きなんですよね。私自身はそこまでめちゃめちゃ強いかと言われたらそうじゃないんですけど、憧れみたいな気持ちを込めてそういう主人公を描いています。だから、街の中で同世代の女性に“ゆいにしおさんですか?”と声をかけられたら、すぐにでも肩を組みたいくらいシンパシーを抱きますね(笑)。

「ワークライフアイランド」は“ワークライフバランスの中に自分なりのバケーションを詰め込もう”というマインドで生活できたらという想いが込められているとのことですが、これはゆいさんの個人的なことなのでしょうか?

私自身は結構忙しいのが好きなので、ちょこちょこと息抜きをしていくタイプなんです。そういうふうに忙しいのが好きな人もいれば、まとまった休みを定期的に取らないと苦しくなっちゃう人もいて。でも、そういう対極な人同士でも共通しているのは、“時間に追われている”ということだと思うんです。有給を取るのも難しいし、取ったら取ったで仕事が気になってしまうし、現実はそううまくいかない。だから、どんな人でも投影しやすい主人公を立てて、ちょこっとした息抜きやお休みを日常としてとらえてみる曲があってもいいんじゃないかと思ったんです。“そういう苦しい状況でもどうにか逃げ道を探せたらいいよね”という一種の諦め、嘆きですね。

非日常に飛び出すのではなく、あくまでも現代人の生き方をベースにした楽曲ということですね。ちなみに夏という季節にはどういう印象をお持ちなのでしょうか?

自分の生まれた季節ということもあって特別なんですけど、今まで夏らしいことをしてこなかったんです。学生時代も夏休みは部屋に閉じこもって曲を書いていて、友達もインドアが多かったから、夏らしいことをすることにあんまりうらやましさも感じていなくて。逆にうちのマネージャーは“THE夏”なこと全部してるんですよね。移動中にケイティ・ペリーがラジオで流れてきたときに、“昔元カノとドライヴした時にこの曲をかけたんだよね”みたいなエピソードがポンポン出てくるんです。そういう思い出話を聞いているうちに“そういう体験をしていたら自分の作る曲も違ったのかもしれないな…”とうらやましくなって。

うらやましい気持ちが生まれるのは、あくまで曲作りが理由なんですね。

やっぱり“THE夏”な遊びは一大イベントだからやり遂げると達成感があるし、だから記憶に残るんだとも思うんです。そういう夏や青春を経験しておけば、メジャーど真ん中な曲が書けたかもしれないので、もっといろいろ経験しておけば良かったと思ったりもして(笑)。そういう私だから、夏をテーマにした作品が“休みが取れない社会人女子”に向けたものになったのかなとも思います。
ゆいにしお
シングル「ワークライフアイランド」

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着