【LUNA SEA ライヴレポート】
『復活祭 -A NEW VOICE-
「Naked Voice」』
2022年8月27日 at 日本武道館
真っ赤なライトに照らし出された白いステージに5人が東京すると1曲目は「a Vision」。SLAVE(ファンの呼称)の支持は高い曲だが、最初からトップスピードに乗るナンバーなので、冒頭にくると予想していた人はほとんどいなかったと思われる。不意を突かれて、オーディエンスも驚きに一瞬動きが止まるが、すぐに拳をあげて5人に応える。真矢(Dr)の重厚なドラムの音が波を作り、この曲の肝でもあるJ(Ba)とSUGIZO(Gu&Vn)のかけ合いが鋭く響いた。その熱をRYUICHIのヴォーカルが包み込む。そして、INORAN(Gu)が中央のアンプに足をかけてギターを弾き始めて、「TONIGHT」へ。序盤にもかかわらず、会場の熱は一気に高まり、今日のライヴがどんなすごいものになるのか、この時点で自然に確信した。
“メンバー、スタッフ、そしてみんなが俺のためにこの復活祭を用意してくれて、本当に約束の地にしっかりたどりつけて良かったと思います!”とRYUICHIはこの日を迎えられた喜びを語り、「Sweetest Coma Again」に。一見バラバラの個性が際立つ演奏なのに、なんとも心地良いグルーブを生み出す楽器隊。そして、RYUICHIはこの4人の重い音を背負って歌っていたことを、今さらながらに実感する。だからこそ、力を抑えては決して歌えない。全身を使って歌う必要があるのだということが分かる。
5曲目の疾走感あふれる「宇宙の詩~Higher and Higher」。この曲を聴くと2019年のアルバム『CROSS』のツアーが思い出される。『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN前夜 赤い彗星』のオープニングテーマで華やかなナンバーだが、サビで高音が続き、喉の手術前のRYUICHIには、かなり負担がかかるという印象を持っていた。しかし、この日のRYUICHIはマイクを持たない左手を使って音を感じながら、見事に歌い上げ、ミラーボールが回って輝く会場いっぱいに声を響かせた。
INORANの繊細なアコースティックギターと真矢のガラスのようなドラム、SUGIZOの懐かしさを感じるバイオリンで静かに始まった「闇火」。万全の状態でも全身全霊で挑まなければ表現できず、過去に何度も呼吸が止まるようなすばらしいパフォーマンスを見せてきた楽曲だ。復活祭でセットリストに入れるというところに、このステージにかける覚悟を改めて知る。Jの胸に迫るようなベースが加わり、熱を帯びていくゾーンに入っていく。リミッターを外し、限界に挑戦するRYUICHI。ステージに何度も炎が上がり、その様子は命を削って歌うRYUICHIと重なって見える。ただ、決して無謀なリミッター外しではなく、次のステージに上るためにあえて負荷をかけていることは伝わってきて、観客は祈るようにステージを見守る。まさに“Naked Voice”そのもののパフォーマンスだった。
ここで緊張感を緩めるのかと思いきや、次にきたのはスピード感が肝の「CIVILIZE」と、とことん追い込むような曲が続く。さらに1部の締め括りはダークで激しい「HURT」を持ってくるなど、攻めたセットリストで畳みかけてくる。
第2部では「SANDY TIME」や「IN FUTURE」といった意外な曲を織り交ぜながら、「ROSIER」や「Déjàvu」などライヴの定番曲でしっかり固める。今回の公演は1、2日目とも予測不可能なセットリストが非常に新鮮だったが、メンバー紹介もINORANから始まり、SUGIZO、RYUICHI、J、真矢というイレギュラーな順番で回した。いつも“他のメンバーがすでにいいこと言っているから”とあまりたくさんは語らないINORANが“みんなが言いたいことを、先に言っちゃうからね。知らないよー”と釘を刺す。“8月26、27日は僕らが初めて武道館でやった日なんですよね”と振り返り“他のメンバーが思っているかどうか分からないんですけど、LUNA SEAの未来はキラキラしすぎて、まぶしすぎて見えない!”と叫んだ。
SUGIZOは“今年デビュー30周年なんですよ。デビュー30年のバンドが、こんなキラキラと小僧のようなライヴをやっているのも素敵じゃないかなと思います”と話していたが、本当に今回は守りに入らず攻めていくという従来のLUNA SEAの姿勢が貫かれた内容になっていた。
4番目に回ってきたJは“みんないいこと言ったんで、以下同文です(笑)”との言葉に続けて“今までも我がままにバンドは突き進んできました。これからもいろいろなことを乗り越えていくんでしょうし、時には喧嘩したり? 喧嘩したり?(笑)… そういったドラマを乗り越えて、今、この5人はあると思います”と今のLUNA SEAを語った。
ラストを任されるのは恒例の真矢だったが“最近、ドラムソロみたいなのをやって、みんなでかけ合いとかやってないじゃん。ここの正式名称知っていますか? 日本武道館っていうんです。かけ合いしましょうか? ニッポンチャチャチャで”と、ホッとした笑いを入れる。そのサービス精神もLUNA SEAならでは。1日目はテレビ番組『かまいガチ』で結成された、お笑いコンビのかまいたち山内健司氏が率いる“GACHI SEA”を迎えてコラボも行なうという企画も入ったが、音楽に対して真面目でありながら、オーディエンスを楽しませる遊び心を忘れない柔軟なところも、また彼らの魅力だ。
そして、RYUICHI。“自分の声が最初戻るのかなということばっかり考えていたんだけど、そうじゃなくて、もっと進化して強くなって、INORANやSUGIZOも言ったように、光り輝く世界に、そこで歌えるような声をもって、磨いて磨いて手に入れて、そしてしっかりみんなに届けていきたいと思います。本当に2日間、どうもありがとう!”ーーこの言葉を聞いてどれだけの壁にぶつかりながらも乗り越えてきたのかがうかがい知れた。だが、確実に前進していて、このライヴの中でもベースの部分はしっかり押さえつつ、その時々で自らハードルを設けてクリアーしながら歌っていることも感じた。RYUICHIはライヴ終了後に自らのブログで<新しい楽器(声)は初期のLUNA SEA のRYUICHIの声にも似ていて 中低温の倍音が太い><その分高域の透明感や伸びがキャリアを積んだRYUCHIにはまだカケている>と冷静に分析していて、今後の進化から目が離せない。
ライヴ終盤の「WISH」では、コロナ禍では実現できていなかった恒例の銀テープが会場を舞う。これでライヴは終了かと思いきや、RYUICHIの“世界中の仲間たちに、続いてのナンバーを送りたいと思います。next song 「UP TO YOU」”という言葉に会場が揺れる。《始まりの鐘が 鳴るよ》と歌う歌詞に、LUNA SEAのこれからに対する決意が託されているような気がした。RYUICHIは歌えば歌うほど輝きを増すような堂々たるパフォーマンスを行ない、SUGIZOがMCで言っていたように、まさに不死鳥のごとく蘇った姿をオーディエンスに見せた。
マイクを置いてRYUICHIがSUGIZO、真矢、Jとハグをし、INORANの番の時は、5人全員が輪になってハグをしていた。彼らの変わらない絆に、会場からも割れんばかりの拍手が起きたことは言うまでもない。また、終演後には“黒服限定GIG 2022 LUNACY”という文字が映し出された。彼らの節目で開催されてきた、ドレスコード黒服のライヴを今年年末に用意するとは、最後までサプライズの連続だった。彼らの言うとおり、LUNA SEAの未来はキラキラと輝いている。
撮影:田辺佳子、横山マサト/取材:キャベトンコ
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