リリース直後の「鼓動」も大胆アレン
ジ 藍井エイル初となる管弦楽コンサ
ート『Eir Aoi Premium Orchestra L
ive』レポート

2021.6.16(Wed)Symphonic Concert 2021@LINE CUBE SHIBUYA~Eir Aoi Premium Orchestra Live~
2021年6月16日(水)、東京・渋谷にて、藍井エイルと東京ニューシティ管弦楽団がコラボしたライブ『Symphonic Concert 2021@LINE CUBE SHIBUYA~Eir Aoi Premium Orchestra Live~』が開催された。藍井エイル初のシンフォニーライブである今回の舞台は、現地での有観客とインターネット配信にて実施。当日にリリースとなった新曲 「鼓動」はもちろん、デビュー曲の「MEMORIA」を始め、「IGNITE」「ラピスラズリ」などの全12曲が「交響曲」として生まれ変わった。現地で目の当たりにした、その特別な一夜の模様をレポートしていく。
■「MEMORIA」など名曲の数々が「交響曲」に。楽団と一つになる藍井エイルの歌声
ステージ上では開演前から楽器の音が鳴り、定刻になるとチューニングのためのB♭が一斉に響き渡った。指揮者として立つのは、この東京ニューシティ管弦楽団を率いる内藤彰。まるでクラシックのコンサートを聴きにきたのかと錯覚を覚えるような光景から、この日の舞台はスタートした。
やがて舞台には、白いドレスをまとった歌姫・藍井エイルが登場。最初に披露したのは「MEMORIA」(テレビアニメ『Fate/Zero』EDテーマ)である。会場全体へ伸びやかに広がっていく藍井エイルの歌声と、楽曲を前へ前へと押し出すような躍動感ある生の楽器の音色。初めて聴く音と音の組み合わせに衝撃を受けるものの、やがて混じり合って一つになる音楽が耳に心地よい。また、舞台にはプロジェクションマッピングによる幻想的な映像も映し出され、華やかな舞台にさらなる彩りを添えていた。
最初のMCを挟んで、2曲目には「GENESIS」(テレビアニメ『アルドノア・ゼロ』2ndクールEDテーマ)を披露。体を揺らしながら軽やかに歌う藍井エイル。楽団による壮大な演奏により、楽曲が「交響曲」へと生まれ変わる。3曲目「アカツキ」では、歌い出しから始まるところを、指揮者も藍井エイルの方を向き、互いに目と目を合わせてスタート。シンガーと楽団の、より息の合った音楽を作り出す。続く4曲目の「ラピスラズリ」(テレビアニメ『アルスラーン戦記』EDテーマ)まで、美しく贅沢な時間が流れていった。
続いて、オーケストラによって力強さの増した「I will…」(テレビアニメ『ソードアート・オンライン アリシゼーション War of Underworld』2ndクールEDテーマ)。そして前半最後の曲となる「クロイウタ」(PS3ゲームソフト『ドラッグ オン ドラグーン3』テーマソング)は、ハープの単音に始まり、やがて重なっていく楽器の音色によって、楽曲が格式ある往年のクラシックのような雄大な音の広がりを見せていく。
普段は見たことのない佇まいの藍井エイル。緊張感もあり、非常に畏まったステージではあるのに、なぜか観る側の心は子どものようにワクワクしてしまう。感染症対策のために声を出すことが制限されてはいたが、この舞台ならば声を出さず静かに音楽に身を委ねた方が正しい。たまたまかもしれないが、ある意味時代にもマッチした雰囲気が、この舞台をさらに趣向を凝らしたものにしている気がした。
■貴重なカップリング曲や、リリースしたばかりの新曲も披露
舞台換気も兼ねた20分間の休憩の後、ライブの後半戦は「Gladius」からスタート。歌と歌の合間の間奏も、管楽器の軽やかなメロディが溢れ、うっとりと聞き入ってしまう。続く「月を追う真夜中」(テレビアニメ『グランベルム』OPテーマ)では、舞台上のライトが客席を照らし、まるで空に輝く星のよう。そういった細やかな舞台演出にさえ、感動を覚える。交響曲であることが、聴く側の感性も豊かにしてくれているのかもしれない。そして9曲目として披露された「HaNaZaKaRi」では、リズミカルなボンゴやシェイカーなど打楽器も活躍し、和テイストの楽曲を心躍る華やかな音楽へと作り変えていく。
オーケストラアレンジにするに当たってのこうした選曲については、続くMCにて藍井エイル自身の口から語られた。それによると、例えば自身がシンフォニックメタルな楽曲を好むこともあって、メタル感のある「Gladius」が選ばれたとのこと。このように「オーケストラに合う」というだけでなく、意外性も考慮した選曲が行われた背景を知ることができた。またリハーサルに入る前には楽団からデモ音源をもらい、それを聴いて鳥肌が止まらなかったというエピソードも。
楽しいコンサートも終了間近で、「翼」(テレビアニメ『アルスラーン戦記 風塵乱舞』OPテーマ)と「IGNITE」(テレビアニメ『ソードアート・オンラインII』OPテーマ)の2曲が続けて演奏される。管弦楽団によるたくさんの音の連なりが、それぞれ主題歌となったアニメの激しい戦闘シーンを再現するようで、熱く、激しく会場が揺さぶられる。
そしてMCを挟んで、最後には当日リリースとなったばかりの新曲「鼓動」(テレビアニメ「バック・アロウ」2ndクールOPテーマ)が、早くもアレンジ楽曲として歌われることとなった。楽器の音と、藍井エイルの歌声のシンクロ率も最高潮に。感動が、興奮が、何十倍にも膨れ上がっていく。演奏が終わって、ただただ拍手を送るしかないのが、このときばかりは悔しく思えた。きっとコロナ禍でなければ、指笛や、「ブラボー!」という叫び声も轟いていたはずだろう。そんな思いも忘れさせるように、拍手は長く、大きく鳴り響く。
■「エイエイルー」コールも実現。「藍井エイルの夏」がこれから始まる
コロナ禍ということもあり、途中休憩も含めて約1時間半という短さになった今回のコンサート。だが最後には、「これをやらないと終われないんです」と、定番の「エイエイルー」コールもしっかり実施された。観客からの発声はナシながら、代わりの拍手と高く掲げた一人ひとりの拳で、会場中が一つとなった。
万全の対策が取られた上での今回のステージ。8月には全国ツアーも控えており、少しずつ、少しずつ日常を取り戻せていると実感できる。
もちろん、まだまだ油断は禁物だ。「また夏に会いましょう!」最後にそう叫んで、舞台を締めくくった藍井エイル。その熱い夏は、もうそこまで来ている。
取材・文=平原 学

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