INTERVIEW | YAKULブライトン発・U
Kフューチャーソウルの新鋭が語るバ
ンドの歩み、日本からの影響 ブライ
トン発・UKフューチャーソウルの新鋭
が語るバンドの歩み、日本からの影響

様々な音楽が混ざり合った90年代の「渋谷系」。それに並走し、相互関係にあったのがアシッドジャズだ。それを影響源とし、SOIL&“PIMP”SESSIONSやSuchmosが出てくると考えれば、現代の日本とも関係が深いジャンルだといえよう。
その生誕の地であるイギリス・ロンドンの音楽シーンには現在も注目が集まっているが、なかでも「フューチャーソウル/フューチャージャズ」のカテゴリで異彩を放つバンドがYAKUL(ヤクール)だ。昨年11月にデジタル/CDで、そして本日1月24日(水)にLPとしてリリースされた日本独自仕様のベストアルバム『In Our World』では、「ジャズ、ソウル、R&B、ヒップホップなどをミクスチャーした〜」というありきたりな表現に収まらないユニークな音楽性に耳だけでなく、日本語があしらわれたジャケットにも目を引かれるだろう。
今回はそんなYAKULのJames Berkeley(Vo. / Key.)、Tom Caldwell-Nichols(Ba.)に本邦初となるメールインタビューを実施。バンドの歩みや制作、日本への想いに至るまで可能な限り質問しているので、彼らの音楽性を理解する一助としてほしい。
Interview & Text by Naoya Koike
Photo by Official
即興的なスタイルが自分たちのアイデンティティ
――邦メディアでは初インタビューということで、改めてバンドの結成の経緯やメンバー4人の音楽的ルーツを教えてください。
日本のメディアからのインタビューは初めてで、いい機会をいただけて嬉しいです。2016〜17年くらいにメンバーの自宅の地下でセッションしていたのがバンドの始まりですね。メンバーの入れ替わりは多少ありましたが、コアとなる部分はその頃から変わりません。
私たちは全員「ソウルフルな音楽が好き」というバックグラウンドがあって、ユニークな環境で音楽を学びました。それからブライトンで長年、別々に音楽活動を行っていて、バンド結成前から友だちだったから、今でもスムーズに一緒に演奏できていると思います。
――YAKULの音楽は「フューチャーソウル/フューチャージャズ」という言葉で形容されることが多いです。みなさんは自分たちをどのようなバンドだと自認していますか。
現時点では考えすぎずに自分たちの中から出てきた音楽を作っている感じです。ナイスなハーモニーやおもしろいリズム、コード進行を楽しむところからスタートして、結果的に作り上げたものが超シンプルなら、それが今作りたい音楽なんじゃないかなと。
ジャンルのようなラベルは一般的に「どんな音楽を作りたいのか」っていう目標を理解するのに役立つとは思うけど、ある時期を過ぎるとただ音楽を作ったり、感覚で音楽聴く方が簡単にいいものができると思っています。
――今の音楽スタイルに至った流れを教えてください。
他のどの要素よりも即興的なプレイスタイルが僕たちのアイデンティティを最も形成していると思います。楽曲制作も以前はJames(Vo. / Key.)が何かしらのアイデアを持ってきて、それをみんなで調理するスタイルでしたが、今は「みんなで演奏して、何ができるか見てみようぜ」とうい感じですね。
「出したかったのは作品としての一体感」
――ジャズとヒップホップのミクスチャーがアメリカで盛り上がった後に、日本ではUKジャズの独自性も注目されました。みなさんはその流れの先駆者のひとりであるGilles Petersonにもフックアップされていますね。それを踏まえ、イギリスのジャズシーンについてどう思います?
YAKUL:UKのジャズシーンは大好きだし、僕たちをその一員だと認識されることはとても光栄に思います。そしてGillesはUK音楽シーンのレジェンド。彼がこれまでに僕たちにしてくれたサポートは、言葉にできないほど素晴らしいものです。
ジャズアーティストたちと僕らが異なる点は、ロンドンではなくブライトンにいることかな。それによって自分たちらしい音が鳴らせていると自負しています。
――UKの音楽教育についても日本では注目されています。みなさんは音楽をどのように勉強してきましたか?
僕たちも大学に通っていましたが、音楽理論やジャズへの理解を深めていったのは卒業後です。音楽に関してはほとんど自分自身で学びましたね。それに僕たちは、いわゆるトラディショナルなジャズプレイヤーとは言えません。ただ自分たちなりに音楽への理解を深めて、その影響を新しいカタチとして同時に注ぎ込んでいます。
――日本独自仕様のベスト・アルバム『In Our World』のリリース経緯と、選曲について意識したことを教えてください。
東京の素敵なレーベル〈P-VINE〉がコンタクトしてくれて、一緒に作ったコンピレーション作品です。僕たちは日本のポップカルチャーの大ファンであり、作品の中心のテーマのひとつにも掲げていたので、日本で作品をリリースできるということは信じられないほど特別なこと。ここ数年でリリースした曲のベスト選曲にしつつ、出したかったのは作品としての一体感。これは上手くいったと思っています。
――個人的には“What does it feel like”のサックス奏者が誰なのか気になりました。
ありがとう。エナジーを感じられて、ライブで演奏するのが特に好きな曲です。ラッキーなことにサックスで参加してくれたのはロンドンのプレイヤー・Camilla George。ぜひ彼女のことはチェックしてほしいです。最近彼女と初めてライブで一緒にプレイしましたが、本当に最高でした。
――また、“What does it feel like”のMVにはOasis“Don’t Look Back In Anger”の譜面やGreed Day『International Superhits!』も移っていますよね。これはどのような意図が込められているのでしょうか?
よく気付きましたね! あれはちょっとしたジョークなんです(笑)。このMVは00年代に戻った感じにしたくて、僕らが10代のときにハマっていた音楽を映しました。いまだに彼らの音楽は大好きです。あと意識が朦朧とするシーンも楽しかったですね。
日本のカルチャーからの影響
――YAKULの音楽は3連符を織り交ぜたリズミックなフレーズやブレイク、また音色やミックスに特徴とこだわりを感じます。曲作りにおいて、実際にそういったことを意識していますか?
計算的に作ったわけではなくて、セッションの成り行きで形になっていくことが多いですね。ただ過去にリリースした楽曲を振り返ってみると、何かに引き寄せられているのは確かです。
だから前回のライティングセッションを行ったときは、その慣れ親しんだプロセスから一旦離れ、遠く別の場所に向かってみる形を選んだりもしました。
――シングル“Cross My Line”以降、アートワークがレトロなレコードジャケット風なもので、日本語の帯があしらわれた作品が並んでいます。こうしたアイディアはどこから生まれたのでしょう?
YAKUL:帯が好きなんです。お気に入りのミュージシャンも同じようなことをよくやっていました。理由は単純に日本のレコードのアートワークが好きだから帯を付けてるだけ。もちろんリスペクトを込めて。
――日本やアジアの音楽、文化についてどのような印象を持っていますか?
日本のカルチャーが大好きで、そこから大きな影響を受けました。食べ物、映画、音楽などでも、メンバー全員一致で好きなものは少ないですが、日本文化は本当にみんな大好きですね。
――日本のミュージシャンで好きな人や一緒に演奏してみたい人はいますか?
パッと頭に浮かんだのはNujabesとYellow Magic Orchestra。僕たちがもう少し若かったとき、この2組にはクリエイティブの視点を変えられるくらい衝撃を受けました。
――最後に今後やりたいこと、また気になっている音楽的な動向などがあれば教えてください。
正直いうと、こんなにも長い年月バンド活動を続けられるとは思っていませんでした。長年多くの人たちからのサポートを感じているし、本当にありがたいことだと思うので、彼らに音楽で恩返しがしたい。
だから自分たちがワクワクする音楽を作り、それを好きだと言ってくれるみんなとこれからも繋がり続けること。それが目標ですね。
【リリース情報】

※日本独自LP

※完全限定生産盤
※帯付き
■ 配信リンク(https://p-vine.lnk.to/wZTzSW)
■YAKUL: X(Twitter)(https://twitter.com/yakulband) / Instagram(https://www.instagram.com/yakulband/)
様々な音楽が混ざり合った90年代の「渋谷系」。それに並走し、相互関係にあったのがアシッドジャズだ。それを影響源とし、SOIL&“PIMP”SESSIONSやSuchmosが出てくると考えれば、現代の日本とも関係が深いジャンルだといえよう。
その生誕の地であるイギリス・ロンドンの音楽シーンには現在も注目が集まっているが、なかでも「フューチャーソウル/フューチャージャズ」のカテゴリで異彩を放つバンドがYAKUL(ヤクール)だ。昨年11月にデジタル/CDで、そして本日1月24日(水)にLPとしてリリースされた日本独自仕様のベストアルバム『In Our World』では、「ジャズ、ソウル、R&B、ヒップホップなどをミクスチャーした〜」というありきたりな表現に収まらないユニークな音楽性に耳だけでなく、日本語があしらわれたジャケットにも目を引かれるだろう。
今回はそんなYAKULのJames Berkeley(Vo. / Key.)、Tom Caldwell-Nichols(Ba.)に本邦初となるメールインタビューを実施。バンドの歩みや制作、日本への想いに至るまで可能な限り質問しているので、彼らの音楽性を理解する一助としてほしい。
Interview & Text by Naoya Koike
Photo by Official
即興的なスタイルが自分たちのアイデンティティ
――邦メディアでは初インタビューということで、改めてバンドの結成の経緯やメンバー4人の音楽的ルーツを教えてください。
日本のメディアからのインタビューは初めてで、いい機会をいただけて嬉しいです。2016〜17年くらいにメンバーの自宅の地下でセッションしていたのがバンドの始まりですね。メンバーの入れ替わりは多少ありましたが、コアとなる部分はその頃から変わりません。
私たちは全員「ソウルフルな音楽が好き」というバックグラウンドがあって、ユニークな環境で音楽を学びました。それからブライトンで長年、別々に音楽活動を行っていて、バンド結成前から友だちだったから、今でもスムーズに一緒に演奏できていると思います。
――YAKULの音楽は「フューチャーソウル/フューチャージャズ」という言葉で形容されることが多いです。みなさんは自分たちをどのようなバンドだと自認していますか。
現時点では考えすぎずに自分たちの中から出てきた音楽を作っている感じです。ナイスなハーモニーやおもしろいリズム、コード進行を楽しむところからスタートして、結果的に作り上げたものが超シンプルなら、それが今作りたい音楽なんじゃないかなと。
ジャンルのようなラベルは一般的に「どんな音楽を作りたいのか」っていう目標を理解するのに役立つとは思うけど、ある時期を過ぎるとただ音楽を作ったり、感覚で音楽聴く方が簡単にいいものができると思っています。
――今の音楽スタイルに至った流れを教えてください。
他のどの要素よりも即興的なプレイスタイルが僕たちのアイデンティティを最も形成していると思います。楽曲制作も以前はJames(Vo. / Key.)が何かしらのアイデアを持ってきて、それをみんなで調理するスタイルでしたが、今は「みんなで演奏して、何ができるか見てみようぜ」とうい感じですね。
「出したかったのは作品としての一体感」
――ジャズとヒップホップのミクスチャーがアメリカで盛り上がった後に、日本ではUKジャズの独自性も注目されました。みなさんはその流れの先駆者のひとりであるGilles Petersonにもフックアップされていますね。それを踏まえ、イギリスのジャズシーンについてどう思います?
YAKUL:UKのジャズシーンは大好きだし、僕たちをその一員だと認識されることはとても光栄に思います。そしてGillesはUK音楽シーンのレジェンド。彼がこれまでに僕たちにしてくれたサポートは、言葉にできないほど素晴らしいものです。
ジャズアーティストたちと僕らが異なる点は、ロンドンではなくブライトンにいることかな。それによって自分たちらしい音が鳴らせていると自負しています。
――UKの音楽教育についても日本では注目されています。みなさんは音楽をどのように勉強してきましたか?
僕たちも大学に通っていましたが、音楽理論やジャズへの理解を深めていったのは卒業後です。音楽に関してはほとんど自分自身で学びましたね。それに僕たちは、いわゆるトラディショナルなジャズプレイヤーとは言えません。ただ自分たちなりに音楽への理解を深めて、その影響を新しいカタチとして同時に注ぎ込んでいます。
――日本独自仕様のベスト・アルバム『In Our World』のリリース経緯と、選曲について意識したことを教えてください。
東京の素敵なレーベル〈P-VINE〉がコンタクトしてくれて、一緒に作ったコンピレーション作品です。僕たちは日本のポップカルチャーの大ファンであり、作品の中心のテーマのひとつにも掲げていたので、日本で作品をリリースできるということは信じられないほど特別なこと。ここ数年でリリースした曲のベスト選曲にしつつ、出したかったのは作品としての一体感。これは上手くいったと思っています。
――個人的には“What does it feel like”のサックス奏者が誰なのか気になりました。
ありがとう。エナジーを感じられて、ライブで演奏するのが特に好きな曲です。ラッキーなことにサックスで参加してくれたのはロンドンのプレイヤー・Camilla George。ぜひ彼女のことはチェックしてほしいです。最近彼女と初めてライブで一緒にプレイしましたが、本当に最高でした。
――また、“What does it feel like”のMVにはOasis“Don’t Look Back In Anger”の譜面やGreed Day『International Superhits!』も移っていますよね。これはどのような意図が込められているのでしょうか?
よく気付きましたね! あれはちょっとしたジョークなんです(笑)。このMVは00年代に戻った感じにしたくて、僕らが10代のときにハマっていた音楽を映しました。いまだに彼らの音楽は大好きです。あと意識が朦朧とするシーンも楽しかったですね。
日本のカルチャーからの影響
――YAKULの音楽は3連符を織り交ぜたリズミックなフレーズやブレイク、また音色やミックスに特徴とこだわりを感じます。曲作りにおいて、実際にそういったことを意識していますか?
計算的に作ったわけではなくて、セッションの成り行きで形になっていくことが多いですね。ただ過去にリリースした楽曲を振り返ってみると、何かに引き寄せられているのは確かです。
だから前回のライティングセッションを行ったときは、その慣れ親しんだプロセスから一旦離れ、遠く別の場所に向かってみる形を選んだりもしました。
――シングル“Cross My Line”以降、アートワークがレトロなレコードジャケット風なもので、日本語の帯があしらわれた作品が並んでいます。こうしたアイディアはどこから生まれたのでしょう?
YAKUL:帯が好きなんです。お気に入りのミュージシャンも同じようなことをよくやっていました。理由は単純に日本のレコードのアートワークが好きだから帯を付けてるだけ。もちろんリスペクトを込めて。
――日本やアジアの音楽、文化についてどのような印象を持っていますか?
日本のカルチャーが大好きで、そこから大きな影響を受けました。食べ物、映画、音楽などでも、メンバー全員一致で好きなものは少ないですが、日本文化は本当にみんな大好きですね。
――日本のミュージシャンで好きな人や一緒に演奏してみたい人はいますか?
パッと頭に浮かんだのはNujabesとYellow Magic Orchestra。僕たちがもう少し若かったとき、この2組にはクリエイティブの視点を変えられるくらい衝撃を受けました。
――最後に今後やりたいこと、また気になっている音楽的な動向などがあれば教えてください。
正直いうと、こんなにも長い年月バンド活動を続けられるとは思っていませんでした。長年多くの人たちからのサポートを感じているし、本当にありがたいことだと思うので、彼らに音楽で恩返しがしたい。
だから自分たちがワクワクする音楽を作り、それを好きだと言ってくれるみんなとこれからも繋がり続けること。それが目標ですね。
【リリース情報】

※日本独自LP

※完全限定生産盤
※帯付き
■ 配信リンク(https://p-vine.lnk.to/wZTzSW)

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『心が震える音楽との出逢いを』独自に厳選した国内外の新鋭MUSICを紹介。音楽ニュース、ここでしか読めないミュージシャンの音楽的ルーツやインタビュー、イベントのレポートも掲載。

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