【ウォルピスカーター
インタビュー】
いろんなジャンル、さまざまな色…
聴いて飽きさせない構成になっている
僕が録音に関して楽しいのは、
録り終わった音源を聴くこと
「口なしの黒百合」はメロディーも歌詞もダークなのですが、もともと社長はこういうタイプがお好きなんですね?
この曲にはどんなモチーフがあったんですか?
ざっくりとしたテーマだけをまず決めて…「口なしの黒百合」は“すごいヤンデレのストーカー”というテーマで(笑)。ちょっと愛のかたちが歪んでいる女性をテーマに、それっぽいキャラクターを検索して。そういうキャラクターって悪役だったりとか、漫画だったり、いろんな作品にちょいちょい出てくるじゃないですか。それを参考にしてどんどん自分の中で架空のヤバいキャラクターを作り上げて(笑)。“このキャラクターが好きになる男ってきっとこうだよね”って組み上げましたね。
今、お話していただいたことでふたつ分かったことがあります。ひとつは、やはり社長は根底に物語があったほうが歌詞を書きやすいということ。もうひとつは、検索していろんなキーワードを拾っていくというところで、歌詞が自然とダークになっていくのだろうと。
あははは。物語性があるほうがA→B→サビって組み立てやすいんで、どうしてもそうなっちゃいますね。あと、ネガティブな言葉は自然と出てくるんですよね(苦笑)。
(笑)。あと、「口なしの黒百合」に関して言うと、サビが特にそうなんですけど、ちょっと昭和っぽいというか、若干いなたい感じがあるですが、メロディーは社長から作曲家へ“こうしてほしい”といった話はされるんですか?
基本的にいつも僕からは“メロディをすごく良くしてほしい”っていう注文しかなくて。ただ、「口なしの黒百合」の作曲家の神谷志龍とは付き合いが長いんですよ。もう8年くらいの付き合いになるのかな? 僕はすごく歌謡曲が好きで、古き良きJ-POPというか、そういうメロディーラインがめちゃめちゃ好きなんで、それを知ってくれてて。僕から“今回は決めにくるようなメロディーを作ってほしい”ってお願いした結果なので、たぶん分かってくれたんだと思います。
確かに「口なしの黒百合」はA、B、サビがはっきりとしていますよね。「オーバーシーズ・ハイウェイ」はそういう展開ではないですから、それに続く「口なしの黒百合」はJポップっぽさがはっきりしている印象です。「オーバーシーズ・ハイウェイ」はかなりトリッキーな展開ですから。
実はレコーディングするまでは僕も「オーバーシーズ・ハイウェイ」はどこがサビなのか最初はあんまり分かってなくて(笑)。サビから始まったのかと思ったら、“あっ、違う! これはAメロだ!?”って(笑)。
斬新な曲だと思います。Orangestarさんは“ボカロP”でもいらっしゃるということですけど、やはりボカロPの作る曲はこれまでのJ-POPの法則には当てはまらないんだなと感じたところです。
「オーバーシーズ・ハイウェイ」はかなり特殊な方だと思いますよ。僕もいろんなボカロ曲を聴きますけど、ここまで尖った構成はないですね。全部がサビみたいな強さがあるので。僕も初めて歌った構成でした。
そうでしたか。でも、そんな楽曲がアニメのエンディングテーマになるってすごいですね。時代が大きく変わってきたことを象徴しているのかもしれないです。
すごいですよね(笑)。“この構成は数十年前だったら出させてもらえないだろうな”って思いましたもん。それを出させてもらって…しかも、みなさんに聴いていただいて、いろいろとありがたい言葉をいただけるというのは、今、音楽がすごくいい時代に来ているんだなと思いました。
分かりました。3曲目「シ・シ・シ」は1、2曲目とはタイプが異なる、ジャジーかつファンキーなナンバーですが、社長的にはどんなふうにとらえていますか?
僕の中ではすごく良く歌詞が書けたと思っていて。さっきもお話したように、基本的に僕が歌詞を書く時はテーマをざっくりと考えて、それに沿ってA、B、サビと置いていくんですが、「シ・シ・シ」はひらがなの“し”をテーマに書こうと思ったんです。なので、物語が一切ないんですよ。物語のない歌詞を書きながら、“じゃあ、どうやって組み立てていこうかな?”っていうところでかなり悩んだ結果、“意味不明な歌詞は意味不明でもいいんだよな”ってことに行き着き、“じゃあ、最初から最後まで意味不明な歌詞にしょう!”と。韻を踏むとまではいかないですけど、耳障りが良くて、聴いた人が“あっ、この人は“し”を意識して歌詞を書いたんだな”って思われるような単語だけを使って、なおかつ変な歌詞で…と書いていったらこうなりました(笑)。
なるほど。私も「シ・シ・シ」に関しては“これはほぼ意味不明だな”と思って聴いてました。でも、音符への言葉のハマり方はカッコ良いです!
音符は細かいですよね。だから、素人考えでも“ここに言葉を乗せるのは大変だろうな”と。
かなり悩みましたね。譜割りに対して間延びしないような歌詞の置き方をなるべくしようと思ったんですけど、どうしても韻をなぞっていくと間延びしちゃったり、母音が強く出ちゃったりするところも多くて。それこそ《剣豪》だとか、よく分からない単語を使って上手く間を埋めていって、終始パズルみたいな作業をしてました。最終的に言っていることが何となくそれっぽければいいっていう。ちょっと前に歌詞を書いている友人と作詞について話したことがあったんですけれども、サビってだいたいふた回しあるじゃないですか。ひと回し目の終わりの1行でそれっぽいことを言っていれば、それに至るまでの3、4行も全部それっぽく聴こえるっていう(笑)。なので、それっぽさだけを要所要所に入れて、それまでの意味不明な言葉も全部意味深に聴こえるという。
それはすごい発見をしましたね(笑)。
“それはズルいなぁ”って思いましたけど(笑)、実際にやったらすごく良かったです。