仲村宗悟

仲村宗悟

【仲村宗悟 インタビュー】
より仲村宗悟というものを
感じてもらえる作品にしたかった

家族でや仲のいい友達であっても、
知り尽くしているということはない

カップリングの話をしましょう。まず、「てこと」は大人っぽい雰囲気のシャッフルチューンですね。

大人のラブソングが書きたいと思って作りました。もともとは自分の疑問…生きていく中で感じる疑問みたいなところから入っていって、それがラブソングに結びつきました。人といると、家族であっても、仲の良い友達であっても、知り尽くしているということはないと思うんですよ。あと、表面上は穏やかに接していても、自分の中に相手の過去を許せない感情が渦巻いていることがあったりする。しかも、その感情は年を経ても消えなかったりとか。人との交わりにはそういう部分があるけど、それでも“なんか分からないけど、この人がいいんだよな”という人がいるんですよね。“知り尽くすとか、許せないとかはどうでもいいや。一緒にいられれば幸せだよ”という人がいる。そういうことを描いた歌です。

相手の全てを知りたいと思うと、逆に恋愛はうまくいかないような気がします。それにしても、“てこと”というタイトルは秀逸です。

ありがとうございます。タイトルに関してはスタッフさんとめちゃめちゃ戦いました(笑)。LINEで“てこと”はダメと言われて、“僕はこういう想いで書きました。その上で、タイトルはこれしかないと思っています”と返して。“それは分かるけど、変えてほしい”“だったら、せめて別の案をひとつ出してください”みたいなやり取りを、深夜2時くらいにしたという(笑)。散々言い合って、最終的に“てこと”に落ち着きました。ただ、それは自分の意見を絶対に通したいということではないんですよ。お互いに意見を出して、話し合った先に良いものが出来上がると思っているので、今後もこういうことがあったら話し合いたいですね。

プロデューサーの気持ちも分かりますが、“てこと”というタイトルは今の若い世代特有の感性で、すごくいいと思います。また、この曲はヴォーカルも注目で、繊細でいながら弱々しくはないという表情や温度感が絶妙です。

この曲は歌も含めた全ての面で“行き切らないことの良さ”みたいなものを大切にしたんです。歌詞を読んでもらうと分かると思いますけど、“君との関係がこれからも続いていくといいな、幸せだな”ということを歌っているから、完結させたくなかったんです。楽曲自体を途中の状態にしたかった。そうやって、ずっと生活が続いていくことを表現したかったんです。なので、歌もそういうことを意識したものになっています。ただ、あまりにも起伏がなさすぎると僕の中でも引っかからないから、メロディーを大切にしている部分があって…行き切らないけど、聴いている人が飽きないようなメロディーだったり、歌だったりということを心がけました。

この曲も目指すところが明確だったんですね。“行き切らない”というところに通じますが、この曲はもっとジャジーにしてもOKでいながら、そうではないということも魅力になっています。

シブすぎる感じは抜いたんです。いつもギターを弾いてもらっている佐々木”コジロー”貴之さんは、最初はシブい感じを提示されたんですよ。“めちゃめちゃカッコ良いし、めっちゃ分かりますけど、ここからシブさを抜いてもらっていいですか?”という話をバンドレコーディングの時にしたんです。そうしたらコジローさんは分かってくれて、すごくいいところに落とし込んでくれました。ギターソロとか、めちゃくちゃいいんですよ。“絶妙”のひと言に尽きますね。僕が言っていることを理解して、素晴らしいギターを弾いてくださったことに感謝しています。

自分のイメージと違う演奏だった時に、遠慮して黙ってしまうこともあると思うんですけど、“こうしてください”と言えるのはさすがです。

そこはチームとして信頼感があるというか。僕らは本当に少ない言葉で伝わる関係性なんですよ。2ndシングルの「カラフル」(2020年3月発表)の時も“汗臭い感じをなしにしたいんですよね”と言ったら、そのひと言だけで伝わったし。しかも、それで空気が悪くなったりすることもないんです。お互いに信頼感があって、率直に“こうしてほしい”と言える間柄になっているんです。

信頼関係を築けたのは仲村さんが本当に音楽が好きで、作詞/作曲も手がけ、さらにやりたいことのビジョンがはっきしているからこそだと思います。

どうなんでしょうね。ただ、ディレクションをしてくれる村山☆潤さんも絶対僕に意見を訊いてくれます。“ドラムのパターンが3つあるけど、どれにする?”というふうに、僕の決断を優先してくれる。それはありがたいことだと思いますね。

判断を任されるということは責任を負うことになりますが、それを厭わないんですね。

厭わない。“責任”とおっしゃってくださったことが全てで、自分が生み出して、自分が放つ曲ですからね。そこで判断を他人に任せると、“僕の作品です”と胸を張って言えなくなる。しかも、すごい方たちに手伝ってもらっているわけですから、そこに対する責任も背負わないといけないと思っています。

OKMusic編集部

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