【佐咲紗花 インタビュー】
みんなが『怪物事変』を
観て感じたことを
曲に投影して聴いてほしい
限界値から逃げずに
可能性を広げたい
「-標-」のMVでも夏羽を思わせるような衣装を着ていらっしゃいますよね。
夏羽の着ている服を、そのままコピーするのではなくアレンジした上でイメージが重なるような衣装にしたいなと思って、デザイン画を描いてスタイリストさんにお願いして作っていただきました。
MVではアクションにも挑戦を!
はい。何回も観たくなるMVにしたかったので、私も何か挑戦したいと思ったんです。アニソン界隈だとMVで本人がアクションをすることは少ないと思うので、観てもらえるきっかけになればと思って頑張りました。MVの中で監督が描こうとしたのは“自分を追いかけて捕えようとしてくるものは過去の自分。今の自分がそれと決着をつける”ということで、自分の力で過去の自分に打ち勝って、その先の光に辿り着きたいというストーリーになっています。アクションは事前練習を結構していただいたんですけど、やっぱりカメラの前で衣装を着てやると練習とは全然違いましたね。練習の時は床も壁もマットだったのですがロケ地はコンクリートの硬い足場なのに頑張りすぎてしまって、家に帰ったら痣と打撲と擦り傷だらけでした(笑)。
そして、カップリングには佐咲さんが作詞作曲された「凪紗」が収録されているのですが、「-標-」とは対照的に繊細で柔らかなハートフルなナンバーですね。
この曲は昨年5月の外出自粛期間中に“みんなにエールや癒しを届けよう”というコンセプトで1コーラスだけ作っていた曲なんです。今回のシングルは“光”がテーマになっていて、「-標-」の中で描かれた“もがいて掴んでいく光”と両極端の、手を差し伸べるような穏やかでやわらかな光のイメージだった「凪紗」をフルサイズに作り直しました。
お名前の“紗”という文字をタイトルに使われたのは?
自分自身の声や音楽を凪のように、穏やかにみんなの日常に溶け込ませられたらいいなと思ったので、自分の漢字を使いました。それと、1番の歌詞に《新しい家具の配置にも慣れて/小さな世界の片隅のピアノから》というところがあるんですが、もともと家の電子ピアノを別の部屋に置いていたんですけど、外出自粛期間中に自宅で弾き語りの動画を撮ることがあったので、もともとゴチャゴチャした荷物部屋の一角に置いていたピアノを背景のすっきりした場所に移動させたんですね。その移動したピアノで今までと違う視界から作ってるというリアルを重ねながら書いた曲でもあります(笑)。
なるほど(笑)。そんな「凪紗」は包み込まれるような心地良い曲で、柔らかなヴォーカルも印象的でした。
ロック調の楽曲での激しい歌い方ではなくて、吐息も含めながらの柔らかな歌い方で、子守歌のようでもあり、それこそ音色のように声が聴こえたらいいなと思って音に溶け込む気持ちで歌いました。
さて、このニューシングルで幕を開けますが、2021年どんな年にしたいと思っていますか?
昨年から“今年はこうしていこう”と話していたことがいっぱいありますが、情勢的に何とも言えないところも…。でも、昨年の年末に緒方恵美さんの恒例の“禊”ライヴ(2020年12月26日開催の『禊2020-疫病退散!-』)に緒方会メンバーとして出させていただいた時に、緒方さんが楽屋で“エンタメを止めない”“エンタメを絶やさない”ことの必要さだったり、助けを待っているだけじゃダメで、自身で声をあげていかないと自分たちの大切な領域は守れないというお話をたくさんしてくださったんです。やっぱり昨年は未知の状況にどうすることもできなくて待っていることがすごく多かったと思うんですね。だから、受け身な状態のままで届けようとしていた気がして。その状況の中でも周りのおかげで何回か配信ライヴをさせていただいたんですが、そうした恵まれたチャンスをもらうばかりじゃなくて、もっと自ら作らなきゃいけないと思いました。何がどう種になってこの先に実を結んでいくか本当に読めないんですけど、チャンスや順番を待つことをやめて動いていきたい。そして、いつか画面越しじゃなくて、みんなに直接会えたらと。そんな希望を持つことを忘れずにいたいです。
デビュー10周年を経た今、変わらずに大事にしたいことは?
私は作品と一緒に生きていきたいタイプの人間なので、関わった作品や出会いをずっと大事にしていきたいです。それと、得意なジャンルだけだけじゃなくて、いろんな音楽に挑戦したいです。この10年でたくさんの曲を歌わせていただいて、身体が対応しやすいジャンルの曲もどう攻略していいのか難しい曲も様々な歌を歌いました。一時は自信がなかったので得意なタイプの楽曲ばかり歌いたいと思う時期もあったのですが、挑戦したからこそ素敵に完成したタイプの曲もあったりして、その度に新しい自分と出会えました。この先も苦手なものを避けるのではなく、今までの自分にない新しい音楽をどんどん見つけていきたいですし、苦手なことも武器にできるようにどんな音楽にも染まっていけるように頑張っていきたい。自分の限界値から逃げずに、可能性をもっと広げていきたいと思っています。
取材:齊藤 恵