T.MORIYAMMER

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【T.MORIYAMMER インタビュー】
“あぁ、やっぱりロックいいな”って
再確認して、それが自然に出せた

「Love Song」は、
今の俺にとっての究極のラブソング

先ほどから『ROLLIN' OVER』収録曲のサウンドはアコギベースでメロディーは童謡に近いとか好き勝手なことを言いましたけど、当然のことながら、どれもこれも仕上がりはロック以外の何物でもなくて。例えば、「恋することのもどかしさ」。ややフォーキーなメロディーですので、いくらでもさわやかなサウンドにできそうな印象ですが、やはりロックに仕上がっている。その辺は聴いてて少し嬉しくなりました。

あの曲に関して言えばね、アマチュア時代の曲なんだよね。19歳か20歳の頃に作った曲で、2年前くらいかな? 浩二の娘さんでAKIRAというアーティストがいるんだけど、彼女に“こんな感じの曲があるけど”って言ったら、それを気に入ってくれて、彼女のバンドのLuv-Endersで発売したんです。AKIRAは20代前半でまだ若いからビートを効かせて、いわゆるパワーアップみたいな仕上がりにしたんだけど、俺は…THE MODSであればビートを効かせたかもしれないけど、ソロだからテンポを少し抑えて、分かりやすく言えばThe Ronettesであったり、フィル・スペクターであったり、あの時代の感じにした…バチバチにリバーブかけたり。これも古い技だよね。でも、そこにこだわりたかったんですよ。

あと、サウンド面で言えば、「ロードムービーに魅せられて」はエレキギターを使っていますが、先ほどからのアコギの話ではないですけれども、弾き手の感触が分かるエレキギターという印象ですね。

あれは前半はシンプルな音作りなんだけど、間奏辺りから中期~後期のThe Beatles風を出しているよね。これは浩二が頑張ってくれた。

楽曲の後半はサイケデリックな匂いもしますよね。

うん。とりあえず今、できるギリギリのところでのThe Beatlesへのチャレンジでしたね。

The Beatlesと言えば、「Slap Stick Show」の歌詞にもオマージュが散りばめられていますよね。あの辺も躊躇なく出した感じですか?

あれはね、どうしても歌の世界観がコロナ禍での心情的なものが増えつつあったわけ。そればかりになってしまうとつらくなるから、ご機嫌な感じでオープニングを飾るのもいいなと思って、良くも悪くもバカな歌詞を書こうと(笑)。バカな歌詞と言ったって、“ロックバンドってドタバタショーみたいなもんだよね”っていうもので、そこで楽しくなってもらって、徐々に今の状況であったり、気分であったり、コロナでの心情であったりを感じてくれたらいいかなって。

なるほど。ここからは収録曲の歌詞についてうかがっていきますが、確かにコロナ禍から生まれたと思われるものが多いですよね。中でも「Crack Heart」は辛辣です。

緊急事態宣言が出された時、ニュースを観ていると俺が大好きなロンドンの街にまったく人がいない状況で…ネオンも消えてて、パブも閉まってて、“死の街”じゃないけれど、“俺が生きているうちにこんなことって起こるんだ!?”って思ったよね。もちろん東京だって、俺も外に出なかったから分からないけど、ニュースで観る限りは人も少なくなって、まさに“眠ってる街”だった。心がひび割れるような気分になって、そこで「Crack Heart」が生まれたわけ。今までだったらこの街で歌ったり踊ったりしている子たちがいたけど、それももうない…そういう映像を思い浮かべつつも、“今の状態ではそれを叫んだところで響かないよね”“みんなの心がひび割れていくよね”っていう。《フリーズされたこの街》だもんね。

ただ、そうは言っても後ろ向きなことを歌っても仕様がないと言いますか、それでも前向きに転化しているところが大きなポイントではありますよね。そうしたスタンスが随所に見られます。

…信じたいよね、やっぱり。ある人が“スタンディングで従来のライヴをやるには、早くてもあと2年はかかる”と言ってて、“下手したら10年はかかるかもしれない”みたいなことを言う人もいて。そうなると、俺なんてもう音楽をやってないだろうからね。だから、せめて信じようと。絶対にいつか近いうち…それがいつになるか分からないけれども、それを信じたいという想いを自分に対して歌ってる。ファンに対してでもあるけど、森山が自分自身にも歌っているようなところはありますね。

「Rollin' Over」には《クサっちまうぜ 口を塞がれ/歌を忘れた カナリアさ》とあるものの、「You're Not Alone」では《You're Not Alone 君は一人じゃない/You're Not Alone この空はつながってるさ》とポジティブに歌っていますしね。

そう信じたいよね(笑)。

ラストは「Love Song」で締め括られるのですが、アルバムの最後がこうしたピュアなナンバーですと、どこか落ち着くというか、少し安心するところはありますよね。

「Love Song」はね、書いた時は集中してたからそうでもなかったんだけど、歌入れの時に一瞬“俺がこんな曲を歌っていいのかな?”って思った。男として、人間として、あまりにも曝け出してるから。でも、歌い終わったあとで冷静に聴いたら、逆に“いや、これだろう”と思ったんですよ。こういう状況だから、ひとりの人間として、ひとりの男として、伝えるべきはこういうことだろうって。弱虫で、哀しくて、これが今の俺にとっての究極のラブソングじゃないかな?

作った時は無意識でしたか。

無意識。で、歌う時に恥ずかしくなったんだけど(笑)、それを第三者的に聴いた時に“これだ!”と思った。

やっぱり、最後に残るのはこうしたピュアさなんでしょうね。

最後はここだった。歌詞にある《共に 死が二人を分かつまで》というのは教会で結婚する時に言う言葉ですけど、“そうだろうな”って。こういう状況だから余計にそういうことを考えたんでしょうね。コロナ禍じゃなかったら絶対にこんな歌を作ってないし、絶対にこの歌詞は出てこない。コロナが作らせた曲であり、歌詞だと思う。

この状況下で《共に 死が二人を分かつまで》というのはとても力強く響きますよ。

俺は別にキリスト教でもないけど、本当にそういうことなんだろうなって思ったのね。俺にとってはTHE MODSもそうだし、全部含めてそういう感情になったのは事実だよね。

OKMusic編集部

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