Editor's Talk Session

Editor's Talk Session

【Editor's Talk Session】
今月のテーマ:
コロナ禍の中、
イベント開催に向けた主催者の想い

BARKS、OKMusic、Pop'n'Roll、全日本歌謡情報センターという媒体が連携する雑誌として立ち上がったmusic UP’s だからこそ、さまざなテーマを掲げて、各編集部員がトークセッションを繰り広げる本企画。第八回目は新型コロナウイルスの影響を受けながらも年内のイベント開催を宣言し、ライヴの再開に向けて先陣を切るATFIELD inc.代表の青木 勉氏、株式会社 近松代表の森澤恒行氏に参加してもらった。
座談会参加者
    • ■烏丸哲也
    • ミュージシャン、『GiGS』副編集長、『YOUNG GUITER』編集長、BARKS編集長を経て、現JMN統括編集長。髪の毛を失った代わりに諸行無常の徳を得る。喘息持ち。
    • ■青木 勉
    • 元祖ロックエージェント『エイティーフィールド』代表。メジャーからインディーズを問わず、数多くのアーティストをサポートし続けて、今年で20周年。オールナイトロックフェス『BAYCAMP』を主宰する。
    • ■森澤恒行
    • 株式会社 近松代表。ロックバンド・THEラブ人間ではキーボードを担当する他、『下北沢にて』実行委員長、ライヴハウス・下北沢近松を運営。イベントツアー制作を手掛け、2017年には音楽レーベルTHE BONSAI RECORDSを立ち上げる。
    • ■石田博嗣
    • 大阪での音楽雑誌等の編集者を経て、music UP’s&OKMusicに関わるように。編集長だったり、ライターだったり、営業だったり、猫好きだったり…いろいろ。
    • ■千々和 香苗
    • 学生の頃からライヴハウスで自主企画を行なったり、実費でフリーマガジンを制作するなど手探りに活動し、現在はmusic UP’s&OKMusicにて奮闘中。マイブームは韓国ドラマ。
    • ■岩田知大
    • 音楽雑誌の編集、アニソンイベントの制作、アイドルの運営補佐、転職サイトの制作を経て、music UP’s&OKMusicの編集者へ。元バンドマンでアニメ好きの大阪人。

“絶対にやる”って
自分に言うしかない

石田
今回はコロナ禍の中でもイベントを開催しようとしている方に現状をうかがいたく、おふたりに参加していただきました。自粛要請も緩和されたと言えどライヴハウスは厳しい状態ですが、状況はどんな感じですか?
森澤
下北沢近松を含め、下北沢のライヴハウスは7月くらいから人数制限をしながら入れていく予定で動いていますね。20~30人くらいを入れながら配信とセットでライヴをやろうと動いている人もいれば、配信のみでオンライン上にお客さんを入れるという2パターンになっています。
千々和
近松では6月22日にトークライヴをやってましたが、その配信を観たらラップのような透明なフィルムでステージと客席を区切っていましたよね。実際にやってみてどうでしたか?
森澤
そもそも下北沢の空き地を使って野外でやる予定だったんですけど、雨が降っちゃったんで急遽屋内でやる流れになりまして、お客さんも入れてみたんです。急だったので、サランラップのようなものしかなくて(笑)。お客さんも声をあげちゃいけないという規制があったので、最初は若干やりづらい空気もあったんですが、そこは拍手でカバーしていくという方法でやりましたね。
千々和
今後もしばらくはステージとの区切りが必要そうですね。
森澤
そうですね。一応、アクリル板を買ったんですよ。横1メートル、縦2メートルのを3枚買いました。立てて並べるイメージです。
青木
なるほどね。僕はステージ前に貼れるビニールを特注しましたよ。お客さんとアーティストの距離を2メートル空けるのはライヴハウスでは無理だから、ビニールを引くしかないじゃないですか。5メートル幅で180センチくらいの高さのものを、ステージの上から垂らすようにしたらいいかなと思って発注しました。だから、早く試してみたいです。
千々和
6月3日、青木さんのお誕生日にオンラインライヴを行なっていましたが、率直にやってみていかがでしたか? アーティストもたくさん出ていましたし、この状況で企画するのも大変だったと思うのですが。
青木
ネタバラシをすると、生配信もありましたが基本的はアーティストからライヴの素材をいただいて編集するのがメインだったんです。生ライヴのようにしている演奏は撮って出しじゃないですけど、何かトラブルがあった時のことも考えて配信の直前までに頑張って映像をつないで。だから、本番の2時間前くらいまでギリギリで編集をやっていたんですよ(笑)。でも、ある意味で事故に近いというか、最終的に1時間半の番組にしていたのが3時間番組になっちゃったんですけど(笑)。3曲以上送ってきてくれた人もいましたが、結果的に放送時間を超えていたので泣く泣く1曲だけにカットしたというアーティストも何組かいましたからね。本当に申し訳ないなと思って、本番中も謝ってました。なので、当日の僕が出たシーンはちょっと暗かったと思います(笑)。本気で落ち込んでいたんで。
千々和
そうだったんですね。誕生日なのに(笑)。
青木
でも、やって良かったです。編集以外はほとんど自分で担当してたので、台本を書いたり、一週間前の告知で参加アーティストを集めて…よく参加してくれたなって感じですよ。今思えば、もうちょっとやれることがあったなとも思いますけど(笑)。課金が全然できないんですよね。課金をするタイミングというか…例えば“乾杯しますよ”っていうタイミングとかクリックポイントがあるじゃないですか。その時間を設けてあげればお客さんも理解しやすかったと思うんですけど、そこのコミュニケーションの仕方が分からなかったんですよね。勉強不足でした。
石田
そのバースデーライヴもそうですが、まずはガイドラインに沿って“やること”が大事ですよね。とにかくアクションを起こさないと。
青木
下北沢でライヴを始めるっていうのもそうですね。森澤さんとは近所だからよく下北沢で立ち話をしているんです(笑)。
森澤
この間も30~40分くらい話してましたよね(笑)。
岩田
ようやく少しずつライヴができるようになってきましたが、出演されたアーティストからの感想やライヴに対する想いなどを聞いたりしましたか?
森澤
うちは5月から配信ライヴをやっていて、まだ誰も知らないような本当に若手のバンドが多いんですけど、目の前にお客さんがいない中でもライヴをやること自体が嬉しかったという話はすごく聞きますね。だから、配信でもやりたいという感じにはなってきていると思います。
青木
うちはまだ配信ライヴを始めたばっかりなんです。良くも悪くも有名な人ほどライヴをやりずらいじゃないですか。世間体もあってね。自分が担当するアーティストのライヴが3月からほぼ全部延期で、9月以降の公演も来年に延期していっているんですよ。そんな中、ようやく自粛が緩和されて、スタジオにメンバーが集まることもできるようになって、本格的に配信を始めようという流れになってきた。6月にサザンオールスターズが配信ライヴをやりましたけど、やっと一回ワンマンをやってみる流れになってきたので、今はその段取りをつけています。ZAIKOをはじめ、いろんなプラットフォームが出てきたし、実験的に始めるという段階でもありますね。ただ、このコロナ禍で解散をしたバンドもいるんですよ。ライヴができなくなったっていうのもあるんですが、コロナが怖いという人がまだまだいっぱいいて。
千々和
なるべく前向きにって進んでいますけど、取り返しのつかないことばかりなのが現実ですよね。
青木
これも個人的な感想なんですけど、バンドマンは実は元気な人ばっかりじゃなくて、陰な人が多いじゃないですか。家族や職場とか、周りの人から“辞めろ”って言われたりもするんですよ。配信を始めたら少しは明るくなると思うんですけど、それさえもできなかった時間が長すぎたことが少し心配です。だから、ライヴを再開するにしてもツアーっていうのは相当ハードルが高いですね、今。とても難しいと思っています。コロナ第二波が秋や冬に来るという噂もあったりするし。だからって、それで我々も“できない”と判断して止めるばかりなのもどうかと思うから、一回頑張ってツアーをやってみたい気持ちはありますね。配信からでもまずは始められることからやってみて、ライヴという本当の意味で音楽を体感したいと思い始めていかないと、今後お客さんがライヴ会場まで足を運ぶっていうのは、相当ハードルが高くなるんじゃないかと。僕は“イベントを絶対やります!”って…特に『BAYCAMP』なんかはずっと“やります!”と言い続けてるわけですけど。とにかく言い続けないといけない。自分に言うしかない! “絶対やらないよね!”って思っている人がいることも事実なので。
石田
そこは先陣を切る人がいないと。加藤登紀子さんが 6月28日に渋谷のオーチャードホールでコンサートをやりますけど。
青木
本当にすごいですよね、あの人は。というか、昔から活動している人のほうがパワーがある。特に今の若いバンドは以前からライヴを重要視してない感じになってきてて、それがコロナの影響で加速したというか。今はライヴをしない人が売れてるじゃないですか。ライヴバンドは意外に難しいところもあるのかもなと思いましたね。我々もそうですけど、“爆音で聴きたい!”と思っている人が本当はあんまりいないんじゃないかって。でも、ライヴハウスが小さなところからでも始められれば、3カ月後、4カ月後にはそれがちょっとずつ浸透して“ライヴに行きたい!”って思い始めるお客さんが増えていったらいいんですけど。ただ、知名度のある大きいアーティストはホールだからね。まだホールってやりようがいっぱいあるじゃないですか。だから、大きいアーティストがどんどんライヴをやってくれれば、お客さんも戻ってくると思うんですけど。
石田
アコースティックのツアーをやるとか、スタイルを模索しつつね。ちょっと話が少し戻りますが、コロナ以降、世間体的にバンドが良く思われてないというか…働きながらバンドをしてる人が、バンド活動を再開しようとしたら会社から“クビだ!”と言われたとかいう噂話を耳にして。
青木
それもなんとなく分かるんですけどね。だから、しばらくは余計にライヴ活動をするという感覚に対して偏見があると思います。ライヴだけなんですよね、夜の街はいいのに。
森澤
うちに出演したバンドの子たちは、電車で楽器を持ってるだけで人がガーッて引いていくと言ってましたね。
青木
ありますよね、そういう話が。震災の時はあんなに音楽の力を感じたのに、今回の始まりはバンドマンが悪になっちゃったじゃないですか。他にもいろいろあったのに、ライヴハウスでクラスターが出ちゃったのが大きくニュースで取り上げられて。この状態はいつまで続くのか、ほんとまったく見えていないですから。

OKMusic編集部

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