【藤川千愛 インタビュー】
誰かを救えるような
曲を届けていきたい
“これも藤川千愛なんだ!?”と
びっくりするような歌手になりたい
「東京」「神頼み」「嗚呼嗚呼嗚呼」「あした朝食を食べる頃には」といった曲を聴いて感じたことですが、楽曲を聴いて曲調に合わせて透明感のある歌詞を書こうというふうには思わないんですね。
あっ、私は先に歌詞を書いて、それに曲をつけてもらっているんです。
なるほど! だとしたら曲を書かれている方もすごいですね。
すごいです、天才です(笑)。今回のアルバムは怒りとか哀しみを描いた歌詞をお洒落なサウンドに乗せた楽曲を増やしたいという想いが私の中にあって、そう伝えたんですけど、それって実際は難しいことですよね。歌詞を汲みつつ、そこにとらわれすぎずに曲を書くということですから。だけど、すごくいいかたちに仕上げてくださって感謝しています。「あさぎ」なんて曲自体は本当にきれいだけど、歌詞とか歌はやっぱり尖っているんですよ。私は“大人になれよ”という言葉がすごく嫌いなんですね。“いい加減に諦めろよ”と言われた気がしてしまって。「あさぎ」はそういうことを歌っているし、強めなロックの感じにしたくて歌い方も結構巻き舌を入れたりしたんです。そうやってドスを効かせるというか。
「あさぎ」に限らず巻き舌を使っている曲が多くて、それが歌の特徴のひとつになっていますよ。
巻き舌はいつから使うようになったんだろう? …分からないです(笑)。誰かの歌い方を真似したわけでもないし。自分なりの歌い方をいろいろ試していく中で出てきて、自分に合うと思って使うようになった…と思われます(笑)。
歌唱面でも個性を大事にされているんですね。
私の祖父は演歌歌手だったんですね。すごく小さい頃に歌手になりたいって祖父に言ったら“千愛は個性がないから難しいかもしれない”と言われて、それがずっと頭にあったんです。“自分の個性ってなんなんだろう?”とか“自分なりの表現ってどういう歌い方だろう?”というところで悩んだりもして。でも、歌詞に感情を乗せるというか、伝えたいことを歌っていたら、自然と今のスタイルになっていきました。個性をつけようと思ってあれこれ模索したんじゃなくて、気がついたらこうなっていたんです。最近は個性的な歌い方をしていると言われることが多くて、そう言われるようになったんだと思うと嬉しいですね。
個性と魅力を兼ね備えた歌に耳を奪われましたよ。それに、セクシーな「おまじない」や繊細な「あなたを嫌いになれました」、温かみにあふれた「田中が彼氏だったなら」など、それぞれの楽曲に合わせて表情を変えていることも注目です。歌の方向性や温度感などは、いつもどんなふうに決めているのでしょうか?
私は音楽の難しいこととかはあまり分からなくて、歌のニュアンスは感覚でしかないんですけど…私は憑依体質で、詩の世界に入り込むと自然と歌詞の主人公になって歌えるというのがあって。あと、“何を歌っても同じだよね”と言われる歌手にはなりたくないんです。曲によっていろんな表現をしたい。聴いてくださった方が“これも藤川千愛なんだ!?”とびっくりするような、面白い歌手になりたいと思っています。
そういう多面性は今作でも十分に味わえます。さらに、「私にもそんな兄貴が」「あさぎ」「べつにいいけど」など低音域を使っている曲が多くて、声域の広さも分かります。
低い声は結構使っていますね。私の中には男っぽい部分がある…というか、すごく男だなと思う時があるんですよ。低いキーで歌う時はそういう面が出る気がしていて、それも私なんですよね。なので、“これが藤川千愛です”ということを伝えたくて低い声も多用しています。
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