藤川千愛

藤川千愛

【藤川千愛 インタビュー】
さらなる深化を遂げた
藤川千愛の世界

前作から約半年という短いスパンで完成させたアルバム『HiKiKoMoRi』。個性を継承しつつ楽曲や歌詞、歌唱面など、あらゆる面にいっそうの磨きがかかった同作は多大な魅力にあふれている。コロナ禍の中でより研ぎ澄まされたことを感じさせる藤川千愛をキャッチして、新作について話してもらった。

一曲一曲集中して作っていったら
自然といろんな曲ができた

今作の制作はいつ頃から始めたのでしょうか?

いつから始めたという、はっきりとした時期はないですね。私はリリースが決まったから曲を作るというタイプではなくて、常に曲を作っているので。前作の『愛はヘッドフォンから』(2020年4月発表のアルバム)から7カ月で新しいアルバムというのは結構早いペースだと思いますけど、コロナの影響でツアーもインストアイベントも全部中止になってしまって、やることといったら曲を作ることしかなかったんです。だから、ずっと曲作りをしていて、このタイミングでアルバムを出そうということになりました。

通常の活動ができなくなってしまった中でも、意欲的に音楽と向き合っていたんですね。前作のインタビューで曲を作る時は歌詞から入るとおっしゃっていましたが、それは今回もですか?

はい。いつもと同じでした。

楽曲を聴いて歌詞のイメージを膨らませるのではないのに歌詞が多彩なことからは、普段からいろいろな物語を思い描いたり、イメージを膨らませたりされていることが分かります。

そうですね(笑)。特に今回はコロナで、いつも以上に映画を観たり、本を読んだりすることが多かったんです。そこから歌詞のテーマを思いついたり、イマジネーションが膨らんだりというのはあった気がしますね。

いろいろな物語や情景、心情を描きつつ、一貫して“自分らしくあれ”というメッセージが込められていることも印象的です。歌詞と同じく、今作は曲調の幅広さも特徴になっていますね。

いろんなことをやりたいという気持ちがあるし、“こういうアルバムにしよう”と決めてから曲を作ったわけではないので、一曲一曲集中して作っていったら、自然といろんな曲ができましたね。アルバムは全体の流れを踏まえて、つなぎの曲を入れたり、他の曲を引き立てるための曲を入れたりすることがあるじゃないですか。私はそういう曲を入れたくなくて…それこそ全部の曲を好きになってもらえるようなアルバムにしたいんです。今回もそういう気持ちで収録曲を決めたので、『HiKiKoMoRi』の曲は全部気に入っています。

どの曲も気に入っているとのことですが、そんな中でも特に思い入れの強い曲を挙げるとしたら?

ええっ!? 本当にどれも思い入れが強いので、どれか一曲というのは難しいですね。…でも、強いて言うと「四畳半戦争」かな? この曲は昔からの友達に“最近無理してない? 前のほうが千愛らしかったよ”と言われて、めっちゃ頭にきて作った曲なんです。友達だけじゃなくて、ファンの人からも“変わったね”とか“変わらないでほしい”と、いい意味でも悪い意味でも言われることがすごく多くて。私は常に変わり続けていきたいんですよ。今の自分に満足している人はそこで終わってしまうと思うから、“どうして変わらないでほしいと言うのかな?”と思ってて。もしかすると、ずっと変われていない人は身近な人が変わっていく姿とか、自分の思い出の中のイメージと違う姿を見ると、変わらないでほしいという気持ちになるのかもしれないですね。でも、それは違うんじゃないかなと。“変わることを恐れずに、狭い世界から飛び出せ”ということを書いたのが「四畳半戦争」なんです。

人もそうですし、特にアーティストは常に変化して新しい魅力を見せてくれるとワクワクします。なので、変わりたいという気持ちを持っているのはいいことだと思います。「四畳半戦争」はネオソウルなどに通じる洗練された味わいの楽曲と“尖り”を感じさせるヴォーカルを融合させて、独自の世界を生み出していることも見逃せません。

歌詞を書いた時に、この歌詞をロックっぽい曲に乗せるとありきたりなものになってしまうと思ったんです。なので、ネオソウルっぽい雰囲気だったり、大人っぽさを感じさせるような曲にしてほしいと制作スタッフに言いました。そうすることで藤川千愛らしいものになるし、新しいジャンルを作れるんじゃないかと思って。だから、歌の面でもお洒落な曲だけど、巻き舌を入れたりしています。そういうところも含めて、一曲挙げるとしたら「四畳半戦争」になりますね。

藤川さんの曲はヴォーカルのあり方が個性を生んでいることが多くて、「四畳半戦争」はその最たるものと言えます。『HiKiKoMoRi』はそんな「四畳半戦争」を筆頭に注目の楽曲が並んでいて、例えば1曲目の「私に似ていない彼女」はリアルな女心を描いた歌詞とアッパーかつ陰りを帯びた楽曲のマッチングが絶妙です。アルバムの幕開けからズガン!とやられました。

これは未練タラタラな女の曲ですね。私のことをタイプだと言っていたし、私の髪が好きとか、洋服が好きとか、こういうところが好きと言っていたのに、次につき合っている人は私と全然真逆じゃん!…みたいな(笑)。そういう心情を書きました。あとは、友達と恋愛に関する話をしていると、つき合っている彼氏の愚痴とか、不満だったりを言うんですけど、私には同調してほしくないんですよ。愚痴っているけど、それに対して“そうなんだ。本当に最低な男だね”と言ってほしくない…みたいなところがあるんですよ、女子には。だから、相談とかされても“その人はダメだよ。別れなよ”とは言えなくて。だけど、元カレの話になると、もうボロクソ言っても大丈夫なんです(笑)。そういうことも意識しながら、「私に似ていない彼女」の歌詞は書きました。

その結果、女性の共感を得るものになっていると思います。

ありがとうございます(笑)。あと、この曲は初めて台詞を入れました。最初からやろうと思っていたわけじゃなくて、作曲してくださった藤永龍太郎(Elements Garden)さんから“Aメロは台詞にしちゃうのはどうかな?”という提案があったんです。いいアイディアだと思ってやることにしたんですけど、これがすごく難しくて! ちょっとでも照れちゃったりすると、もう全然ダメなんですよ。レコーディングの時は結構格闘しましたね。いろいろ試してみて、ボソボソした感じでしゃべることを意識しました。それに、ラジオヴォイスで始まるアレンジになっているんですけど、それもずっとやりたかったことなんです。さっき幕開けからズガン!ときたとおっしゃってくださったじゃないですか。私は「私に似ていない彼女」を1曲目にしたかったんです。スタッフからは違う曲を推す声もあったけど、絶対に譲らなかった。だから、1曲目にして良かったと改めて思いますね。

大正解だったと思います。いきなりピー音(不適切な歌詞を消す音)が入っていることにも衝撃を受けましたし(笑)。

そうなんですよね(笑)。言葉を変えたくなかったので、書き換えるんじゃなくて、消すほうを選びました。
藤川千愛
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アルバム『HiKiKoMoRi』【初回限定盤】(CD+BD)
アルバム『HiKiKoMoRi』【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

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