【LACCO TOWER インタビュー】
まだまだここから成長していく
タイトルから想起させられるさわやかさだけではなく、映画のように彩りや匂いが体感できるニューアルバム『若葉ノ頃』。そんなスケール感に満ちた作品について、メンバー全員に話を訊いた。
1年振りのアルバムリリースですね。
細川
今回は1年を通して録っていました。特に「花束」は前アルバム『遥』のレコーディング中に録ったんです。それで、『遥』のリリースツアーのファイナルでアンコールの最後に演奏して。そこで楽曲の持つスケール感に気付いたし、この曲があって『若葉ノ頃』が始まったと言えます。
どんなアルバムになったという実感がありますか?
細川
今までライヴハウスをメインにライヴをやってきたんですけど、ホールでもライヴをやり始めたので、そういうところも意識して曲作りをするようになりました。なので、アルバムも結果的にスケールが大きな仕上がりになりましたね。
今作のリリースツアーの会場もホールですね。
塩﨑
ライヴハウスは生まれ育った場所なので、これからも変わらずライヴをやっていきますけど、自分たちが主催しているフェス『I ROCKS』は群馬音楽センターというホールでやっていますし、そこで観せているバンドの広がりをホールツアーではワンマンの長い時間で、かつライヴハウスには来られない幅広い年代の人にも観てほしいんです。
もっと言えば、今作を聴いていて、ライヴに行けない人も楽しめるアルバムだと思いました。
真一
『遥』から不特定多数の人に届けたい気持ちがあったんですけど、あの時はまだ手探りで、無理矢理感があったんですよね。でも、今回は自然にできました。
重田
これまではレコーディングのスケジュールもカツカツだったんですよ。でも、今回は一曲一曲を自分の中で消化してからレコーディングできた感じがあります。
ひとりひとりの強い個性も曲にきれいに溶け込んでいる印象があるんですが、その点に関してはどうですか?
松川
僕個人で言うと、今回は良くも悪くも周りを気にしてなかったんです。今までで一番LACCO TOWERを俯瞰で見て、どういうものがいいのかなって考えましたね。
細川
僕は『心臓文庫』(2016年6月発表のメジャー2ndアルバム)までは、前作を越えなきゃとか、前作でやったアプローチはしないとか、常にストレスがかかるような考え方をしてきたんです。もっとシンプルでいいのに、難しいフレーズを入れたり。でも、『遥』からはフラットになって、“LACCO TOWERのギターはこうだ!”っていうのも取っ払って、いちギタリストとして曲に向き合うようになりました。
曲作りのまとめ役を担っているのは真一さんだと思いますが、キーボーディストとしてはどうですか?
真一
自分はコンポーザーとしての割合が大きくて、キーボーディストの割合はどちらかと言えば少ないんです。レコーディングでも歌よりもあとに録りますし。今回はピアノのフレーズからできた曲が多くて、それが弾ければいいっていうくらいな感じでしたね。あとは、隙間でどの楽器も邪魔しないように…どうやって目立つかっていう(笑)。ただ、LACCO TOWERの曲はキーボードがないと成立しないようにするっていうのは、最低限守るべきところだとは思っています。
全ての楽器のレコーディングが終わったあとに歌を録るというバンドが多いと思うのですが、この真一さんのスタイルについてヴォーカリストである松川さんはどう思っていますか?
松川
楽しみです、そこは。僕も曲に口出しをしないし、真一も歌詞に口出ししないんですね。お互いがちょうどいい距離で、最終的に曲が成立するのが我々だと思っています。
それ、長くバンドを続ける上での秘訣でもありますね。
松川
相当濃い味のエゴじゃない限り、出さないほうが絶対にいいんですよ。エゴって出せば出すほど責任が出てくると思うんです。責任を取れないエゴなら出すべきではない。僕らは5人が5人とも微妙なところで出し合っているんです。
“若葉ノ頃”というアルバムタイトルですが、どういった経緯で付いたのでしょうか? 「若葉」という曲もありますが。
松川
タイトル案をみんなで意見を出し合ったんですよ。そういう決め方は初めてだったんですけど。この“若葉ノ頃”を出したのは僕なんですけど、さっきみんなが言ったように、『遥』で今までと違うアプローチをしたので、まだまだここから成長していくっていう意味を込めて、青年になったバンドということで“若葉ノ頃”とした感じです。
さわやかな1曲目「若葉」からヘヴィな「蜜柑」に続くギャップは、いつもながら最高ですね。
松川
この曲のタイトルは芥川龍之介の小説『蜜柑』から取ったんですよ。LACCO TOWERの曲名には果物の名前が多いんですけど、これがファイナルかもしれません。だいたいの果物の名前を使ってしまったので(笑)。
(笑)。「薄荷飴」は曲名も含めて臨場感がありますね。《神楽坂》という地名も出てきますし。
松川
歌詞に地名を出したのは初めてなんですよ。僕、歌詞で実体験を書くことはないんですけど、唯一の音楽仲間で、よく飲みに行く中田裕二くんと神楽坂あたりで待ち合わせしていたら、不幸せそうな女の人を見てしまって、その人がきっかけで想像が膨らんだんですよね。実際は、この歌詞のような状況の人ではなかったと思うんですけど(笑)。
他にもシングルになりそうな強度がある曲ばかりが揃っていますね。
真一
今回はタイアップが先行して決まった曲もありましたし…「雨後晴」「最果」「愛情」と。なので、他の曲もそれに負けないようなものを作ろうって引っ張られていきましたね。
最後に塩﨑さん、総括していただけますか?
塩﨑
アルバムタイトルを“LACCO TOWER”って付けてもいいくらいの最高傑作になったと思います。7月に結成16周年の企画をやったんですけど、今が一番バンドの状態がいいと思うんです。今作も早く聴いてもらいたくてわくわくしています。
取材:高橋美穂
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アルバム『若葉ノ頃』2018年8月22日発売
TRIAD/日本コロムビア
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『「若葉ノ頃」発売記念ホールツアー2018 「五人囃子の新時代」』
9/08(土) 群馬・高崎市文化会館
9/16(日) 愛知・名古屋市芸術創造センター
9/17(月) 大阪・サンケイホールブリーゼ
9/24(月) 東京・昭和女子大学人見記念講堂
ラッコタワー:日本語の美しさを叙情的リリックで表現し、どこか懐かしく切なくさせるメロディー、またその世界とは裏腹な激情的ライヴパフォーマンスで、自ら“狂想演奏家”と名乗り活動。自身主催のロックフェス『I ROCKS』を2014年から開催している。復活したレーベル『TRIAD』と契約し、15年6月にアルバム『非幸福論』でメジャーデビューを果たし、20年に5周年を迎えた。LACCO TOWER オフィシャルHP
「雨後晴」MV