【水樹奈々】
20年では収まりきらないほどの
濃厚な時間を過ごしている
デビュー20周年の今も試行錯誤と奮闘の
日々
そして、36thシングルの表題曲「TESTAMENT」は『戦姫絶唱シンフォギアAXZ』のOPテーマで。オーケストラとデジロック、オペラのようなコーラスもすごすぎて笑ってしまいました。
ですよね。レコーディングで1テイク目を録り終えた時もブースの向こうでスタッフが大爆笑してました。“女子が歌う曲じゃないよね。あはは”と。それを歌う私はいったい何なんだ?と思いましたけど(笑)。MVは教会で撮影して、白ナナと黒ナナ、ふたりのナナが対峙して歌い上げる、インパクトのある映像になっています。
頭から全力疾走してる感じですね。
戦闘シーンで歌う劇中歌もどんどん派手になっているので、それを総括する主題歌となるとこれくらいパワーがないと!
ブログでは“殺人級”と評していましたが。
トリプルSのさらに上をいきました(笑)。技術的な難易度は「Vitalization」が1番ですが、でもこの壮大なオケに負けないエネルギーで、ひと言ひと言に込める感情は、ただエモなだけではなく、まるで歌劇のように表情を作っていかなければいけない。腹筋でグッと支えながら、声量も出して…それもただストレートに出すだけではない、表現を操るとても難しいレコーディングになりました。まさしく“絶唱モード”でないと歌えない曲です。アニメの第1期で目から血を流して絶唱したシーンを思い出します(笑)。
ライヴの時の演出が楽しみになりますね。今までは空を飛んで歌ったりとかありましたが。
いろいろやらせていただきました! 巨大ロボットや恐竜にも乗って、小林幸子様にもなりました(笑)。巨大な何かだけでは、同じパターンになってしまうので、新たな切り口を考えたいです!
カップリングの「ACROSS」は、スマートフォン向けアプリケーション『テイルズ オブ アスタリア 追憶の楽園(エデン)』のテーマソングですが。
作詞作曲が吉木絵里子さんで、吉木さんは普段作曲がメインなのですが、今回デモで1コーラスだけ仮歌詞を書いてくださっていて。それが「テイルズ」シリーズの世界観とぴったりだったので、ぜひ続きを書いてほしいとお願いしました。そうしたら吉木さん、“私、2番以降を書いたことがないの!”と。“では、一緒に頑張りましょう!”と、私が演者として参加しているからこその感情や、知っている限りのテイルズの世界観を吉木さんにお伝えして、一緒に言葉を吟味しながら制作しました。ゲームで流れているのは1コーラスだけなので、ゲームをプレイされている方もぜひCDで、渾身のフルコーラスを聴いていただきたいです。
そして、3曲目の「ファンタズム」はピアノがメインのサウンドで、ちょっとおしゃれな雰囲気もあって。
『NEOGENE CREATION』制作時に出会っていた曲で、作詞作曲の加賀山長志さんは初めましての方なのですが、なんと私と同じ愛媛県の出身なんです! 曲中に語りがあるのですが、声優だからこそ、これまでやってこなかった手法で。そこにあえて挑戦してみたいと思いました。ピアノの音色を中心にした、とてもシンプルな構成のバンドサウンドなのですが、疾走感がありつつも、どこかもがいているような、グルグルとループしているような不思議な空気感がとても面白くて。このシングルにはとても濃い2曲が揃ったので、3曲目はこれまでと違う個性を持った曲を選びました。
歌詞は未来世界の物語のような感じですね。
ちょうど私が77歳になる40年後のお話です。きっと40年後はバーチャルの世界が現実との境界が分からなくなるくらいリアルになっているかもしれなくて、その怖さを歌っています。現実で上手くいかず、バーチャルの世界に逃げ込んだ時、本当に自分は何がしたいのか? 逃げてばかりでいいのか?と悩む葛藤を描いています。一歩踏み出そうかな、でもやっぱり楽にいたいと、現実とバーチャルを行ったり来たりしているイメージです。でも、もしかしたら主人公は人間じゃなかったのかも?…とも捉えられるように、中性的な感覚で歌っていますね。
《映るボクハダレダ?》というところですね。
もしかしたら人間になりたいけどなれないアンドロイドかも?みたいな感覚もあったり、もともと人間だったけど現実で生きることを諦めて、まるでアンドロイドのようなふりをして生きている人なのかもしれないし…。
この曲をもとにアニメか映画が作れそうですね。
本当にそうですね。聴いた方それぞれでシチュエーションや主人公像を想像しながら聴いていただけたら嬉しいです。
今回はシングル2枚で計6曲、アルバムか!ってくらいで。
そんな水樹さんは、今年声優デビュー20周年イヤーですが。
びっくりです。そんなに時間が経っていたなんて! でも、改めて振り返ると、20年では収まりきらないほどの濃厚な時間を過ごしている感覚です。幸せです。
この夏はミュージカル『Beautiful』でキャロル・キング役をされていて、20周年イヤーに相応しいチャレンジですね。
偶然NYでプレビュー公演を観ていた作品で、公演時期も20周年イヤーである17年の7月だったので、神様が挑戦しなさい!と背中を押してくれたのではと勝手に運命を感じています。ミュージカルをやるとは想像もしていませんでしたが、ご縁だと思って勇気を出して決めました。
でも、声優としての演技もステージもやっているわけですから。
いえいえ、これがもうまったく違っていて。アフレコはノイズを出さないように、身体の動きをセーブして演じるので“心は動かしても体は動かさない!”という演技を長年やってきた私としては、自然に動きながら台詞を言うことがとっても難しくて。そして、私の楽曲はハイトーンヴォイスでレーザービームのように攻めていくことが多いのに対して、キャロル・キングの曲はハスキーな低音でグルービーに、まるで喋るように表現するものが中心。自分になかった引き出しを今一生懸命見つけているところです。移動中はずっとキャロル・キングを聴いて勉強しています。みなさんに楽しんでいただけるステージを生み出せるよう、試行錯誤と奮闘の日々です!!
取材:榑林史章
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シングル「Destiny’s Prelude」2017年7月19日発売
KING RECORDS
- KICM-1769
- ¥1,111(税抜)
- ※初回製造盤:特製カラーケース
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シングル「TESTAMENT」2017年7月19日発売
KING RECORDS
- KICM-1770
- ¥1,111(税抜)
- ※初回製造盤:特製カラーケース
ミズキナナ:声優、歌手として高い人気を誇る。声優としてのデビュー作は1997年のプレイステーション用ゲーム『NOёL〜La neige〜』門倉千紗都役。歌手としては2000年12月にシングル「想い」でデビュー。09年6月に発売された7枚目のオリジナルアルバム『ULTIMATE DIAMOND』で声優として初のオリコンチャート1位を獲得し、11年12月と16年4月には東京ドーム2デイズライヴも大成功に収めた。水樹奈々 オフィシャルHP