水樹奈々

水樹奈々

【水樹奈々 インタビュー】
意表を突いた展開に心を掴まれて、
この曲を選んだ

アニメ『トモダチゲーム』オープニングテーマとして配信リリースされた「ダブルシャッフル」。お金と友情を天秤にかけて騙し合いを繰り広げるサスペンス系アニメのテーマソングになっており、そこには新たな水樹ワールドが完成している。楽曲制作秘話、アニメになぞらえ“金か友情か?”という質問、さらに現在制作中の14thアルバムや夏に開催する『NANA MIZUKI LIVE HOME 2022』についても話を聞いた。

駆け引きを楽しむような感覚で
レコーディングした

「ダブルシャッフル」は『トモダチゲーム』のオープニングテーマということで、原作を読まれていかがでしたか?

毎回次が予測できなくて、私は単純なタイプなので騙されっぱなしでした(笑)。“きっとこの人は大丈夫”と思って読んでいたら、途中でどんでん返しされたり。原作者の先生が仕組んだ罠に、きれいに全部ハマってしまいました(笑)。

友情かお金かと問われたら、誰がどう考えても友情を選ぶはずなんですけど、そう単純にいかないのが『トモダチゲーム』の面白いところで。

そうなんですよね。疑ってしまうのは寂しいことだし、“そこは絶対に友情でしょ!”と思うんですけど、あんなふうにまさかの事態が次々と起きたら疑って見てしまっても仕方がないのかも…と思いながら読んでいました。それにルールがすごく意地悪なんです。人の弱いところを見事に突いていて、私だったら人間不信になってしまいそうです(笑)。

どんな罠が待ち受けていると分かっていても、水樹さんはやはりお金よりも友情ですよね。

もちろんです! 友情はプライスレスですから。お金があっても孤独だったら人生はつまらないと思います。例えば、ご馳走を食べてもひとりじゃ味気ない。“これ美味しいよね〜”って分かち合える人がいるから楽しいんです。旅行や趣味も同じく、一緒に楽しめる友達がいると、より素晴らしい時間になる。綺麗事じゃなく、本当にそうだと思います。それだけに、『トモダチゲーム』のように友達に騙されるのが一番キツいですよね。

でも、こういったサスペンス系アニメのテーマソングを手がけるのは珍しいですね。

これまでは“友情”“絆”“愛”といったストレートなテーマで、ピュアな心情を描いたストーリー主題歌を担当することが多かったので。分かりやすく拳と拳でぶつかり合うみたいな。でも、今回は心理戦で、特に主人公の友一は曲者でひと筋縄ではいかないタイプ。そういうキャラクターの心情や視点をどうやって自分の楽曲に落とし込むか、最初は悩みましたけど、すごく楽しい時間でもありました。これまでに経験したことのない、新しい水樹奈々ワールドを引き出してもらえるんじゃないかと、とてもワクワクしました。

タイトルの“ダブルシャッフル”は“裏切り”という意味で、まさしく『トモダチゲーム』にぴったりで。

“ダブルシャッフル”には3つの意味があって“裏切り”の他に、カードの手札を動かそうとして動かさないというフェイク、そして言葉の通りダンスで同じ足を続けて2回シャッフルさせるという意味があるんです。『トモダチゲーム』には裏切る人もいれば、その場を乗り切るためにフェイクを取り入れる人、ピュアなままのように見える人もいて。それぞれの思惑が絡み合っている様子を表現したくて、この3つの意味を持つ“ダブルシャッフル”をタイトルに選びました。

曲も今までの水樹さんにはなかった感じですね。中盤の展開には、まさしく裏切られました。

嬉しいです(笑)。私も最初に聴いた時、“ここでこうくるの!?”と思わず笑ってしまって。意表を突いた展開に心を掴まれて、この曲を選びました。

候補曲を集めた時に、何かテーマみたいなものを提示していたのですか?

実は次のアルバムの制作を始めていたところで、これまでの水樹にはなかった表情を引き出せるようなトリッキーな楽曲を作りたいと、作家のみなさんにオファーを出していたタイミングだったんです。そんな中、この『トモダチゲーム』のオープニングテーマのお話をいただき、同じタイミングで集まっていた楽曲の中に「ダブルシャッフル」があって。この曲しかない!と直感で選びました。まさに引き寄せ合ったようなご縁を感じました。

メロディーが独特だし、同じメロディーの繰り返しをたたみかけてくるので、いつもの高音とかパワー系とは違う大変さがあるんだろうなと思いました。

実はブレスポイントがシビアで、Bメロは全部ひと息で歌わなければならず、すごく大変でした(笑)。腹筋勝負というか肺活量勝負。スラスラと歌うだけではなくニュアンスをつけていかないと、メロディーの繰り返しが多く、テンポが速いのもあって、サラッと流れて行ってしまうんです。しっかり言葉にインパクトをつけていくには、しっかり息の量が必要で、そうなると息の残量調整が大変で。思い切り吸える場所で、どれだけ補充できるかが勝負です(笑)。

今までの早口の曲とはどんなふうに違いましたか?

前回のアルバム(2019年12月発表の『CANNONBALL RUNNING』)の収録曲「カルペディエム」はものすごく早口で大変だったんですけど、それとはまた少し違った大変さでした。日本語のピースをメロディーの枠にスパンスパンスパンときれいにハメていくようなイメージで…ただきれいにハメるのではなく、いろんな味をつけていく必要があって。ドラマの作り方が大切な曲なので、自分の中でも駆け引きを楽しむような感覚で歌いました。でも、その駆け引きがすごく楽しくて! 歌うたびに自分の中で新たな引き出しが開けられていって、“今度はこう歌ってみようかな?”って毎回いろいろ試しながら歌っていました。これまでの歌い上げる曲調のものとは違った歌い応えのある楽曲でしたね。

メロディーがハネた感じで、すごくリズムに乗っていて心地良いですね。

グルーブ感や軽快さも大事にしました。作品の世界観がシリアスでダークなので、曲も同じように重くしてしまうとへヴィになりすぎてしまう。逆にこういう作品だからこそ軽快さを出すことで、そのギャップや違和感も楽しんでもらえるんじゃないかと考えました。『トモダチゲーム』は“どこかおかしい”“何が真実か”と、キャラクターたちはいつも違和感や疑問を持って渦中にいるので、そういう部分ともシンクロするのではないかと思い、心地良い違和感を目指しました。私自身もどんなふうに切り込んでいくか、歌う時は直感と瞬発力をフル稼働でした。“『トモダチゲーム』の運営を手玉に取ってやるぜ!”みたいな(笑)、そんな雰囲気が曲にも落とし込めたら面白いんじゃないかなと。

シャウトやフェイクも入っていますが、カッコ良くシャウトするのって難しいですよね。

そうなんです!(笑) 実はすごく難しいんですよ。ライヴだったら高揚感もあるし、その場の勢いで思わず叫んじゃうことがありますけど、レコーディング中はとても冷静なので(笑)、しかもヴォーカルブースに入ってひとりで叫ぶから、なんだか面白くなっちゃって(笑)。だから、シャウトのところは何テイクも録りました。シーンとした中ではやりにくいだろうと思ったディレクターさんたちが“盛り上げましょうか?”と言いながら、トークバックでフゥー!とかけ声をかけてくれたりして…それで余計に恥ずかしくなってしまったということもありました(笑)。
水樹奈々
配信シングル「ダブルシャッフル」

OKMusic編集部

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