【木村竜蔵】生っぽさから伝わる空気
感を
大事にしたかった
無骨でありながら、どこか繊細。独自の感性で綴られた言葉を熱のこもったサウンドで聴かせるソロシンガー・木村竜蔵が、ミニアルバムでデビューを飾る。
取材:大庭利恵
“6本の弦の隙間から”というタイトル通り、ギターの音といい、息づかいといい、全ての生っぽさが、楽曲とシンクロした熱を感じさせる作品になりましたね。
そうですね。“生っぽさ”というところには、すごくこだわりました。そこから伝わる距離感、空気感というのを大事にしたかったんで。
では、レコーディングに入る前は、どういうアルバムにしたいと思ってました?
具体的なテーマはなかったんですけど、今ってデジタルの要素を取り入れたサウンドが多いですよね。僕もそういう音楽はすごく好きなんですけど、自分でやるのはちょっと違うなと思ってましたね。なので、プロデューサーの細海 魚さん(サウンドプロデュース&キーボード)と作らせてもらったことで、今の時代にはちょっとないサウンドを提示することができたんじゃないかと思ってます。
というのは、具体的に言うと?
出来上がったものを一歩引いて見た時に、和の要素を感じたんですね。歌詞に英語を一切使わないというところは意識した部分なんですけど、もっと根底に。
それはフォークソングというニュアンスってこと?
いや、それは親父(鳥羽一郎)から受けた影響だと思いますけどね。
となると演歌!?
あえて言うならば、そうですね。例えば、リード曲にもなっている『風の祈り』という曲は、去年の3.11の震災が起こった時に思ったこと、感じたことを書いた曲なんです。でも、本来歌というものは、起こったから作るのではなく、そういう時に聴きたいものを作っておくべきなんじゃいかと思ったりしながら、震災のことを含めて、みんなに伝えたいことを書いたんですね。で、その中に、実は親父の曲で使われてる“山背”や“火郡(ほむら)”という言葉を歌詞の中に忍ばせたりしてるんですよ。
それは、遊びごころ的に?
それもあります。あとは、古き良き日本語として知ってもらっても面白いかなと思って。僕の歌詞は映画のようにエピソードはしっかりあるんだけど、なるべく大きく捉えられるような言葉を入れることで、聴いてくれる人が好きに解釈できるようにもしておきたかったんです。
ギター松田 文さん、藤井一彦さん(THE GROOVERS)、ベース井上富雄さん、ドラム池畑潤二さん(ともにex.THE ROOSTERS)という錚々たるプレイヤー陣との共演は、やってみてどうでした?
もう、すごかったです! 恐縮するべきではないなと思いつつ、やっぱりしてしまいますよね。ラストの『セレナーデ』は一発録りだったんですけど、その時の緊張感というか、ライヴ感がものすごくてブルッときましたもん。でも、それ以外の場面では、スタジオいるメンバーの方々を見て、ひとりでニヤニヤしたりもしてましたけど(笑)
実感したら、ニヤニヤしちゃったんだ(笑)。
はい(笑)。今、僕ができる最高のものが作れたらいいなと思っていたんで、今の自分に足りないものを補って、さらにプラスして、広げてくれるプレイヤーの方々とやれることが僕の“今”なのかなと思ったんで。なので、その今をつなげていって、どんどん広がりを持った音楽を作っていきたいですね。
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