「攻殻機動隊」25周年リレー
インタビュー 女優・モデル 加藤夏希
前編 「攻殻」鑑賞は夫婦の会話に最

 加藤が「攻殻機動隊」の存在を知ったのは、上京前の秋田に住んでいた時。まだインターネットがなかった当時、アニメの情報源は毎月購入しているアニメ誌だった。

 「どのアニメ雑誌にも『攻殻』のイラストが載っていました。『この作品はなんだろう?』と思って、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』をレンタルビデオで借りて見たんです。当時は子供だったので内容はまったくわからなかったですね。主人公の素子がやっていることは正義なんだろうなと思いながらも、なんだか彼女にも嘘をつかれているんじゃないかという気持ちになるぐらい、お話が複雑に感じました」

 その後、上京した加藤はアニメ関係の仕事にも携わるようになり、周りから「攻殻」は絶対見ておいたほうがいい」と勧められる。「難しい作品だ」というイメージをもっていたが、時が経ってネット文化も浸透していたこともあり、「あ、そういうことなんだ」と作品の理解が進んだ。そうして「攻殻」シリーズを全て見るようになった加藤が好きなキャラクターは、主人公の素子だという。

 「かっこいい女性ですよね。甘い誘惑がきてもサラッとかわすような感じで、同性だったら『こんな女性になりたい」と憧れの気持ちを抱くんじゃないかと思います。勝手な見方かもしれませんが、素子はキャリアウーマンのようにみえるんですよ。仕事がメチャクチャできて、仲間を守って、危険なところには自分だけでいくっていう。でも、そんな裏では秘かに孤独と戦っているようなところもあって、働く女性としては『ともに頑張ろう!』と感情移入してしまいます」

 アニメ作品としても、主人公が女性であるのはポイントが高いと加藤は語る。

 「男性が主人公だったら、女性には少しとっつきにくかったかもしれません。恋愛もののアニメで、周りに男性が大勢いて、女性の主人公がドジっ子みたいな作品はわりとありますが、『攻殻』は、できる女を周りの男性が守るというのが良いですよね。意図して描かれてはいないかもしれませんが、周りのメンバーが素子を一生懸命守ろうとしていて、彼女が“お姫様状態”になっているようにも見えるんです。憧れの絵図だなあと思います(笑)」

 加藤から見ると、「攻殻」に登場する男性キャラクターには、ある法則があるように思えるという。

 「『ARISE』シリーズでもそうですけど、イケメンは大体“悪い”イメージですよね。『新劇場版』で素子から『パーツ』と呼ばれる相棒になる男たちは、決して見た目がかっこいいわけではない。本当にいるような普通の人として描かれていて、すごくリアルな感じがします。少女漫画や女性向けアニメだと、やっぱり男性はイケメンに、女性も可愛く描かれがちですよね。素子も綺麗ではありつつも、どことなく完璧ではない要素が入っている感じで。絵で描かれたアニメなのに、あえて絵の完璧さを求めない描かれ方が私はすごく好きです」

 「攻殻機動隊ARISE」のイベントでMCを担当した加藤は、夫婦で劇場にきている観客が多かったことが印象に残っているそうだ。また、その光景をみて共感もしたという。

 「見たあとは、やっぱり作品について話し合いたいと思います。特に『攻殻』は、政治関連の話や難しいテーマがありますから、見終わったあと男性に『あれはどういうことだったの?』って聞く女性が多かったように見えました。そうすることで、より作品の余韻にひたれますし、2人の間で作品に対する気持ちを共有できますよね。こうして夫婦の会話が成り立つんだって、私も結婚してよくわかりました(笑)」

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