江戸時代の離婚は現代の2倍!?映画『
駆込み女と駆出し男』完成報告会見レ
ポート

本作は、江戸時代の駆込み寺を舞台に、離縁調停人が男と女のもつれた愛の糸を解きほぐし、ワケあり女たちの人生再出発を手助けする、笑いと涙の人情エンタテインメントだ。
江戸時代の離婚は現代の2倍!?映画『駆込み女と駆出し男』完成報告会見レポート (C)2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会
そしてこの度、本作の完成報告会見が2月18日に開催された。

会見には、戯作者に憧れる見習い医者であり、離縁を求める女たちを手助けしていく駆出しの離縁調停人中村信次郎を演じた大泉洋さん、夫の暴力から逃げ出し駆込んだ働き者の鉄練りの女じょごを演じた戸田恵梨香さん、豪商・堀切屋の愛人で、ある秘密を持って駆込むお吟を演じた満島ひかりさん、ゴロツキの剣豪に夫を殺され無理やり結婚させられた女サムライの駆込み女の戸賀崎ゆうを演じた内山理名さん、御用宿・柏屋の主でベテラン離縁調停人、三代目柏屋源兵衛を演じた樹木希林さん、そして原田眞人監督が登壇。

最初は緊張の面持ちだったキャスト陣も、映画同様の大泉さんと樹木さんの掛け合いツッコミに次第に和み、最後はキャスト陣、原田監督そして会場のマスコミまでもが巻き込まれての爆笑会見となった。

以下、会見の模様です。

MC:登壇者のみなさまに一言ずつご挨拶を頂戴いたします。

大泉さん「井上ひさしさんの原案もそうですが、脚本を読んで、エネルギーに満ちていてすごく勢いを感じました。時代劇ながら新しい映画を観たなと思いました。多くの方に観ていただけるよう、ぜひ宣伝してください!」

戸田さん「時代劇映画は初めてでしたが、見やすくて笑えて泣ける作品です。若い人にも楽しんでもらえる映画になっていると思いますので、多くの人に観ていただけるよう頑張ります。」

満島さん「べらんめえ口調で、着物の肩を落として荒っぽく粋に演じなければならなくて難しい役柄でした。撮影は、進む方向を決めすぎないで、その時の感覚で進んでいき、原田監督はとても感性が素敵です。撮影は苦しかったけれど楽しく、観たことのない時代劇になっています。いろんな人が出てきて現代に通じる作品だと思います。」

内山さん「映画自体が久しぶりだったのですが、原田監督の『わが母の記』を観て、いつかご一緒したいと思っていました。女サムライということで毎日刀を持って、撮影前も薙刀や殺陣などいろいろと稽古して、いい思い出です。時代劇はたくさん出ているのですが、原田監督にはこうしなきゃいけないという固定概念を崩していただき、新しい時代劇の役を作ることができました。時代劇を観たことのない方でもあまり興味のない方でも楽しめる作品だと思います。」

樹木さん「こういうところに出てきても映画に役立ったことがないんですけど、行きがかり上ね(笑)未だに題名を覚えられないんですけど(笑)(映画に登場する御用宿・柏屋の暖簾の字を樹木さんが書いたことに触れ)大したことないのよ。『経費節約で書いてよ』って言われて、ま、自分ちの暖簾だからしょうがないか、と。提灯にもいっぱい書かせられたし、なんか割に合わないような・・・(笑)」

原田監督「樹木さんには『原田組』という字も書いてもらいました。撮影中はオフィスに今は自宅に飾っています。『わが母の記』以来、樹木さんにどういう役で出てもらおうかそればかり考えていて、源兵衛さんて原作では男の人なんです。おとら婆さんという女性が出てきて最初はその役と考えていたのですが、いいや二人合わせちゃえってことで樹木さんにお願いしました。時代劇は初めてでいろいろと勉強させていただきました。現場も楽しかったですし、出来上がったものも今まででいちばん良かったと思います。」

Q:初めての時代劇。井上ひさしさんの原作のもつ世界観をどう描こうと思われましたか?

原田監督「時代劇のこだわりは儀礼、礼儀ですね。江戸から東慶寺のある鎌倉までの距離感、その道中描写、登場人物たちの生き様や生活、女たちの連帯、信次郎の成長物語などの背景を考えるのが、脚本を書く前に時間がかかりました。井上ひさしさんはリサーチマンで、『戯作者銘々伝』『手鎖心中』なども参考にさせていただきました。苦労したのは原作は時代がはっきりとは書かれていなくて、振袖火事(明暦の大火)が約150年前とあって、それが1657年で・・・など考えて、戯作者が弾圧されていたころということで天保の改革あたりがいいだろうと決めてからはすんなりといきました。」

Q:大泉さん・樹木さんは、現代でいう離縁調停人のような役を演じられました。物騒なことも起こる中で、お二人の軽妙な掛け合いも大変印象に残りました。撮影現場で何か事前に打ち合わせたことや、印象深いやりとりなどありましたでしょうか。

樹木さん「印象深いところはありません。」

大泉さん「そんなことない!ありましたよ!」(場内爆笑)

樹木さん「(お勝役のキムラ)緑子さんと信次郎はすごいやりとりしていたけど。(監督に向かって)大泉さんに決めた理由はなんなの?」

大泉さん「勝手に質問してる!」

樹木さん「大泉さんはもちろん、ここにいる若い3人が力量以上のものを発揮していて感心いたしました。(会場から拍手)」

大泉さん「質問が変わってしまいましたが、印象的なシーンはあります!撮影現場では、京都は寒かったので火のまわりに樹木さんを囲って集まって樹木さんの話に爆笑して次のシーンを待つといった感じでした。勉強になったのは、樹木さんは『すべて私が決める』という人なんですよ。帰る時間も自分で決めてしまうんです。まだ撮らなきゃいけないシーンあるのに!そうかと思えば逆に『今日はもう大丈夫です』という日には、『夕食いらないって宿に言っちゃったのよ』って言って、映画の中で食べて帰るんです(笑)」

樹木さん「体が弱いのよ。そういえば撮影所で橋爪功さんに会って、『あんた、男の役もやるようになったのか。僕らの役とらないでくれよ』って言われましたね。まあだから2人のシーンは特に印象ないのよ(笑)」

Q:駆込み女のみなさんは江戸時代の庶民の女たちを演じられました。縁切寺に駆込んで来る女たちの弱さと強さは現代の“女性の生き方”にも通じるところがあるかと思います。それぞれ演じた女たちに共感された点はありますか?

戸田さん「あまりそういう経験がないので、わからないのですが、心から信用できる人がいなかったじょごが姉のように慕うお吟さんと出会い、大好きになっていく。じょごはいつも人のために生きていて一人の女性として尊敬します。」

満島さん「撮影が始まる前に監督が杉浦日向子さんの本を貸してくださって、本の中には閉じ込められた世界の中でも自由奔放に豊かに生きてきた女性がたくさんいて、参考にしました。」

内山さん「結婚していないので、夫を恨んで復讐するために駆込むという心境はあまりわからないのですが、その気合いは現代女性に近いのもあるのではないかと。はっきり物を言いますし、離婚も女性から切り出すほうが多い気がします。演じたそれぞれの駆込み女たちは、今の女性像に近いのでないでしょうか。」

Q.映画を観ると、かなりスピーディでテンポがよい、今までにない時代劇のように感じました。映画をご覧になったとき、驚きや発見はあったでしょうか?

大泉さん「台本がとても厚くて、やってても終わりがない感じがしました。普通はどんどんカットしていくんですけど、原田監督は撮影中に増やしていくんですよね(笑)助監督さんが『4時間の映画になっちゃうよ』と言っていたんですが、完成が2時間23分になってビックリしました。スピーディーさ、テンポのよさ、見てて心地よくまったく長さを感じませんでした。時代劇として観てても現代の映像感覚で、演じる側としては長い台詞も読みやすかったです。若い人にも楽しめる作品になっていると思います。」

戸田さん「テンポはもちろんですが、画も美しいです。時代劇なのに古さを感じさせない観やすく楽しい作品です。」

満島さん「他の人の場面でこんなシーンあったんだとか、いろんなアプローチしてて面白かったです。画がすごくキレイで、何度か観ると魔法がかっている場面がわかると思います。」

原田監督「満島さんが『幕末太陽傳』が好きとおっしゃっていて、川島雄三監督の大傑作なんですが、実に台詞回しが早いんですよ。それを参考にしました。2人の女郎が出ているんですがお歯黒をしていて、それで満島さんにもしてもらったりしましたね。」

内山さん「テンポがよく、シリアスな中にも時代劇って笑えるんだなと思いました。新しい時代劇の形で、映像がすごくキレイです。」

樹木さん「小津安二郎監督作品での原節子さんも非常に早くしゃべってますよね。時代劇といってもその時代の庶民の日常を描いていて、ちょっといやらしいシーンがあるから小学生には見せられないかもしれないけど、勉強になると思いました。見て損はありません。みんな画がきれい、画がきれいって言うけどこれは監督の腕ですからね。それでね、原田監督のすごいところは低予算でもお金をかけたかのように作るんですよ。この作品は私の好きな映画です。(会場から拍手)」

Q.キャッチフレーズは「離婚は幸せの始まり!?」とありますが、この感想は?

樹木さん「私が話すと長くなるから、これは大泉さんに・・・。」

大泉さん「面倒な質問は僕に振りますね!僕は結婚していますが、3歳の娘もいるので、離婚できないですね。離婚すると、お母さんに娘を獲られちゃいますから・・・ (横から樹木さん:「絶対にしないほうがいいと思います!」)僕が今、話してんのに!!」

樹木さん「結局話しますけどね。男女の縁は結ぶのは簡単なんですが切るのは難しいんです。この映画に出てくる3人が行動を起こせたのは、子どもがいなかったからというのも大きいと思います。この3人は自分もうんと傷ついて、自分を犠牲にして駆込むんです。それが現代とはちょっと違うかもしれない。」

MC:最後に原田監督、主演の大泉さんに一言、お願いいたします。

原田監督「いろんなことをこのメンバーで語り合ってもっと伝えたいことがたくさんあります。初めての時代劇ですが、じょごの鉄練りシーン、お吟の粋な深川芸者、信次郎のすばらしい芝居など、信次郎のまばたきパチパチは最初はNGでしたが、どうしても使いたくなってしまったシーンでした。ここにいる全員にそういうシーンがありました。また、このメンバーで撮りたい!この面子で作品を撮り続けられるよう、応援よろしくお願いします。」

大泉さん「江戸時代の女性の離婚は大変で、女性からは離婚できないから、それを救済する縁切り寺があって、いろんな女性の生き様が描かれています。様々な年代の人が楽しめる作品になっていると思います。よろしくお願いいたします。」
映画『駆込み女と駆出し男』は、5月16日(土)全国ロードショー (C)2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会
映画『駆込み女と駆出し男』は、5月16日(土)全国ロードショーです。

配給:松竹
(C)2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会

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