「情熱をぶつけにきました」ヤユヨの
現在と未来を照らした、『赤い愛でス
タンドバイユー!ツアー』ファイナル

『赤い愛でスタンドバイユー!ツアー』2023.11.4(土)東京・WWWX
ヤユヨの全国ツアー『赤い愛でスタンドバイユー!ツアー』が、11月4日(土)の東京・WWWX公演で幕を閉じた。北海道・大阪・愛知・東京でのワンマンと、宮城・広島・福岡・香川でのツーマンで計8本。リコ(Vo.Gt)、ぺっぺ(Gt.Cho)、はな(Ba.Cho)の新体制になってから初めてのツアーで、会場限定CD『SALTY』のリリースを記念したツアーでもあった。
メンバー3人とサポートドラマーの石川ミナ子が登場し、最初に鳴らしたのは「愛をつかまえて」。ぺっぺがキーボードで奏でる旋律をバックにリコが歌い始めるオープニングで聴く人の心を惹きつけると、やがてバンドイン。サウンドが色づいていく中、弾むリズムに誘われて観客が腕を上げる。「東京、よろしくお願いします!」とまずは1曲挨拶代わりに届けると、続いては「YOUTH OF EDGE」から「Yellow wave」へ。「楽しむ準備はできてますでしょうか?」というリコの問いかけに「イェーイ!」と答える観客が頼もしい。
メンバーも、バンド自身のアンサンブルに身を委ね、音の波を楽しむようにして演奏している。ヤユヨの楽曲には曲中にテンポが変化するものも多いが、合わせることを過度に意識するのではなく、今この瞬間ならではの自分たちのバイオリズムを楽しみながら、加速・減速しているように見えた。
WWWXはヤユヨのワンマンライブとしては過去最大規模の会場。とはいえ、メンバーは前7公演の積み重ねがあるからか、リラックスして音楽を楽しめているようだし、リコが「元気いいですね! さすがです」と言っていた通り、オーディエンスのテンションも最初から高い。「4人とも超絶気合が入ってます。一生の思い出に残るようにやっていきますので、一緒に楽しんでいきましょう!」とリコ。
そして「貴方の一番のロックスターになれますように」という言葉から始まったのは「星に願いを」だ。曲の歌詞に引っ掛けたMCがフロアの期待を増幅させ、会場の温度がさらに上がっていく。ぺっぺのギターソロもアグレッシブだ。ここで一旦「POOL」を挟み、会場の空気を変えると、「今日はあなたの笑顔を見に来ました! ツアーファイナルなので、一番の笑顔を見せてください!」と「kimi_no_egao」へ。そして『SALTY』収録の新曲「チョコミンツ」で前半を締め括った。
MCでは、「(ツアー)もう終わりなの?」「早いな。ホンマに8ヶ所まわったんかな」とツアーファイナルを迎えた今の実感を語り合った。「季節が変わって、みんな24歳になって、(リコが)金髪になって、(はなが)メガネ外して、(ぺっぺは)変わらず元気で(笑)」。ここで、ぺっぺがこれからイメチェンするとしたら何がいいか、金髪とコンタクトを超えるには眉毛全剃りぐらいしかない、という話題になり、飾らないやりとりを重ねながら笑い合う3人。そんなMCタイムを経て、リコは観客に「いろいろな人に助けられて、楽しく音楽やれてるの、本当に感謝です。みんなも、受け止めてくれてありがとうございます」と改めて伝えた。
そうして後半に突入。はなの奏でる、ファンのみんなは聴き慣れているであろうベースリフが導くのは「ユー!」。リコがワンコーラス歌ったあと、「せーの!」と言うと、フロアから大音量の「ユー!」が返ってきた。「最高! さすが東京!」とメンバーも観客も笑顔の中、バンドインとともに曲がスタート。観客の声を少しでも近くで聴きたいからか、ギリギリまで前の方に出てきたり、しきりに「〇」とサインを送っていたりと、とにかくメンバーは嬉しそうで、バンドのサウンドもいきいきと弾んでいた。
そこから間髪入れずに「うるさい!」。さらに、ドラムソロから「メアリーちゃん」へ。スピード感溢れる展開に会場のテンションがもっと上がる中、リコがギターを奏でながら語り始める。「隣にいるだけで胸が苦しくなったり、笑顔を見るだけで嬉しくなったり、そんな君の大切な人……友達、家族、恋人、誰でもいいんですけど。あなたが、大切な人と幸せな時間を過ごせますように。心を込めてヤユヨから、冬の歌を贈りたいと思います」。そんな言葉が添えられたのは、二人の日々を愛しく思う気持ちとだからこその切なさ、苦しさを歌ったバラード「君の隣」。リコの心のこもった歌声に、観客は静かに体を揺らしながら聴き入った。
「ここいちばんの恋」では、リコが歌詞を〈とりあえず今日は何して過ごせばいい?/映画館には行かない。/古着屋にも行きたくない。/でもWWWXまでみんなに会いに来ました!〉と歌詞を替え、気づいた観客が「フゥー!」と歓声を上げる。ライブで必ずと言っていいほど演奏されるバンドとファンを繋ぐ曲「さよなら前夜」では、特大のシンガロングが起こる。その声量があまりに大きかったため、「2番もいける?」と観客に尋ねるリコ。みんな歌詞も体に入っているんだろうなと伝わってくるようなシンガロングで、メンバーは「すごい!」と大喜び。はなのベースソロ、ぺっぺのギターソロもばっちりキマッた。
「こんなにでっかい声を聞かせてもらえると思ってなかったです。ホンマにテンション上がった。ありがとう」とまず伝えてから始まった本編ラストのMC。ここではメンバーを代表してリコが、どのような気持ちでツアーに臨んでいたのかを打ち明けた。
「正直、不安もありました。でも、これ以上誰もそばからいなくならないでほしいなって想いもありましたし、(ファンに)悲しい想いをさせたくはないし……。私は、大好きな音楽と、一緒にいてくれる人を守りたい。これからもそばにいたいと思ってもらえるバンドにならなきゃと、情熱をぶつけにきました」
きっとその情熱は音楽を通じて観客に届いていたはずだ。不安でも情熱でも何でも、今自分たちが抱いている感情全てを音楽に変え、楽しんでしまおうというバンドのポジティブなエネルギーは、1曲目から確かに感じられた。だからこそファンも彼女たちを温かく、力強く迎え入れたのだろう。本編ラストは、『SALTY』収録の新曲「Stand By Me」。今回の旅を経て、一段と頼もしくなったバンドサウンドは、ヤユヨの現在、そして未来を照らしているようだった。
この日アンコールで発表されたように、ヤユヨは、2024年2月14日に4thミニアルバム『BREAK』をリリースし、同年4月より、全国10ヶ所をまわるツアー『真面目にぶっ跳べファンキー!ツアー2024』へ出発する。ハイテンションなツアータイトルをジェスチャー付きで教えてくれるリコ&笑顔で見守るぺっぺ、はなの様子を見るに、次のアルバム&ツアーも楽しいものになりそうな予感だ。
取材・文=蜂須賀ちなみ 写真=オフィシャル提供(撮影:ニッタ ダイキ)

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