熊川哲也 Kバレエ・オプト、ヤングケ
アラーを主人公に新たな「シンデレラ
」像を描く 『シンデレラの家』を2
4年春に上演

2024年4月27日(土)~4月29日(月・祝)東京芸術劇場 プレイハウスにて、Orchardシリーズ K-BALLET Opto『シンデレラの家』が上演されることが決定した。
K-BALLET Opto(Kバレエ・オプト)とは、BunkamuraとK-BALLET TOKYOが2022年に立ち上げた新プロジェクト。創立から四半世紀、芸術監督熊川哲也の下で豪華絢爛な古典バレエの全幕作品を生み出してきたKバレエが、現代社会に潜む問題をダンス作品に昇華し世界に発信することを目標に発足した。
そして今回、多くの人々の心の奥に潜む物語「シンデレラ」を、Kバレエ・オプトが日本の現実を生きるヤングケアラーを主人公に新たな物語として再生する。
ジュゼッペ・スポッタ    (c)Nadir Bonazzi
本作の振付・演出は ジュゼッペ・スポッタ。彼は大家マウロ・ビゴンゼッティの弟子で、ヨーロッパで最注目の若き俊英振付家。原案は新しい詩の運動をまきおこし様々な領域で活動する希代の詩人、最果タヒの書き下ろし詩集「シンデレラにはなれない」。
演奏は古い電化製品を「電磁楽器」に蘇らせ演奏する異才の音楽家、和田 永 。衣裳はジェンダーレスブランド・MIKAGE SHINをリードする気鋭デザイナー進 美影。
和田 永
進 美影
メインビジュアルはヒグチユウコ描き下ろしのイラスト。
イラスト:ヒグチユウコ
そして、ダンサーには円熟味を増し繊細な表現力が期待される森 優貴、酒井はなが参加。
最前線で活躍するクリエイターたちの技と閃きが凝縮した新たな「シンデレラ」が誕生する。
『シンデレラの家』あらすじ
愛すればこそ憎む、逃れられない家族の絆。
祖父、母、義妹の世話に明け暮れる少女が見つけた切ない愛の物語。
日本のいろいろな街でシンデレラは生きている。
たとえば、認知症の祖父、こころを患い怒りを制御できない母、そしてその母と新しい男との間にできた義妹の世話に明け暮れる日々のシンデレラがいる。
家族のためだけに生きる彼女は、自分を愛すすべを知らない。「幸せになりたい」と願うことすら贅沢で、どこか家族に後ろめたさを感じてしまう。そんな彼女の頭によぎるのは、祖父も義妹もいなくなった母との安住、全てから解放され自由を手にした姿。
ある日、義妹を寝かしつけるために「シンデレラ」を読んであげていると……そこは舞踏会。亡き父、そして幸福につつまれた家族の姿が楽しげに。が、午前零時の鐘が鳴るや……。

『シンデレラの家』作品解説  高野泰寿
プラスチック汚染を描いた前作「プラスチック」が、The Guardian、SMCPに特集されるなど国際的にもその取り組みが注視されるKバレエ・オプト入魂の最新作が誕生。
第3弾となる本作は、ヤングケアラーの少女を主人公に描く現代の「シンデレラ」。本来大人が担うべき責任である介護や育児を一手に引き受けざるを得ないヤングケアラーという存在は、かつての地域共同体が核家族化により崩壊し、人情の細やかだった下町も、隣にどんな人が住んでいるのかわからない状態になっている現代日本にこそ際立った問題といえる。
そのような状況下で、子どもたちは他者との結びつきを失い社会から孤立し、かえって家族関係は密度が濃すぎる窒息状態に似たものになる。そんな現代日本を生きるヤングケアラーである主人公の等身大の成長と人間愛を描く。
名作「シンデレラ」が下敷きではあるが、ディズニー版のような世にある恋愛の力によってのみ主人公が解放されることは起こらない。かつておとぎ話には、恋の成就以上に大切な「祈りの力(呪力)」が込められていた。シンデレラをはじめとするおとぎ話は、飢饉、領主の圧政、疫病、天災といったギリギリの社会状況で生まれ、大人たちは世の中の大混乱を前に、未来に知恵と希望を託すべく必死に物語った。そうした未来への「祈り」の伝播こそがおとぎ話の役割であった。
翻って、私たちが生きる社会を見渡すと、世界はまさに中世の混迷期さながらの社会変動を目の前にしている。しかも、かつて栄華を誇った日本経済は、バブル期の終焉とともに失われた30年という経済的陥没期に入り、その後、復活の見通しも立たず、相対的に貧しい国になってきた。
「ヤングケアラー」問題は、そんな私たちの状況のなかに生まれてきている。
日本はいま、子ども食堂に見られるように子どもたちがひもじく、食べるものに苦労している時代になりつつある。未来に希望を見いだせなくなってきた日本の社会。我々は、どんな希望を、どんな知恵を未来へと託すのだろうか?今を生きる子どもたちには、そんな我々が編む新しい「シンデレラ」が必要だ。いや、子どもたちだけではなく、我々自身も現代の「シンデレラ」を深く知る必要がありそうだ。
公演によせて 最果タヒ
最果タヒ
幸せになりたい、と願えることはそれだけで恵まれていることだと思います。自分が幸せを願ってもいい存在だと思えることは、それだけである一つの自由を得ていると思う。
当たり前のことに思えるその願いを、まず「願っている」と言えない人がいて。その人が言葉にするのをやめてしまった気持ちを、言葉にしないで置いてきたからこそ、なんの形にもなれずただ揺らめいている海の中の陽の光のようなその感情を、固めないで、決めつけないで、詩の言葉にできれば、と思いました。
ヤングケアラー、と言っても、一人ひとりの「私」「ぼく」がいて、「ヤングケアラーの話」ではなく、無数の「私の話」「ぼくの話」がある。踊ることも、詩も、ひとつの代表としてものを語るのではなくて、ゆらめく無数の「私」と「ぼく」をそのままで表せるものだと私は思います。
だからこそ、届くものがあると信じています。

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