鈴木このみ

鈴木このみ

【鈴木このみ インタビュー】
11年目以降を
考えた作品になったと思っている

現在放送中のTVアニメ『ブルバスター』のエンディングテーマとなっているシングル「頑張れと叫ぶたび」。文字どおり“頑張れ!”という想いを込めた楽曲ではあるものの、自身が手がけた歌詞には闇雲な応援ではなく、冷静な対応が垣間見える。そこにはデビュー11年目の鈴木このみの心境と状況の変化が重なっていたようだ。

出会うべきタイミングに
すごく恵まれてきた

5thアルバム『ULTRA FLASH』(2022年5月発表)以来のインタビューで、少し時間が空いたんですが、この間のトピックとして、このみさんが事務所を設立して代表取締役に就任されたことをネットニュースなどで拝見しておりました。就任から約1年半が経過しようとしております。どうですか、御社の業績は?

なんとか1年ちょいを乗り越えることができました。

社長業はどうですか?

正直に言うと、大きく変わったことはなくて。把握することが増えたというのはもちろんあるんですけど、あくまでもやりたいことは自分の活動をより深めることで、それは変わらないので、意外とそんなに変わらなくて。ただ、脳のキャパが増えたなっていう感じはありますね。

そんな前置きから新曲「頑張れと叫ぶたび」についてなのですが、これは私の感想ですが、アルバム『ULTRA FLASH』とも、前作シングル「Love? Reason why!!」(2022年10月発表)ともちょっと感触が異なっている印象です。まず、このみさん自身がこの新曲をどんなふうにとらえているのかをおうかがいしたいと思います。

私の中では、11年目以降を考えた作品になったと思っています。10周年まででやるべきことをやらせていただいた感覚があって、“さぁ、11年目以降をどうしよう?”っていうことをすごく考えた末に出てきた作品っていうか。

やっぱり10周年というのは大きな区切りだったという感じですか?

心のどこかで“いや、これは通過点だから”って思うようにしていたんですけど、実際に迎えてみて、みなさんが私の予想を超えて、自分のことのように喜んでくれているのを目の当たりにすると、やっぱり“10周年ってすごいことなんだな”っていうのを改めて感じたので、終わり際に若干燃え尽き症候群になったというか(笑)、“ここから次が長いぞ”という感覚になって。その時にTVアニメ『ブルバスター』のエンディングテーマのお話をいただきました。

「頑張れと叫ぶたび」はTVアニメのエンディングテーマだからこそ、こういう内容になったのかなとも想像していたんですが、その辺のバランスは実際のところどんな感じだったのでしょうか?

最初にシナリオをいただいたんですけど、アニメなのに実写っぽい物語というか、ロボットとかが出てくるところはすごくアニメらしいんですけど、意外とその中身は現実のやるせないところだったり、頑張ってもどうしようもできないことに立ち向かっていく大人のおじさんたちみたいなところがあったり(笑)。なので、勝手に自分が重なっていた感覚があって。それこそ社長になって、今まで知らなかった社会の動きを知ったり、“みんな、こういう中で生きてるんだ!?”っていう今まで生きてきた自分の軸とは少し違うところを味わったりして、そういうのを体験したことで自然と重ねた部分はあるんでしょうね。

社長就任と合わせたかのように、今回のタイアップのお話が来たわけですね?

本当に運命的なタイミングで。それこそ、この作品の内容やテーマと“もうすぐデビュー11年目が来るぞ”っていうところ、社長に就任してしばらく経っていろんなことがちょっと見え始めた時という、その3つがうまく重なったタイミングで。

この「頑張れと叫ぶたび」の内容は、もちろん前向きさはあるんですけど、あっけらかんとした前向きさではなくて、酸いも甘いも噛み分けた末で前向きにやっていこうというのをすごく感じるんです。“現実の中でどう前を向いていこうか?”みたいな。

まだ肌寒い時に作詞したので記憶を辿らないといけないと思って、制作ノートみたいなものをつけていたのを思い出したので、今日読んできたんですけど…なんか発熱していました(笑)。“当てはまりすぎてしんどい”みたいなことを書いていましたね。

資料にあるTVアニメ『ブルバスター』の説明文には“常に経済的な問題がつきまとう…。ロボットの燃料費、パイロットの人件費、もちろん弾一発の無駄さえ許されない”とありますね。ロボットアニメというよりはビジネスもののような内容ですけど、そういうところが重なったというか、自身の置かれている状況も考えざるを得なくなったところがあるのでしょうか?

“何のために働いているんだろう?”みたいなところも、自分はシナリオを読んでいて感じたんです。自分が会社をやることで今までより少し現実を見るようになったけど、アーティストって理想を追う生き物なので、“どうしたもんかな?”っていうのをちょっと考えていたんですよね。だから、シナリオを読んでいて共感したし、“理想のために現実を精いっぱい生きていくんだな”っていうことをすごく感じて。なので、いろいろと考えつつもポジティブの内容になっているのは、『ブルバスター』のシナリオを読んでそういう気持ちになった気がしますね。

そういうふうに考えるといい出会いだったんですね。

今までもそうなんですけど、出会うべきタイミングと、逆にさよならするタイミングにもすごく恵まれてきたと思います。しかも、今回はそこで“作詞してみない?”と言っていただけて。そう言ってくれた人はどういう気持ちで言ってくれたのか、狙っていたのかどうかは分からないし、たまたまだったのかもしれないけど、託してもらえたことはすごく嬉しかったですね。

なるほど。“この作品なら今の鈴木このみの気持ちを反映させた、いい歌詞が書けるかもしれない”と促された可能性もあったのかもしれないということですね。個人的にこれまでの作品と感触が異なったところは、歌詞もさることながら、イントロの♪Wowow〜のところなんですよ。全楽曲を粒さに調べたわけではないですけど、こういうタイプって過去にまったくなかったわけではないでしょうけど、それほど多くはないですよね?

確かに。こういう分かりやすいアンセムみたいなところよりは、歌声の強さで引っ張っていくみたいなものが多かった気がするので、そういう意味では新鮮な始まり方になってるかもしれないですね。

“雄々しい”って今使っちゃいけない言葉なのかもしれないですけど、力強さがあるんですよね、本能的な。

嬉しいー! 今回アニメの制作サイドからも“明確に“頑張れ!”って応援してる側の人の歌にしてほしい”っていうことは言われていて。“頑張っている張本人ではなく、あくまでも“頑張れ!”って言いたくなる側の気持ちなんだ、キャラクターを応援してほしいんだ”っていうことを言っていただいていたというのもあるんですけど、自分の楽曲制作チームの中で“そういうアンセムとかあったらいいかもしれないね”みたいな話に辿り着きました。

サッカーのサポーターのような感じというか。

確かに! ちょっとスタジアムモードの雰囲気かもしれないですね。

ですから、今後ライヴで披露されれば当然シンガロング、コール&レスポンスが期待できると思うんですけど、これまでとは違う会場の雰囲気になることは想像できますよね。

そうですよね。野外ライヴとかで歌ったらめっちゃ気持ちいいかもしれないですね。
鈴木このみ
シングル「頑張れと叫ぶたび」

OKMusic編集部

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