9月21日(木)@東京・恵比寿ガーデンホール photo by 岩澤高雄

9月21日(木)@東京・恵比寿ガーデンホール photo by  岩澤高雄

Chara、
デビュー32周年記念日に開催した
ツアーアンコール公演に
サプライズで小林武史が登場

Charaがデビュー32周年の記念日である9月21日(木)に東京・恵比寿ガーデンホールにて、ワンマンライブ『Chara Simple City Tour+ 2023 “Heaven”』を開催した。

今年6月から7月にかけて、小編成でライブハウスを廻る全国ツアー『Chara Simple City Tour 2023』を行なったChara。コロナ禍を経て、実に4年ぶりとなる全国ツアーで8都市9公演を回る中で、ライブに足を運んだ観客から再演を望む声が多く寄せられ、急遽、アンコール公演の開催が決定。「Chara Simple City Tour+ 2023 “Heaven”」とタイトルに冠したように、1991年にCharaが1stシングル「Heaven」デビューした日に行なわれることになり、会場には世代を超えたさまざまな年齢のファンが全国から集結し、32年たった現在もなお、似ているアーティストが一人も現れていない、唯一無二の存在であるCharaのデビュー記念日をお祝いした。

オープニングBGMとしてフランキー・ヴァリ「Can't Take My Eyes Off You(邦題:君の瞳に恋してる)」が流れると、フロアから早くもクラップが沸き起こる中、オオニシユウスケ(BM、Gt)、皆川真人(Key)、竹本健一(Cho、Per)、オリヴィア(Cho)からなるバンドメンバーがカラフルな衣装に身を包んで登場。続いて、ピアノの調べに導かれるようにCharaが裸足で姿を現し、ステージ中央に置かれたラタンチェアに座り、Charaと竹本が共作した「面影」を静かに、語りかけるように歌い始めた。Chara、竹本、オリヴィアの3声で繰り返される<愛は永遠に>というフレーズによって、フロアには切なくも優しい、温かくリラックスしたムードが広がっていく。Charaがアコギを弾き、竹本がフロアタムとタンバリンで力強いビートを繰り出した「やさしい気持ち」では、Charaの「Charaを愛してよ!」という呼びかけによって盛大なクラップとコール&レスポンスが沸き起こり、2曲目にして早くも観客全員による大合唱となり、会場が一つとなった。

アコギからエレキに持ち替えたCharaは、自身のデビュー記念日である9月21日が「世界平和デー」であることに触れて、「いつでもピースがいいよね」と笑顔で語りかけた。そして、デビューイヤーにリリースした1stアルバムのタイトル曲となったシンセポップ「Sweet」では、 <いろいろあったよ>というフレーズに万感の思いを込めながらも、キャンディーのようにチャーミングでキュートな歌声で観客を惹きつけると、オオニシがアコギのボディを叩いてビートを刻んだ「しましまのバンビ」では一転して、ソウルフルなヴォーカルとエモーショナルなシャウトで場の空気を圧倒。間奏で「ライブって、すごく愛の波動をもらってるんだね」と実感を込めて語っていた彼女は、歌い終わった瞬間に感極まったように「うれしい!」と叫ぶと、客席からは、自由奔放でダイナミックな歌声の発露に大きな拍手と歓声が上がった。

キーボードを弾きながら、時に甘く囁くように、時に激しく叫ぶように歌った「タイムマシーン」でも彼女のスペルのような響きを湛えた歌声と観客の大合唱が重なり、「ミルク」では、観客一人一人が口ずさみながらゆったりと体を揺らした。「やさしい気持ち」「しましまのバンビ」「タイムマシーン」「ミルク」は1997年にリリースされ、ミリオンセールスを記録した不朽の愛のアルバム『Junior Sweet』の収録曲。改めて、誰もが口ずさめる名曲が揃っていることを再確認していると、Charaは着替えのためにステージを下り、「hug」は竹本とオリヴィアがデュエットで歌唱。そして、1993年に岩井俊二監督のドラマ『FRIED DRAGON FISH』のエンディング曲として起用された「Break These Chain」でステージに戻ると、「今、歌った曲は浅野忠信さんが主演のドラマの主題歌で使われたやつだよ」と解説し、「すーちゃん(長女のSUMIRE)、今日、こっそり来てるはず」と明かした。

さらに、「珍しい、懐かしい曲を歌わせていただきます。すーちゃん、ごめん。これはパパとの恋の歌ではないわ。ママが独身の頃の歌だね」と笑わせ、1993年発売の3rdアルバム『Violet Blue』収録のグルーヴィーなファンクナンバー「無人島に私をもって行って」では、賑やかなコーラスが差し込まれ、爽やかなアコギの音色でサマーブリーズ感も上昇し、<baby,yeah>の締めを気に入ったCharaが5回も繰り返すというシーンもあった。「恋の調子はどうですか?」という問いかけから始まった「あたしなんで抱きしめたいんだろう?」では、Charaはフロアタムやシンバルを叩くだけでなく、鉄琴も演奏。2001年にYUKIらと組んだガールズバンドにはドラマーとして参加していたのだ。キーボードからギター、パーカッション、そして、ヴォーカルと様々な楽器で音を鳴らし、バンドメンバーやライブスタッフ、観客とコミュニケーションをとっていく姿にライブならでわの醍醐味を感じた。さらに、彼女が歌う<いつまでたっても>に対して、観客が<認めない>と返すコール&レスポンスで盛り上がり、’80年代のニュー・ウェーブを想起させる「DUCA」ではステージを躍動しながらパフォーマンスし、観客のテンションを引き上げた。

全力でのパフォーマンスに息を切らしながら「長いこと歌わせてもらってます。とても幸せを感じてます」と感謝の気持ちを伝えたCharaは、自分と同じく音楽家として活動している23歳になった息子のHIMIを宿した頃のことを振り返りながら「息子がお腹にいる時、HIMIが生まれる前に不安なった頃に作った曲があって。自分の大切なものに“気づく”と“築き上げる”のダブルミーニングになってる、息子のために作った曲」と語り、「大切をきずくもの」では歌の言葉1つ1つを観客に胸に丁寧に届けた。続けて、「すーちゃんのために作った曲だから、すーちゃんのために歌う」と紹介した新曲「ohhh!」では、観客に対しても<感じるままに生きてほしい>という願いとメッセージを送り、どんなときでもそばにいて寄り添い続けるという大きな愛で会場全体を包み込んでみせた。

ここで、音楽プロデューサーでYEN TOWN BANDのメンバーでもある小林武史が花束を持って登場。Charaにも秘密にしていた正真正銘のサプライズゲストで、Charaは驚きながらもハグを交わすと、小林は「32周年おめでとうございます」とお祝いの言葉を述べ、「昨日、デビュー曲『Heaven』のMVを見てきたけど、今、あんなに才能の塊のような人はなかなかいないですよね。32年間、こうやってやれていることもすごいし」と賛辞を送ると、Charaは「褒められた……マジで泣きそうなくらい嬉しいです。厳しい方なので」と顔をほころばせた。そして、1996年に公開された岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』の主題歌として大ヒットした「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」を小林がキーボーディストとして加わったバンドで披露。Charaのライブでは初めて演奏するという小林は「新人プレイヤーのつもりで弾きます」と意気込み、Charaは想定外の事態に歌詞を間違えてしまう場面もあったが、観客は貴重なコラボレーションを一瞬も見逃すまいと集中するなかで、ノスタルジックながらもクールな音色と甘く切ない歌声が美しく響き渡り、会場からはこの日、いちばんの大きい拍手が送られた。また、二人のMCでも触れていたが、10月21日に千葉県のKURKKU FIELDS(クルック・フィールズ)で行われる「円都LIVE」にYEN TOWN BANDの参加が決定している。

小林を見送ったCharaは、「あ〜楽しかった。サプライズありがとうございます。せっかく来てくれたのに歌詞を間違えちゃったけど、スペシャルな人をみんなと過ごせて楽しかったです。これからもマイペースで続けていくので、まぁまぁついてきてください」と未来に対する思いを口にし、ラストナンバー「A・O・U」へ。Charaはマイクを外してフェイクやシャウト、ハイトーンやファルセットと多彩な声色を響かせながら、 “今、この瞬間”のエモーションを観客の胸に刻んでいく。やがて、竹本の導きによる<We Love Chara>という観客からのコールを全身で受け取ったCharaは、「完全にみんなの愛を身籠ったわ」と幸せそうな笑顔を浮かべ、観客が高く掲げた手を左右に振るなか、軽く会釈をして、「あら、まぁ!?」というようなコケティッシュで悪戯っぽい表情を浮かべ、走ってステージを後にした。

鳴り止まないアンコールの拍手に応えて再びステージに上がったCharaが大名盤のタイトル曲「Junior Sweet」を歌い始めると、観客はステージに向かって手を掲げ、当然のようにフロア全体にシンガロングが広がっていく。<愛を浴びて>というフレーズのコール&レスポンスを繰り返すことで、まるでゴスペル教会のような神々しさと祝福に会場全体が包まれた。さらに、「デビュー曲、歌っちゃうぜ!」と茶目っ気たっぷりに声を上げ、32年前の曲ながらもトレンドが1周して最新のブギーファンクにも聴こえる「Heaven」でフロアをディスコに変貌。それぞれが自由に感じるままに歌い、踊り、クラップを打ち鳴らし、音楽の楽しさと開放感に包まれる中で、最後はEND SEとして「It’s a small world」の日本語バージョンが流れた。Charaとバンドメンバーは<世界は1つ>という音楽に導かれるように人形となって袖にはけていき、Charaの32年間の道のりを辿った音楽の旅は大団円を迎えた。この日で33年目へと突入したが、アニバーサリーライブをフィジカルとしては最新となる昨年11月にリリースしたシングルのカップリング「面影」ではじめ、表題曲「A・O・U」で本編を締めくくった彼女の次なる新曲が楽しみでならない。

photo by 岩澤高雄
text by 永堀アツオ

【セットリスト】
01 面影
02 やさしい気持ち
03 Sweet
04しましまのバンビ
05 タイムマシーン
06 ミルク
07 hug
08 Break These Chain
09 無人島に私をもって行って
10 あたしなんで抱きしめたいんだろう?
11 DUCA
12 大切をきずくもの
13 ohhh!
14 Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜
15 A・O・U
<ENCORE>
En.01 Junior Sweet
En.02 Heaven

【ライブ情報】

『一夜限りのスペシャルライブ「円都LIVE」』
10月21日(土) KURKKU FIELDS
開場:10:00(LIVEエリアは16:00) 開演:17:00(終演19:30予定)
出演:YEN TOWN BAND(Vocal:Chara、Chorus:カマタミズキ)、Lily ChouChou(Vocal:Salyu)、Kyrie(Vocal:アイナ・ジ・エンド)
<チケット>
9/23(土)10:00〜、チケット一般発売中
ローチケ https://l-tike.com/entolive/
チケットぴあ https://w.pia.jp/t/entolive-c/
e+ https://eplus.jp/entolive/

9月21日(木)@東京・恵比寿ガーデンホール photo by  岩澤高雄
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OKMusic編集部

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