いま、クラシックがおもしろい! 亀
田誠治×角野隼斗が語る、『スタクラ
フェス2023 ONLINE』特別ステージ『
STAND UP ! NEW WAVE』~未来へ託し
たい想いとは

2023年8月26日(土)・27日(日)『SAISON CARD presents STAND UP! CLASSIC FESTIVAL’ 23 ONLINE』(通称:スタクラフェス)が開催される。当初は4年ぶりに横浜赤レンガ倉庫特設会場にて実施される予定が、配信ライブへと開催形態を変更。1日目は漫画『のだめカンタービレ』をテーマとした “のだめカンタービレCLASSIC” DAY、2日目は新進気鋭の若手アーティストを一同に集めた “For the future” DAYとして、角野隼斗、亀井聖矢、石井琢磨らが参加する。
2日間のフィナーレを飾るのが、音楽プロデューサー亀田誠治が、角野隼斗と挾間美帆を巡り合わせておくる特別プログラム「STAND UP ! NEW WAVE ~Produced by 亀田誠治 角野隼斗✕挾間美帆 Play with the BIG BAND」。クラシックの名曲ラヴェルの「ピアノコンチェルト」を、挾間がJAZZアレンジでBig Band編成に仕立て、角野隼斗がピアノで共演する。この度、亀田誠治と角野隼斗の対談が実現。二人の出会いからスタクラフェスへの期待、音楽への想いまでたっぷりと語ってもらった。
◆出会いは2年前。「ああ、本物だ!(角野)」「志に感動した(亀田)」
角野:亀田さんに初めてお会いしたのは、2年前、僕がミュージックステーションに初出演したときのことです。亀田さんは東京事変としてスタジオにいらしていて、楽屋の前でご挨拶させていただきました。
亀田:「角野と申します」ってすごくフレッシュに挨拶してくださって。
角野:子供の頃からずっと見ていましたから、僕からしたら、「ああ、本物だ!」という感じでしたよ(笑)。
亀田:僕はそこから角野さんの存在をすごく意識するようになりました。当時、まだコロナの影響でエンターテイメント業界も動きが止まっていましたから、かてぃんさんとしてYouTubeでいろいろな発信をしている動画も観て、心からすごいなと思いました。開成から東大という経歴も話題になっていたけれど、僕はなにより、音楽の楽しさをこんなにも届けようとしている若者がいるということに感動しました。メディアでされているお話もすごく素敵でしたし。そこから角野さんのコンサートに通うようになりました(笑)。あのときLINEを交換しておいたのがよかったよね。
角野:新聞の記事を読んでLINEをくださったことをすごく覚えています。
亀田:そう、音楽に触れるきっかけづくりを大切にしていることが伝わってきて、とても共感したのです。そもそも、クラシックのピアニストとしてショパンコンクールに出て、YouTubeもやってバンド活動もしているという縦横無尽な活動ぶりに驚きました。自分がこれまでの人生でやろうとしてきたいろいろなことを、角野さんは20代前半にしてすでに手に入れているんですから。
まずは去年、僕が実行委員長をしている日比谷音楽祭のステージにお誘いしました。そういう機会を重ねるうち、音楽的なスキルはもちろん、遠くまで見渡せる視野の広さに、ここに委ねたい!という気持ちが増していったのです。
角野:日比谷音楽祭では、本当にいい経験をさせていただきました。前後にKREVAさんやドリカムさんが出てくるなか、僕がクラシックのピアノを弾いてお客さんに受け入れてもらえるのだろうかと、始まる前はすごく不安でしたけれど。
亀田:結果的にはみんな釘付けで、演奏の間、息を止めていたんじゃないかという雰囲気でしたよ!
角野:その夏フジロックに出演したときには、あのときの経験がすごく生かされました。
亀田:そういう言葉を聞くと、僕、本当に嬉しいんです。
>(NEXT)スタクラのステージは “未来を委ねたい” 二人に
◆スタクラのステージは “未来を委ねたい” 二人に(亀田)
亀田:今回、イープラスの橋本会長から、“亀田さんに委ねるからスタクラで何か新しいことをやってほしい”といわれて、これは僕が未来を委ねたい角野さんに出てもらうしかない!と。ちょうど同じ頃、挾間美帆さんとも知り合い、彼女も自分で切り拓く方ですから、その姿勢に感銘を受けていました。お二人の活動を見るうち、挟間さんと角野さんが一緒になったら、ちょっと今までの“お品書き”にないものが生まれるのではないかと思いついたのです。
角野:お話をいただいて、本当に嬉しかったですね。挾間さんとは去年11月、BBCプロムス・ジャパンの日本人作曲家の作品を集めた公演で、彼女のピアノ協奏曲の1楽章を演奏したとき初めてお会いしました。その後もニューヨークで飲みに行く機会はあって、いつか一緒に何かできたらいいなと思っていたんです。
亀田:そうしたら僕から話が飛んできたと。心を開いて常に新しいことを考えているお二人がステージに集ったら、すごい化学反応と新しいことが起きるに違いないと思って、「STAND UP ! NEW WAVE(スタンドアップ・ニューウェーブ)」というタイトルをつけました。僕はプロデューサーとはいえ、普段は何かしらの形でステージに立つのですが、今回はその必要はないと感じています。実はこういうことは初めてなんです。
オンラインでしたミーティングも、初回から一気に話が進みましたよね。
角野:あれはいいミーティングでしたね、具体的にやってみたい曲もそれぞれからすぐに出てきて。僕はカプースチンのトッカータOp.8がやりたいと提案しました。実はこの曲、動画はあるけれど楽譜がないので、耳コピをしなくてはいけなさそうで……。
亀田:あれを耳コピするの!?
角野:はい、ちょっと大変なんですけれど(笑)。それから挟間さんはラヴェルのピアノ協奏曲をビックバンド版で書いてみたい、ただスケジュールが厳しいとおっしゃって。
亀田:そう、僕は仲人としてこの話が“破談”になったら困ると思って、みんなでサポートしますから大丈夫!と画面に向かって必死に説得して(笑)。ただあのとき、二人が“ラヴェルのピアコン”って言っていたんですよ。最初、ピアコンてなんだろう?と思ったんだけど、ピアノコンチェルトのことだと気づいたときに、うわぁ、これが子供の頃からクラシックの音楽教育を受けてきた人たちの文化なのかって、ちょっとジェラシーを感じましたね(笑)。
角野:そこですか(笑)。
亀田:演奏されるのはビックバンドアレンジだけれど、ちゃんと元の作品を知っておこうと、あれから“ラヴェルのピアコン”のスコアも買いましたから! 僕、挟間さんがこの曲を挙げた瞬間、角野さんがバァッとピアノを弾いている画が見えたんです。疾走感があって本当に素敵な曲ですよね。2楽章はとにかく美しいし、終盤はまるでウエストサイドストーリーのようなミュージカル風の雰囲気がある。
角野:ジャズの影響をかなり受けている作品なので、実際そういう雰囲気になると思います。それにしてもあの曲をビッグバンドのアレンジにしようだなんて、普通に生きていたら思わないですよ。そのあたりはさすが挟間さんで、ものすごくおもしろい(笑)。
この前ニューヨークで一緒にピアノを弾きながら打ち合わせをしたのですが、1楽章のこのあたりはビッグバンドを全面に出してスウィングさせていこうとか、3楽章もかなり自由にやってみようという話をしていて。一方の2楽章については、あれはもう変えられないよねという話になったので、だいぶ原曲に近い形になると思います。
>(NEXT)世代は違えど方向は同じ。クラシックがおもしろくなってきた!
◆世代は違えど方向は同じ。クラシックがおもしろくなってきた!
亀田:クラシックでは、楽譜が憲法のように遵守されるべきものなのだろうけれど、挟間さんも角野さんも、そこに切り込んでいくミュージシャンです。すばらしい作品には、作曲家の意図を解釈した名演がたくさんあって、それを通じて奏者たちが見た景色が伝わってくる。これがクラシックの醍醐味で、やはりロックやポップスとは違うところがあります。ただ共通しているのは、そこに伝えたいメッセージがあり、作った人の感情やバックグラウンドが反映されているところ。その“音楽世界地図”は、どんなジャンルもボーダーレスに交わっているのではないかと思います。
昔はオーケストラ奏者には職人的なイメージがあって、僕たちの活動からは遠いところにいたけれど、スタクラに出演しているような最近の音楽家は幅広い場で活躍していますよね。若い世代は横の交流が広いから、おかげでクラシックがおもしろくなっていると感じます。
角野:それは亀田さんのようなJ-POP業界のトップの方が、クラシックに興味を持ってくださるからですよ。聴き手にも、そこで触れたことをきっかけにクラシックに入ってくる人が確実にいます。僕たちにとってはすごくありがたいことです。
亀田:そう言ってもらえると、嬉しいですね! 例えば今回の「STAND UP ! NEW WAVE」をやることで角野さんと挟間さんの次のアクションにつながったら、それも嬉しい。自分が持っているものを若い人に全て託したいとすごく思っているので。でもそれ、角野さんにもある感覚ではないですか?
角野:そうですね、僕も、子供のためのプロジェクトのようなものは、けっこうやりたいほうです。
亀田:世代は違いますが、そういう点で見ている方向が一緒だと思うんです。本当に、出会えてよかった。コンサート当日が本当に楽しみです!
取材・文=高坂はる香 撮影=池上夢貢

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