シベリア少女鉄道 vol.36『当然の結
末』開幕直前インタビュー ~ 塚本直
毅(ラブレターズ)×齋藤有紗(ラフ
×ラフ)×土屋亮一(作・演出)

コント・ドラマ・アニメの脚本や、外部舞台演出・作詞・MV監督など多方面で活躍する土屋亮一が1999年より率いてきた劇団、シベリア少女鉄道。このほど、36作目となる『当然の結末』を、2023年6月17日(土)~25日(日)六本木・俳優座劇場にて上演する。絶対に予想できないストーリー展開で観客を混乱と爆笑の渦に引きずり込んできた同劇団は、今回ラブレターズ(お笑いコンビ)の塚本直毅と、ラフ✕ラフ(佐久間宣行が総合プロデュースを務める9人組女性アイドルグループ)の齋藤有紗を客演に迎える。シベリア少女鉄道がお笑い芸人を起用するのは意外や意外、今回が初めて。また、アイドルの齋藤はこれが初舞台。そんな二人に本作へかける意気込みを、そして作・演出の土屋にキャスティングの理由や演出家の苦悩(?)を、本番を間近に控えた稽古場で聞いた。

◼️所属事務所が大騒ぎ
──土屋さん。今回、客演のお二人をキャスティングした理由は? まずラブレターズ塚本直毅さんについて。
土屋 塚本さんに初めてお会いしたのは、『ウレロ☆未確認少女』(テレビ東京)という、芸人さんに出てもらうシチュエーション・コント番組でした。僕は脚本で参加していたんですが、当時はテレビの仕事を始めたばかりのペーペーで。だけど、そんな僕なんかにも塚本さんがしっかりと挨拶してくださったんです。その時の印象が鮮烈に残っています。
塚本 挨拶、大事ですね。
土屋 あ、そう言っちゃうとなんか申し訳ないんですけど。
塚本 いやいや、覚えてくださっていて、めちゃくちゃうれしいです! 僕も覚えてます、その時のこと。「ああ、あの方が脚本家さんか」と思って挨拶に行ったら、すごく謙虚に対応してくださって。こちらこそ、僕なんかにそんな、って思いました。
土屋 虎の穴みたいなところで揉まれ続けていたので……。
塚本 そんな状況だったんですね。
土屋 その後『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』(テレビ東京)にも出ていただいて。あとはよく出演してもらっている小関(えりか)さんとも親交があるということで、いつか塚本さんに公演に出ていただけたらいいなと思っていたのが、今回ようやく実現しました。
──次に、ラフ✕ラフ齋藤有紗さんについては?
土屋 齋藤さんはテレビ東京の『青春高校3年C組』という番組に出演されていて、僕もドラマやコントの脚本で関わっていました。その番組が終了した後に、担当プロデューサーだった佐久間宣行さんが、ラフ✕ラフという新しいアイドルグループを作ることになって。齋藤さんがそのグループのリーダーに就くと、すごく活き活きしてるなと思いまして。フリップ芸なんかも披露されてたじゃないですか。
齋藤 あっ、見てくださってありがとうございます(笑)。
土屋 そういう姿を見て、佐久間さんに「ちょっと齋藤さんをお借りできないですか?」とお願いしました。
──今回のオファーを受けた時、齋藤さんはどう思いましたか?
齋藤 『青春高校』から関わりのある土屋さんの舞台に出られるのがすごくうれしいなって。土屋さんの作られるものは本当におもしろいので、とにかく楽しみだなって思いました。
──ラフ✕ラフの他のメンバーや佐久間さんからは何か反応はありましたか?
齋藤 メンバーは「楽しみにしてる」と言ってくれたし、全員観に来てくれます。佐久間さんもTwitterで「楽しみだなー!」と書いてくださってました。だから頑張りたいです。
──塚本さんはオファーに対してどう思いましたか?
塚本 何度かシベリア少女鉄道さんの舞台を観させてもらっていたので、ちゃんとできるかなっていう不安はありつつ……。
──どんな部分に不安を感じますか?
塚本 お話全体の中に大きな笑いを作るシステムが含まれていて、そこに向けてミスなく繋いでいかないといけないですよね。でも芸人なんでついダラダラしてしまうフシがあって、ヤバいなと思うので、そこは気を引き締めようと。
──ダラダラしてしまう?
塚本 普段やっているコントだと大体4〜5分なので、多少ミスってもどうにか乗り越えられるのですが、90分くらいある長い一本のお芝居だとそうは行かないんじゃないかって。自分がボタンを掛け違えてしまうと、他の方にも影響が出てしまいます。そんなところに不安があります。
土屋 まあ、90分もあれば、誰かはミスしますから。
塚本 ああ、ありがとうございます。あと今回、出演者の一番上に僕の名前をクレジットしていただいていて、それが所属事務所(ASH&Dコーポレーション)内でも大騒ぎになりまして。「塚本さん、こんなことは二度とないかもしれませんよ!」と言われました。相方(溜口佑太朗)からも「頑張ってこい」と送り出され、もう事務所総出で頑張らないと、って。
土屋 いやいや、うちは場末の劇団ですからそんな……。

◼️やさしい人しかいない稽古場
──齋藤さんにとって初めての舞台出演ですが、稽古をしてみていかがですか?
齋藤 最初はどんな感じなのか全然わからなかったのですが、いざ始まって見たら土屋さんも出演者のみなさんも、みんなとてもやさしくて。色々なことを一から教えてくれます。
土屋 他では二度と使わないようなスキルを教えています。
齋藤 そんな(笑)。でも、自分の新しい一面が作られてるような気がします。
──それはどんな一面ですか?
齋藤 高いテンションが身につきました。
土屋 普段はおとなしいですもんね。
──塚本さんはシベリア少女鉄道の稽古を体験してみていかがですか?
塚本 齋藤さんのおっしゃる通り、本当にみなさんやさしいんですよ。土屋さんの周りにはいい人が多いんだと思います。
土屋 いい人ばかり集めてます。
塚本 それこそ今回の出演者の勢登健雄さんはもともと芸人さんで、ツィンテルってコンビで活動されていたんですよ。その時にさんざんお世話になっていて、もうやさしい印象しかない方なんです。だからこの座組にいるのも納得というか。
土屋 怖い人は絶対嫌なんです……。
──強く、そう思われるんですね。
土屋 稽古場って、そもそも居心地が悪いんですよ。みんなこっちを見てるじゃないですか。
塚本 そりゃ見ますよね(笑)。
土屋 みんなこっちを見て、指示を待ってる。それが辛くて。僕だってこっちを見てる側の一人でいたいのに。ただでさえそう思っているから、ましてやこっちを見る人が怖かったら、もう無理。なので、いい人を集めてます。
──そういう理由なんですね。
土屋 でも演出家はもっと図太い人の方がやりやすい職業じゃないかと思います。あと、学校の先生ってすごく大変な職業だろうなとも思ったりしました。
──と言うのは?
土屋 演劇の場合は「出ていただけませんか?」とお声がけして、それに応えてくれた方たちが集まっているわけですよね。だけど学校なんて本人の意思関係なく勝手に集められて、そんなの先生にとってみたら全員敵みたいなもんじゃないですか。
──敵!
土屋 みんな「お前の授業なんて受けたくない」って顔でこっちを見ているわけで。それはちょっと耐えられないなと思いました。
塚本 なんで学校の先生と照らし合わせたんですか(笑)。でも、そう言いながら36回も公演を続けていて、それは本当にすごいことですよね。
土屋 36回もやってて、何言ってるんだろうって……。
塚本 その思いを投影した教師ものの作品をどこかで作ってほしいです。
土屋 ああ、教師目線の。
■日差し浴びてる感じで
──そんな土屋さんの演出方法で、何か印象的だったことはありますか?
塚本 ある出演者の方に「今の台詞、もうちょっと日差し浴びてる感じで言ってみて」ってアドバイスしていたのがすごく印象的でした。「そういう演出の仕方があるんだ!」って思ったし、実際その通りにやったらしっくり来ていて。
土屋 でもその後調子に乗って、「あ、そこも日差しで」って。
塚本 (笑)。僕も今度相方に言ってみようと思います。
──齋藤さんは「稽古中に笑いを堪えるのが大変でした」とツイートされていましたが、克服できそうですか?
齋藤 いや、本当にみなさんおもしろくて……。なんとか耐えなきゃって思ってます。
塚本 数日前からマスクを外して稽古してるんですけど、僕と向き合う場面で齋藤さんが笑い出しちゃって。
齋藤 なんか、耐えられなくて……。早く塚本さんの顔に慣れたいです。
塚本 慣れてください(笑)。
土屋 そうは言いつつ、「齋藤さん、ガンガン(笑いを)取りに来るな」って塚本さんと昨日喫煙所で話していました。
齋藤 いやいや!
土屋 笑いが好きなんだなって伝わってきます。
塚本 フォワードです。
齋藤 違います!
──最後に、本番に向けた意気込みをお願いします。
齋藤 初めての舞台がこの作品で本当に良かったなと思いながら稽古をしています。佐久間さんもきっと来てくださるので、笑ってもらえるように頑張りたいです!
──フォワードとして素晴らしい意気込みですね。
土屋 ゴール前ピッタリで。
──塚本さんはいかがですか?
塚本 お話が本当に緻密に作られているので、一度観た人も二度三度と楽しめると思います。あと個人的には、誰のどの台詞で「日差し浴びてる感じで」と指示されたか探してほしいですね。
土屋 意外とみんな、わかるかもしれないです。
取材・文=碇雪恵   写真撮影=福岡諒祠

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