『BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be th
ere』 セトリやライブ運びから見えた
バンプの"いま"
という事実が、これまでBUMP OF CHICKEN が行ってきたツアーと、この『BUMP OF CHICKEN TOUR 2023 be there』との、大きな違いだった。正確に言うと、このアリーナツアーの直前に回ったライブハウスツアー『BUMP OF CHICKEN TOUR 2022 Silver Jubilee』も、同じくだったので、つまり、今シーズンのBUMP OF CHICKENはそうだった、ということだ。
しかし、バンプのこのツアーは、本編17曲のうち8曲が「この2曲のうちのどっちか」仕様になっていた。その上、アンコールは毎回違う曲である。アンコールでやる曲の候補が8曲くらいあって、その中から2曲、日によっては3曲、選んでいた、と推測される。
さらに。ツアーの途中までは13曲目に演奏されていた「スノースマイル」が、4月1日の長野ビッグハット1日目以降、同日に配信リリースされたばかりの「窓の中から」に変更となった。なお、「スノースマイル」は、5月2日の広島サンプラザホール1日目や、5月27日のさいたまスーパーアリーナ1日目のアンコールでも演奏された。
そのことに影響を受けるスタッフの数を考えてみると、わかりやすい。たとえば、街のライブハウスを回る規模のバンドなら、ローディーとPAと照明の3人が、それに対応すれば済む。しかし、バンプのこのツアーの場合、その変更に関わる人数は、何十人、いや、何百人……と考えると、その大変さを理解していただけると思う。
本人たちは置いておいても……いや、置いておけないか。大変か、やっぱり。というのはこの日、5曲目の「透明飛行船」を始めたと思ったらすぐ演奏がストップし、藤原基央が「今のは俺! 全然違う曲始まると思ってた」と、謝ったからだ。「どっちか」のもう1曲の方=「才悩人応援歌」が始まると勘違いしていた、ということだろう。
ということに、ツアーが終わってから、気がついたのだった。どんな意味で、どのように節目だったのかについてはわからないが、バンプはツアー終了と同時にオフィシャルサイトをリニューアルし、オフィシャルアプリ「be there」をオープンした。ということと、今回、このようなツアーをやったことは、無関係ではないのでは、と思う。
この演出にも、意表をつかれた。もうテープ? しかも、小さい方のステージで? そもそも3曲目に「天体観測」を、小さい方のステージで、サラッとやってしまう、ということ自体にも、ツアーの初日でびっくりしたのだが。
あ、その初日のレポはこちらです。https://spice.eplus.jp/articles/314811
え、じゃあ尺、2時間45分? そんなにやったっけ? 曲数は、えーと、アンコールで「embrace」と「ガラスのブルース」をやって、増川、チャマ、升がはけて、藤原がひとりでしばらくしゃべってから、ギター1本で歌い始めて、3人が戻ってきて演奏に加わった「宇宙飛行士への手紙」まで合わせて、20曲か。
20曲にしては時間経ってないか? なんで?……と考えて、メンバーが自由にしゃべったり自由に動いたりしていた、その分、時間がかかったのではないか、という結論になったのだった。
それに続いて、チャマは「声出しの練習をしましょう」と、オーディエンスと「イェーイ!」で掛け合いをし、中盤のセンターステージのコーナーでは、オーディエンスに「be there」と「たまアリ」を、声の高い人と低い人に分けてコールしてもらい、そのさまをスマホに収めた。
藤原に「頑なにマイクを使ってしゃべろうとしないんですよ。地声で伝えようとすんの」と紹介された升は、「ツアーファイナル! ツアーファイナル! すごい大事なことなんで二回言わしてもらいました!」「あとちょっとなんで、全力でやろうぜ!」と、この日もオフマイクで、声の限りに叫んだ。
その後、日替わり曲の「月虹」と「HAPPY」、そして固定で演奏され続けてきた「ray」を経て、日替わり曲の「supernova」で、本編が終わる。
「HAPPY」は、藤原の「会えてうれしいぜ、さいたま、気分はどうだい? 生まれてこなきゃこんな夜、なかったんだぜ?」という言葉で始まり、オーディエンスと藤原による<Happy birthday>のシンガロングで終わった。「ray」では、花道の先まで行ったチャマが、その勢いのままフロアまで下りた。
「supernova」も、「HAPPY」と同じく、「ラララ」の合唱で終わったが、曲が終わってメンバーが去るとすぐ、アンコールを求める声として、またその「ラララ」を、オーディエンスが歌い始める。
オーディエンスの「ありがとう!」の声に、藤原は「ありがとうってこっちのセリフなんよ。終わっちゃうの、さみしいよ」と言ってから、「ガラスのブルース」に入った。
昔からライブに対しては、ものすごいたくさんの思いが渦巻いていて、なんて説明していいかわからなかった。でも、27年活動してきて、この『be there』というツアーをやって、ようやく一個わかったことがある。僕らにとってライブというのは、僕らの音楽を受け止めてくれた人に、会うための場所です。会うという行動をする、それが俺たちにとってのライブです。シンプルなことだけど、自分にとってすげえ大事なことなんだな、と、このツアーを回って改めて思いました──。
この日の、このタイミングでのこの曲は、BUMP OF CHICKEN とオーディエンス、両方の気持ちの表れのように、さいたまスーパーアリーナに響いた。
取材・文=兵庫慎司 撮影=太田好治、立脇卓、横山マサト
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