ego apartment グルーヴィーな演奏
と胸の奥に迫るメロディが一体となり
高鳴っていく感触、初のワンマンツア
ー東京公演をレポート

EGO APARTMENT -TRANSIT-

2023.3.12 TOKIO TOKYO
Spotifyの「RADAR: Early Noise 2022」に選出されるなど、ネクストブレイクアーティストとしての大きな期待が寄せられている3人組音楽ユニット・ego apartment。英語と日本語を交えた歌詞、ソウル、ヒップホップ、R&B、様々なダンスミュージックのエッセンスを融合させて、ツインボーカルを活かした独自のサウンドを発信している彼らは、海外のリスナーからの熱い注目も集めている。3月9日(木)大阪・梅田Zeela公演を皮切りにスタートし、3月11日(土)名古屋・ell.FITS ALL、3月12日(日)東京・TOKIO TOKYOを巡った初のワンマンライブツアー『EGO APARTMENT -TRANSIT-』。東京公演の模様をレポートする。
Peggy Doll(ペギードール)
会場内が暗くなり、ステージに現れたDyna(Ba)、Peggy Doll(Gt,Vo)、Zen(Gt,Vo)。3人を出迎えた観客の拍手と歓声がものすごい。彼らの音楽を生で体感するのを楽しみにしていた人々の様子が、周囲の空気からまざまざと伝わってきた。そして、マシンビート、シンセサイザーの幻想的な音像が鳴り響き始めた後、3人の演奏も合流。耳を傾けていると自ずと身体を揺らしたくなったジャムセッションを経て1曲目「huu」がスタートすると、満杯のフロアは瞬く間に幸福度100%のパーティー会場と化した。低音を利かせたZenの歌声、Peggy Dollのハイトーンボイスのコンビネーションも心地よくて仕方ない。続いて「Sensation」と「Weigh me down」も届けられたが、あの感覚を何と表現したら良いのだろうか? アッパーなサウンドで煽るのではなく、濃密なグルーヴでリスナーの心の奥を温め、ダンスへと優しく誘うかのようなego apartmentの魅力をじっくりと堪能したオープニングの3曲だった。
Dyna(ダイナ)
演奏がスタートするや否や観客の手拍子も加わり、人肌の温もりに満ちた盛り上がりが生まれた「NEXT 2 U」。ジャムセッションを経てスタートし、開放的な空間を作り上げた「Wrong with u」を披露した後、汗をタオルで拭ったDyna。Zenがギターを持ち替えている間、「サウナは好きですか?」と観客に語りかける姿は、自然体そのもの。演奏している時は神々しい3人なのだが、時折のMCタイムでは親しみやすいキャラクターを思いっきり滲ませる。ほんわかとした魅力も垣間見せつつ、極上のサウンドがさらに届けられていった。ミラーボールの光で照らされたフロアが穏やかな喜びで満たされていた「mayonnaise」。観客のダンス衝動をさらに加速した「N o o N」……ライブ中盤のこの辺りの時点で、フロアで踊る人々の心は、彼らの音楽に完全に魅了されていたのだと思う。アルバムで聴いても最高だった「FOG」や「the wire」も、生で体感すると一際輝いて感じられた。
Zen(ゼン)
Peggy Dollがギターを奏でながら瑞々しい歌声を響かせたエルトン・ジョンのカバー「Tiny Dancer」。その直後に始まったジャムセッションは、やがて「1998」へと突入。シンセサイザーの音像、ファンキーなビート、フロアで踊る人々の波動が完全に一つになっていた。Dynaのベースプレイが先陣を切り、エネルギッシュなダンスビートを開花させた「TV」。恍惚を誘う音像で酔わせてくれた「SUN DOWN」。そして本編のラストは「Loose」。昨年リリースされたアルバム『EGO APARTMENT』のエンディングをドラマチックに飾っていたこの曲だが、やはり素敵だった。3人のグルーヴィーな演奏、絶妙なツインボーカルのコンビネーション、胸の奥にまでグッと迫って来るメロディが一体となり、じっくりと高鳴っていくあの感触は、またぜひ味わいたい。
アンコールを求める大きな拍手と歓声に応えてステージに戻ってきたDyna、Peggy Doll、Zen。観客に改めて感謝の気持ちを伝えつつ、オリジナルグッズとして作ったギターのピックが、3種類それぞれで固さが異なることなどをリラックスしたトーンで語り合う3人の様子が微笑ましかった。楽屋で過ごしている時も、おそらくこんな感じなのだろう。そして、4月19日(水)WWW (東京)、4月28日(金)BIGCAT (大阪)――2箇所で今回のツアーの追加公演が開催される旨が告げられた後、「完走しちゃいますか?」というDynaの言葉を合図に演奏がスタート。アンコールで披露された「REACH!」と「Call me」は、終始、穏やかな昂揚感を漂わせていたこのライブを締め括るのに本当にふさわしかったと思う。明るく盛り上がるフロアを眺めながら演奏し、歌声を響かせていたメンバーたちも、とても嬉しそうな表情を浮かべていた。
演奏を終えてステージを後にした3人を見送った拍手と歓声は特大級。BGMとして流れ始めた「it takes two」が、余韻を美しく彩っていた。こうして終演を迎えたワンマンライブツアー『EGO APARTMENT -TRANSIT-』のTOKIO TOKYO公演。先述の通り4月に追加公演が開催されるが、素晴らしい演奏を届けてくれるだろう。ego apartmentは、さらに活躍の場を広げていくはずだ。彼らの音楽に心惹かれている人には、ライブ会場に足を運ぶことをお勧めしたい。きっと、ますます大好きになれると思う。

取材・文=田中大 撮影=Asaoka Eisuke@eisuke_asaoka_photograph

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