谷川清美×高井浩子インタビュー~東
京タンバリン『時間よ止まれ』は“時
間”をめぐるリアルファンタジー

高井浩子の劇作を本人演出のもと上演する劇団「東京タンバリン」が、2023年2月22日(水)~28日(火)に東京・下北沢 小劇場B1において、新作『時間よ止まれ』を上演する。
2021年6月上演の『その前』では高架下空き倉庫、2022年12月上演の『絆されて』では三鷹・SCOOLというイベントスペース、と劇場以外での公演が続いていた東京タンバリンが、2019年11月以来となる劇場公演を行う。
前回と前々回公演は「笑えるサスペンス」と銘打っていたが、今回は劇場公演ということもあり、また違った方向性の作品になるという。作・演出を手掛ける高井と、東京タンバリンが手掛ける「わのわ」という和をモチーフにした企画公演には出演経験があるが、本公演への出演は初となる谷川清美に、今作への思いを聞いた。
<あらすじ>
遠山ひろみ(49歳)は、仕事に家事に忙しく、毎日やりたい事が全部できない。
「もっと時間があれば」と常々思っている。
ある日、時間を売ってくれるという男が現れた。
東京タンバリン『時間よ止まれ』チラシ画像

■時間がもっと欲しい?欲しくない?
――今作は「時間がもっと欲しい」と思っている人が主人公のお話しですが、どういうところから発想されたのでしょうか。
高井 2019年に劇場公演として上演した『ごえん』は、お金をテーマにしたお話でした。そのテーマ自体を面白がってくださったお客様が多かったので、「人にとって必要なものをテーマにすると楽しんでもらえるのかな」と思い、次のテーマは「時間」にしてみようかな、ということを『ごえん』が終わった直後くらいに考えていました。
谷川 そんな前から今作のテーマを考えていたんですね。時間について、出演者にもアンケートを取っていましたよね。
高井 みんなが「時間」に対してどういうふうに思っているのか、時間をどういうふうに使っているのか、ということが知りたくて、昨年秋くらいに簡単なアンケートをしたんです。
――アンケートの結果はどうでしたか?
高井 時間がもっと欲しいという人と、そんなにいらないという人と半々ぐらいでしたね。1日の時間はもっと少なくていい、という人もいました。清美さんの回答は「ちょうどいい」でしたよね。
谷川 あの当時はそうでしたね。あれからもう時間が足りなくて、今は時間が欲しいです(笑)。
高井 稽古が始まると、どうしてもそうなりますよね。
谷川 追求し始めるときりがないですしね。「これでいい」と言えないところが演劇の魅力ではあるんですけど。よく「あと1週間あったらな」なんて言うけれど、多分あと1週間あったとしても、1週間後にはまた同じことを言うんじゃないかな。ある程度期限が決まっていて、そこに向けての集中力というのは必要なのかな、と思います。
――高井さんご自身は、時間についてはどう思っているのでしょうか。
高井 私は常に時間が欲しいと思っています。1日あと10時間ぐらい欲しいですね(笑)。映画を見たりドラマを見たりするのも好きですし、趣味もあるので。
谷川 高井さんの趣味というのがまた、ちょっと時間をかけて丁寧にやるものなんですよね。
高井 茶道とか、縫い物とかも好きですね。最近は和裁をやっていて、今は着物を縫っています。あとは、台本を書いているときとか、何か文章を書いているときは、時間があっという間に経ってしまうんですよね。
谷川 時間が欲しい、と思うのはなんだかんだ言ってやることがあって満たされているからなのかもしれませんね。
高井 嫌な時間は経つのが遅く感じますもんね。
東京タンバリン『時間よ止まれ』 高井浩子

■若い時の出会いで人生は変わって行く
――谷川さん演じる主人公「遠山ひろみ」について教えてください。
高井 忙しくて時間が欲しいと思っている人を主人公にしようと思って、あえて主婦にしました。忙しいお仕事の人は他にもいろいろいらっしゃると思いますが、私の身近にいる主婦の友人たちをイメージしています。それを演じるのは清美さんしかいない、と思って今回お願いしました。
谷川 でも多分、本番の舞台上では私よりも他の俳優たちの方が忙しいと思います(笑)。
――劇団員の方たちからは、特に場面転換の段取りを覚えるのが大変だという話も聞きました。
谷川 『ごえん』を見たときに、場面転換が本当に見事だなと思って、心の中で「すごい!」と毎回拍手していました。みんなよく間違えずにできるな、と感心しちゃいます。
高井 場面転換のところは東京タンバリンの特徴でもあるというお声もいただくくらい、毎回こだわってものすごく練習しています。
――今回は劇団員の方が4人と、谷川さん含め客演の方が3人というキャストです。客演の谷川さんと大田路さんはタンバリンへの出演経験者ですが、木林優太さんは初めてのご出演ですよね。
高井 木林くんは昨年7月に私が本広克行さんと一緒にやった「Fabrica」シリーズの新作リーディング公演に出演していました。23歳で今回の座組では一番若手なんですが、尊敬する役者は勝新太郎さんだし、鈴木忠志さんのワークショップを2回受けたことがあるし、演劇にものすごく詳しいんです。富山県出身なので、おススメの観光地はどこかと聞いたら「利賀村(※)です」と答えていました(笑)。
※利賀村=鈴木忠志主宰の劇団SCOTが活動拠点としており、国際演劇祭を開催するなど“演劇の聖地”とも呼ばれている
谷川 びっくりして「あなた、本当に23歳なの?」って聞いちゃいました(笑)。すごくしっかりしているよね。
高井 昨年のリーディング公演のときも字幕を作ってくれたり、照明のセッティングも彼が中心になってやってくれたり、仕事がすごく早くて頼りになる存在でした。
谷川 今回も、稽古の様子を自主的に撮影してくれていて、おかげで不安だった段取りのチェックができてとても助かりました。
高井 何も言わなくても自分からやってくれるんですよね。まだ若いから、これからどういう活動をしていくのか楽しみな存在です。
谷川 若い時にどういう人と出会うかで、その後の人生変わって行きますよね。木林くんが役者の道に進んだのは、鈴木忠志さんとの出会いが大きかったのかもしれませんね。
東京タンバリン『時間よ止まれ』 谷川清美

■今作を見ている間は現実の嫌なことを忘れて欲しい
――高井さんと谷川さんの出会いのきっかけは何だったのでしょうか。
高井 私は清美さんが出演している舞台はかなり前からよく見ていました。清美さんの師匠とも言うべき太田省吾さんの作品も見ていましたし、私の好きな宮沢章夫さんや平田オリザさんの作品にも出演されていましたし、三谷幸喜さんとか鈴木聡さんとか本当にいろいろな演出家の舞台に出演されていますよね。
谷川 全部若いときからの繋がりで出演させてもらいました。役者は人との出会いだ、とよく言いますけど本当にその通りだと思います。
高井 直接の知り合いになったきっかけは、山崎美貴さん繋がりですかね?
谷川 美貴ちゃんとは、別役実さんの『うしろの正面だあれ』という作品で共演したんですよ。2015年に初演して、2017年に再演もしました。何回もやり続けていこうね、と話している作品です。
高井 ぜひやって欲しいです!  清美さんと美貴さんのコンビがすごく面白くて、絶対この2人を一緒に出したい、と思ったので「わのわ」にお誘いしたんです。
谷川 美貴ちゃんが「わのわ」に出演すると知って「観に行くからね!」と言っていたら、自分も一緒に出ることになっちゃいました(笑)。
――今回は「わのわ」とはまた一味ちがう谷川さんが見られそうですね。どのような作品になるのか、楽しみにしています。
高井 いつものタンバリンとはちょっと違って、ファンタジー要素が入っています。リアルベースではあるんですけど、リアルファンタジーと言うんでしょうか。お客さんに設定を理解してもらえるか、今はまだちょっと心配ではありますが。
谷川 高井さんの作品は本当に身近なことを描いているので、セリフもスッと頭の中に入ってくるんです。今回も身近なテーマではありますが、ファンタジー要素が入ることで、ちょっとリアルから別の世界に飛ぶことができるような気がしています。この作品を見ている間は現実の嫌なことをちょっと忘れて、ほっと一息つくことができたり、また明日も頑張ろう、明日も楽しもう、と少しでも前向きな気持ちになってもらえたら嬉しいですね。
東京タンバリン『時間よ止まれ』 左から谷川清美、高井浩子
取材・文・撮影=久田絢子

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