うるさ型の音楽ファンも唸らせるパフ
ォーマンス力を身につけたゆるめるモ

 ミニアルバム『箱めるモ!』を共同製作した盟友・箱庭の室内楽がバックバンドを務め、ラッパーのDOTAMAやノイズミュージシャンのJOJO広重など多彩なジャンルの豪華ゲスト陣が次々と登場して華を添えたこともあって、アイドルファン以外の層が集まったのも事実だろう。

 しかし、それは耳の肥えた音楽ファンを納得させるパフォーマンスを見せなければいけないという重責を背負うことも意味する。趣向を凝らした仕掛けを施したり、わざと脱力したパフォーマンスで煙に巻いたりでお茶を濁す方向性もあっただろうが、彼女たちは真っ向勝負で挑んだ。その結果、腕利きのミュージシャンたちが奏でる音と、ゆるめるモ!の力強い歌とダンスが拮抗して、バンドマジックとも言うべき化学反応を起こした。

 しかも途中で、ゆるめるモ!だけで楽器を持って生演奏するという一歩間違えるとお寒い結果になる企画もあったが、ドラムを担当したももぴの正確なリズムキープと、指から血を流すほどギター練習を積んできたあのの演奏力もあって、単なるお遊びではない域に達していた。相変わらずMCはグダグダ感満載で、グループ名通りの〝ゆるさ〟を醸し出していたが、パフォーマンス面では音楽ファンを唸らせるのに十分な成果を残した。

 そもそも、ゆるめるモ!が8人体制になったのは去年の9月。筆者は直後にインタビューする機会があったのだが、加入したばかりの二期メンバーはもちろん、オリジナルメンバー3人もフワフワしてまとまりがなく、吹けば飛ぶような頼りない印象を受けた。その3カ月後に再びインタビューした時は、それぞれが自分の意見を持った発言をして、特に加入前は引きこもりでコミュ障を自認していたあのが相手の目を見て話すようになっていて、その成長ぶりに感心しながらも、まだまだライブは未熟さが目立った。それが、たった1年足らずで実力で勝負のできるグループになったのだから感動もひとしおだった。

 いわゆる楽曲派から支持されるアイドルは、各メンバーの個性よりも、運営の提示するコンセプトが前に出てしまうことが多い。ゆるめるモ!を語る言説の大半も、まずは楽曲やアートワークの良さを称賛するのが先に立ち、影響を受けたアーティストや元ネタに言及する割に、各メンバーのことは挨拶程度にしか触れなかったりする。

 実際、ゆるさ全開だった頃は楽曲の良さばかりが際立っていたが、今のゆるめるモ!は各メンバーが、しっかりと自分の足で立ち、自分の意思で歌とダンスに真摯に向き合っているのがひしひしと伝わってくる。

 2期メンバーのゆいざらすは保育士になる夢を叶えるためにLIQUIDROOMのライブで惜しくも卒業したが、今のゆるめるモ!なら、それを糧にして、さらなる飛躍を遂げるはずだ。


撮影●ElNinoTheIdol(mel house)


猪口貴裕 実話誌から飲食系の業界誌まで節操なく執筆しているフリーライター。最初に好きになったアイドルは斉藤由貴、心の師と仰ぐアイドルはメロン記念日

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