L→R 松尾レミ(Vo&Gu)、亀本寛貴(Gu)

L→R 松尾レミ(Vo&Gu)、亀本寛貴(Gu)

【GLIM SPANKY インタビュー】
ダークだけどコミカルさ
爽快さもあり、
思いきりがある表現を心がけた

覚悟が決まった人間が
“オラーッ!”とやっているみたいな曲

サスペンスホラーの主題歌って聞くと、不安や不快な気分に陥るドロっとしたものが多いですけど、この曲はそれがなくて。聴き終えると、むしろ清々しさを感じたり。

松尾
個人的な、いちリスナーとしての好みの話なんですけど、欲望や嫉妬だったりとか、そういう負のエネルギーを歌うロック的な曲っていっぱいあると思うんです。これはすごく表現が難しいんですが…“女”が出るのが嫌なんですよ。女の情念みたいなのが出るのが。それは歌い方もそうなんですけれど。なので、ドラマで描かれている情念をいかになくして、でもそのキーワードを持った上でコミカルさや強さもありつつ爽快に仕上げるかっていうのがこだわったポイントですね。特に楽曲のコード感はマイナーにも転ぶし、メジャー感があるメロディーにもつながる。Aメロはちょっとマイナー調の強い感じで始まって、Bメロで一気に開けてメジャー感のある音に変わって、サビでまた強い音に変わる…そういうコロコロしたストーリーを組み立てることによってコミカルさもあるし。明るかったり強かったりというバランスをとりながら、メロディーも作りました。
亀本
松尾さんのキャクター的に、女性の嫉妬とかそういうのもないし。ドラマの主人公も意外とドロドロしていなくて、人間というよりはお化け的で、ダークヒロイン的な明快さが行動原理全てにあるんですよ。だから、覚悟が決まった人間が“オラーッ!”とやっているみたいな曲ですね。
松尾
サワコはいろいろ嫌なことをしていくけど、心の本質的なところは一種のサイコパス的…覚悟が決まって“目的に沿って排除する”っていうところの明確さをちゃんと引き出せた楽曲になったかなと思っていて。一見ドロドロしたドラマでこの曲が始まることによってギャップがあるかもしれないけど、深いところでちゃんとつながったコラボレーションになったと思います。

ダークな要素もあり、挑発的でもあり、でもタイトルも含めてキャッチーさもあって。

松尾
自分の好きなロックはダークなものもいっぱいあるけど、どこかに希望があるっていうのが大切なポイントで。自分の作る、歌う楽曲も、いくら怒りや嫉妬だったりをテーマにしていようと、どこかに救いがあって希望を見出せるものにしたい。だから、“不幸アレ”も“どうして“不幸アレ”なんだ?”ってその逆を考えられる…“不幸だからこそできることがあるかもしれない”とか、そういう意味をもたらす楽曲にしたいと。そのキャッチーさ、ダークな内容だけどコミカルさや爽快さもあって、気持ち良いくらいの思いきりがある表現を心がけました。淳治さんも私の性格や思っていることを分かってくれていて、さらに私がどんな言葉を歌ったら面白いのかも分かってくれているので、淳治さんとのやりとりを重ねて面白い歌詞に仕上がったと思います。

では、サウンド面はリクエストを受けてどういうかたちで構築していったのでしょうか?

亀本
単調なテンポの速い日本語のロック…ドッタンドドタンみたいなのはあまりやりたくなかったので、違うリズムパターンを採用していかなきゃなと。で、まずAメロをタムで印象的なシーンにしたいというアイディアがあって、テンポが速くても重心が落ちて若干ダークな感じにするところから始めていきました。ロックってシンプルなので、コード進行とかリフとかの選択肢が限られているから、そこに当てるリズムパターンで違いを出してメロディーを引き出す…そんな感覚で作っていきましたね。サビ中ではテンポが半分になったり。
松尾
サビの中でもジェットコースターのようにリズムが変わったりして、そこに変わっていく心情、心の描写みたいなのが表れていると思います。

イントロのギターフレーズにもすごく耳を惹かれます。ちょっとホラーパンク的で。今作もギターの多彩さが楽しいです。

亀本
いろいろやっているんですよね。細かい芸がいっぱい効いています。メインの役者はスライドにしているんですけど、スライドって無条件にミシシッピー感(笑)…サザンロックみたいな土臭さだったり、ブルース感を生むじゃないですか。今までアップテンポな曲ではスライドを使っていなかったんですけど、使うことで差別化にもなりますし、逆に言うと“僕らしか使わないよな、こういうスライドは”というところで、スライドでいろいろなことをやるっていう。あとは、アームを使って一瞬だけウイーンって鳴らしたり。アレンジャーがシンンセなどで作る効果音とかを全部ギターで作っています。

瞬時に切り込んでくるギターソロもカッコ良いです。2番のレミさんの声が切れる瞬間の。

松尾
主人公がパッパッと切り替わるみたいな。ハードロックっぽいけど、ちゃんとドライブ感のあるギターソロになっていて、“これ、ライヴでやったら盛り上がりそうだな”って。
亀本
トレンドの移り変わりって激しいですけど、今の自分の肌感としては“ハードロック”というキーワードがトレンディーに感じていて。松尾さんは作っている時、“この曲はハードロックにしたいくない!”と言っていましたけど(笑)。
松尾
“ハードロック”というキーワードをもらったんだけど、“ハードロックにしたくない!”と(笑)。自分の許せるハードさというのと、でも突き抜けたいという気持ちと、そのせめぎ合っているところを選んでいったというか。あえてギリギリのところを攻めて一歩成長したっていう感覚です。

アルバム、そして今回の配信シングルへの流れで、2人組であることの自由度がさらに高まったような気がします。

亀本
それはどんどん増していますね。
松尾
そうだね。うちらふたりがOKだったら何でもあり…みたいな(笑)。

取材:竹内美保

配信シングル「不幸アレ」2022年10月31日配信リリース Virgin Music

『Into The Time Hole Tour 2022』

11/02(水) 神奈川・横浜ベイホール
11/04(金) 福岡・DRUM LOGOS
11/05(土) 広島・CLUB QUATTRO
11/11(金) 大阪・NHK大阪ホール
11/23(水) 北海道・札幌ペニーレーン24
11/25(金) 宮城・仙台GIGS
11/27(日) 長野・ホクト文化ホール 中ホール
12/03(土) 愛知・名古屋市公会堂
12/11(日) 新潟・LOTS
12/20(火) 東京・昭和女子大学 人見記念講堂
12/21(水) 東京・昭和女子大学 人見記念講堂

GLIM SPANKY プロフィール

グリム・スパンキー:⾧野県出身の男女二人組ロックユニット。ハスキーでオンリーワンな松尾レミの歌声と、ブルージーで情感深く鳴らす亀本寛貴のギターが特徴。特に60~70 年代の音楽やファッション、アート等のカルチャーに影響を受けており、それらをルーツに持ちながら唯一無二なサウンドを鳴らしている。2007 年結成、14 年メジャーデビュー。18 年に日本武道館ワンマンライヴを成功させ、同年開催の『FUJI ROCK FESTIVAL』GREEN STAGEに出演。ドラマや映画、アニメなどの主題歌を多数手掛けている。最近ではももいろクローバーZ や上白石萌音、DISH//、野宮真貴、バーチャル・シンガーの花譜など、幅広いジャンルで他アーティストへの楽曲提供も行なっている。GLIM SPANKY オフィシャルHP

「不幸アレ」
Official Audio(Short ver.)

アーティスト

OKMusic編集部

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