【水瀬いのり インタビュー】
どれも一貫して前を向いていて、
未来を諦めていない
過去最高に伸び伸びとしていて、
今は何も怖くないという気持ち
“この人にお願いしたい”と指名された方は他にもいらっしゃいます?
藤永龍太郎(Elements Garden)さんと栁舘周平さんですね。
藤永さん作詞作編曲の「八月のスーベニア」は低音のメロディーが続くエモ系のギターロックで、水瀬さんの楽曲としては新しいチャレンジですね。
そうなんです。新しいだけに、レコーディングしている時は不安でした。キーが低いし、どれくらい重厚かつドラマチックな楽曲に仕上がるのかドキドキしていたのですが、最終的な音源を聴いた時は、物語に没入するような夏のひとコマを感じる曲に仕上がっていて、非常にいいトラックになったと思います。藤永さんが過去に手がけてくださった楽曲もギターとバンドサウンドが軸にあったんですけど、ここまでジリジリとして蜃気楼が見えるような夏の表現はなかったのでとても新鮮でした。例えば「約束のアステリズム」(2019年4月発表のアルバム『Catch the Rainbow!』収録曲)などを彷彿させますが、そのキラキラ感とは違う夏を音で描写してくださって。“八月のスーベニア”というタイトルがついた時点で、絶対8曲目に収録しようと思ったんです。
そんな密かなこだわりが!
藤永さんもSNSで“8曲目だ!”と喜んでくださって、してやったりでした(笑)。
イントロとアウトロにブレスの音が入っていますが、あれは水瀬さんの息ですか?
はい。でも、決して誰かに聴いてほしいとアピールするような息ではなく、自分の中で思い出した時にハッとするみたいな、あくまでも内省的な意味のブレスです。曲の世界を彩るという意味では、ブレスや歌い方として、カッコつけすぎなかったことでリアルになったと思います。
しかし、歌詞を読むととんでもないお土産を8月に残しましたね。
未来永劫引きずるだろう、8月になると思い出すスーベニアです(笑)。
個人的には、そんな「八月のスーベニア」以降の後半の曲順がすごくライヴっぽいと思いました。「HELLO HORIZON」と「REAL-EYES」のアニソン2連発がアツく、そのあとに「パレオトピア」など新曲が続き、前回の横浜アリーナでのアンコールを思い出させてくれる「僕らは今」、そしてラストの「glow」と、この流れだけで泣けます。
ありがとうございます(笑)。前半はキラッとした感じがあるだけに、後半はややメッセージ性が強かったり、人によってはずっしりくるハイカロリーな曲が並んでいます。サウンド感的には少し沈んだ感じになる部分もありますけど、どれも一貫して前を向いていて、未来を諦めていないというメッセージが込められているので、個人的にも聴き応えがあるゾーンになったと思います。
「パレオトピア」は先ほどお名前の挙がった栁舘さん作詞作編曲で、EDMを取り入れた疾走感のある楽曲なのですが、歌詞が非常に深いですね。
解釈はそれぞれでいいと思うのですが、私は“弱さを許す”ということがゴールかなと思って歌いました。鎧を自分の身にまとって戦ってきたけど、鎧をまとうということはひとつの防御でもあるわけで、全てを曝け出して身ひとつになった時に得られる、本当の覚悟や強さも感じる一曲です。知らず知らずのうちに、心にたくさん鎧をかぶせてしまっていることを比喩しているのかなと。
サビの展開が胸に迫りくる感じですごくいいですね。
特にラストのサビは“いったいどうなっちゃうの!?”と思うような駆け上がり方だし、急降下と急上昇を繰り返す流れで、最後に虹を観るという。この曲は3分ちょっとくらいしかなくて、もしかすると私の楽曲の中で最短かもしれないのですが、短い中でこれほどまでに世界を広げられるのが本当にすごくて! 3分の可能性を感じましたね。
カップ麺ができた頃には。
タイトルの“パレオトピア”はどういう意味なのですか?
これは造語で、一番近い言葉は“古郷(ふるさと)”だそうです。栁舘さんはシングル「Starlight Museum」(2020年12月発表)に収録の「クリスタライズ」を書いてくださっていて、ご本人に確認したわけではありませんが、その曲とも少し似た世界線なのかなと想像しています。
ミディアム系では「風色Letter」と「心つかまえて」がグッときます。
「風色Letter」はフォークソングっぽさの中にある弦がキーになっていて、ヴォーカルとしてはずっとつながっているような歌い方を意識しました。「心つかまえて」はアルバムを象徴する、側にあるものの大切さを歌った曲です。イントロからガツガツきたり、たくさん転調する曲じゃなくても、ハッとする瞬間があるのがミディアム系の楽曲の魅力なので、きっとアルバムの中でスルメポイントになると思いますね。
そして、新曲としてはジャズ調の「Melty night」は最後に♪トゥルットゥットゥー〜とフェイクが入っていて。
“どんな時に♪トゥルットゥ〜って言うんだろう?”って(笑)。日常にはない世界観なので、ライヴではどうしようと思っていたんですけど、作編曲のKOUGAさんは“ライヴでは自分なりに変えちゃっていいですよ”と言ってくださって、それもまた難しいなと思いつつ(笑)、ライヴではもしかしたらその日によって“今夜しかない「Melty night」”を披露できるかもしれないです。
その“今夜しかない「Melty night」”も楽しみなツアーに向けての意気込みをお願いします!
毎回“自分を曝け出すのはこんなに難しいことなんだ!”と思い知らされてきましたが、今回はチームやみなさん、そして自分自身をより信じて、“今は何も怖くない!”くらいの気持ちでいます。過去最高に伸び伸びとした水瀬いのり、ひとりの人間であり女性である水瀬いのりが、そこにいて歌っている、その姿から何かを感じ取っていただけるものがあれば嬉しいですね。
取材:榑林史章
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アルバム『glow』2022年7月20日発売
KING RECORDS
- 【初回限定盤】(CD+Blu-ray)
- KICS-94059
- ¥3,960(税込)
- 【通常盤】(CD)
- KICS-4059
- ¥3,300(税込)
『Inori Minase LIVE TOUR 2022 glow』
9/03(土) 兵庫・神戸国際会館こくさいホール
9/10(土) 愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール
9/17(土) 宮城・仙台サンプラザホール
9/24(土) 福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
10/01(土) 神奈川・横浜アリーナ
ミナセイノリ:2010年に『世紀末オカルト学院』(岡本あかり役)で声優デビュー。中学⽣の時、オーディション『アニストテレス』に参加し、第1回⽬のグランプリを受賞。その後、2010年にTVアニメ『世紀末オカルト学院』(岡本あかり役)で声優デビューを果たす。2013年に出演したTVアニメ『恋愛ラボ』をきっかけに演技⼒の⾼さや役幅の広さが⾼く評価されるようになり、10代にして話題作のメインヒロイン役に次々と抜擢されるようになる。そして、キャラクターソングやアニメ・ゲームイベントでのパフォーマンスで、ジャンルを選ばずあらゆる楽曲を歌いこなす歌唱⼒が多くのアニメ/声優ファンを魅了し、歌⼿としての活動にも⼤きな期待が寄せられていた中、15年12⽉2⽇、⼆⼗歳の誕⽣⽇を迎えた記念すべき⽇に、シングル「夢のつぼみ」で待望の歌⼿デビューを果たす。日本武道館、横浜アリーナ、ぴあアリーナMMなどアリーナクラスの大会場で単独公演を成功させ、音楽活動の面でも常に大きな注目が寄せられている。水瀬いのり オフィシャルHP
「glow」
「REAL-EYES」MUSIC CLIP
「HELLO HORIZON」MUSIC CLIP
「Starlight Museum」MUSIC CLIP
「僕らは今」MUSIC CLIP
「ココロソマリ」MUSIC CLIP