BUMP OF CHICKEN シンプルな演出と"
近さ"で届けた2年8ヵ月ぶりライブ

BUMP OF CHICKEN LIVE 2022 Silver Jubilee at Makuhari Messe 02/10-11

2022.7.3 幕張メッセ国際展示場
2016年の2月11日、つまり初めてライブを行ってからぴったり20年後に、BUMP OF CHICKEN(以下バンプ)は、それを記念するライブを、幕張メッセ国際展示場9~11ホールで行った。当時のバンプは、セットにサブステージを設けたり、効果映像や特効を駆使したりする──つまり、アリーナやスタジアムの規模でツアーを回るバンドにふさわしい演出を取り入れてライブを行うバンドに、既になっていたが、その日は、どんなにキャパが上がってもなるべく演出は入れず、ライブハウス時代と地続きのシンプルなライブを行っていた、2010年頃までのバンプに戻ったようなステージだった。
ということを、この日、会場に足を踏み入れて思い出した。当初は2月10・11日に行うはずだったが、コロナの感染拡大を受けて延期になり、振替公演が実現した、2022年7月2・3日の2日目。ステージの左右には4人を映す巨大ビジョンが設けられているが、花道やサブステージなどはない。後方に巨大なバンプのエンブレムがドーンと掲げられているだけのステージセットも、2016年の時と同じである。そういえば、会場も同じ幕張メッセの9~11ホールだ。
2016年より後の周年ライブでは、ツアーの日程に2月11日を組み込んで、アリーナ/スタジアム仕様の演出込で、ライブを行った時もあった。だから、必ず「周年=原点に戻ってシンプルにやる」というわけではない。2020年2月末に世の中がコロナ禍になって以降、バンプが有観客で行う初のライブであること。だから、バンドにとっても、オーディエンスにとっても、「マスク必須」「声出しNG」等のコロナ禍のルールでライブに参加する最初の体験であること。そもそもバンプがライブを行うこと自体、2019年のツアー『BUMP OF CHICKEN TOUR 2019 aurora ark』のファイナルの、11月3・4日の東京ドーム以来、2年8ヵ月ぶりであること──。
というわけで、25周年を記念する、というだけなく、さまざまな意味で重要な意味を持つライブが、この2日間だった。そういえば、登場時のSEも、2008年まで使っていた、そして2016年の時もそうだった、THE WHOの「A Quick One,While He’ s Away」を今回も使用していた。そのSEに合わせて巻き起こるハンドクラップの中、4人がステージへ。藤原基央がレスポールJr.を高々と掲げるおなじみのポーズを見せ、2020年のシングル「アカシア」でライブがスタートする。
次は2016年のアルバム『Butterflies』から「Hello,world!」、続いて早くも「天体観測」(セトリから外すのはおかしいけど、1曲目やアンコールでぶちかますのはドラマチックすぎるから、みたいな、絶妙な置き位置だった)と、3曲演奏したところで、藤原、最初のMC。
昨日と同じことをしゃべるのは恥ずかしい、でも友達に「うまいことを言うなあ」と誉めてもらえた。だからもう一回言うよ? SNSとかで昨日何をしゃべったか知ってる人は、ニヤニヤして聴いてりゃいいじゃんよ! という、「念を押す」と「開き直る」をブレンドした前置きを経て、彼が話したことは、さっきの「天体観測」の後半で、「今も一人追いかけている」のところを歌わなかった理由だった。
世界がこんなことになってしまう前、ライブの中でお決まりのように、きみが歌ってくれるパートがあった。今は歌えないのは充分わかっている、でもそのパートは空白のままにしておく。学校で、唯一心を許せる大事な友達が、やむを得ない事情でしばらく学校を休まなきゃいけなくなったら、そいつの席は、誰かが座るわけでも、撤去されるわけでもなく、空席のままそこにある。それと同じで、空白にしておく。安心して楽しんでほしい、僕にとってその空白を感じることは、とても愛しい作業なので。なんにもないんじゃなくて、空白がそこに存在しているので──。
というこのMC、ふたつの意味でとても重要だった、と感じた。まずひとつは、「空白をそのままにしておく」と最初に宣言したことが、ライブの後半で、大きな意味を持ったこと(詳しくは後述)。そしてもうひとつは、この話をした時の、藤原の語り口だ。近いのだ、オーディエンスとの距離が。地元の友達と居酒屋でしゃべっているようなノリ。「歌ってくれるパートがあったんよ」と、語尾が「~んよ」でしゃべる藤原、初めて観たような気がする。
ずっとこの調子でMCしていたわけではないので、この時は素が出てしまったのだと思う。なんで。オーディエンスを全面的に信用しているので。いつ離れても、来なくなっても、場合によっては反目に回ってもおかしくない不特定多数のファンを、今この瞬間、こうしてライブに足を運んでくれている、という一点において信じ抜く。そういうところのあるバンドだが、その「信じ抜く」気持ちに、ターボがかかっていたのではないか。
朝ドラ『おかえりモネ』の記憶も新しい「なないろ」。何度聴いても美しい、そのたびに「普遍的だなあ」と感じさせるギター・イントロから始まる「ギルド」。増川弘明のMCを、「底が見えるのが早い」などと藤原がいじりまくった(これもめずらしい気がする)メンバー紹介をはさんで、「ここからの3曲は、暗い選曲。しょうがない、暗いバンドだから」という言葉から始まった「イノセント」「Flare」「銀河鉄道」では、増川のアルペジオや藤原のアコースティック・ギター、ピック弾きから指弾きにチェンジしたチャマのベースラインが、繊細な音像を形作る。升秀夫は、「Flare」の前半で、ドラムの代わりにシェイカーを振るなどして、曲に彩りを付けていく。
懐かしい時代の曲も、いくつもプレイされたこの日の中でも、トップクラスの懐かしさだった「リトルブレイバー」を経て、アッパーな曲が並ぶ後半のブロックに突入。バンプの楽曲の中でも、屈指の情報量を搭載したリリックが矢継ぎ早に放たれる、そしてその一言一句が聴いているこっちにグサグサ刺さる「才悩人応援歌」は、この日一番の激しさ。イントロのギターとバック・トラックの響きを浴びると、目の前の景色がバーッと広がっていくような感覚に陥る「Aurora」の中盤では、藤原、「きこえるかー!」とオーディエンスに問いかける。
「全然まだ半分くらいしかやってない、そういう気持ちだったのに、あと3曲で終わっちゃうわ。マジかあ」と言う藤原に、ここまで声を発さずに来たオーディエンスも、思わず「えー……」と漏らす。その控えめな声を受けて、藤原、「3曲で終わっちゃうんだ、びっくりしたなあ。どう思う?」と、さらに問いかける。やむなくみんな拍手で応じると、「どうすることもできないんだね。そんなところ、少しかわいいと思うぜ?」。何を言ってんだ、と思って笑ってしまったが、こういうところにも、今日の藤原の、オーディエンスひとりひとりへの「近さ」が表れているように感じる。
バンプのサウンド面での大きな分岐点になった「ray」では、会場最後方の壁に、この曲の歌詞に合わせて「○✕△」が映し出された。曲終わりでは藤原、耳に手を当てて、オーディエンスの拍手に聴き入る。チャマがイントロでシンセを弾く、そして「君がいるそれだけで 命の全部が輝く」というラインが、バンプのファンに対する気持ちのようにも、ファンのバンプに対する気持ちのようにも響く「ファイター」。8ビートのギター・バンドという、自らの出自を確かめるように奏でられ、歌われた「メーデー」。と、2016年の曲と2007年の曲を並べて本編が締められる。去り際に藤原が叫んだ「ありがとう!」は、オフマイクだったのに、遠くまで届いた。
アンコールは、グッズTシャツに着替えた4人が、客席をバックにしての記念撮影から。そして、今年4月11日に配信リリースされたばかりの最新曲「クロノスタシス」が、ここで披露される。さらに。「まだリリースしてない曲なんだけどさ、新曲でさ。昨日やって今日やんないっていうのは、ないなと思って。昨日、タイトルを言い忘れちゃいまして」と、「木漏れ日と一緒に」というタイトルであることを伝えてから、その曲が始まる。朗々と歌う藤原の声に3人のコーラスが絡む、スケールの大きな曲である。
それから、「今日やった中で、いちばん古い曲をやります」という言葉から始まった「ガラスのブルース」。最初のMCがもっとも効いたのは、この曲だった。イントロや、増川がソロを弾く間奏以外は、ギター演奏をせずにマイクスタンドをつかんで歌っていた藤原は、そのソロ明けのAメロは歌わず、Bメロは歌ったが、続くサビの前半も、声を出せないオーディエンスに歌をまかせた。ハタから見たら、誰も歌ってないおかしな光景に見えるであろうこの時が、今日のライブの中で、もっとも感動的な瞬間だった。人によるか。少なくとも、僕はとても強く、そう感じた。
メンバー3人が去った後もステージに残り、最後にMCをする藤原。BUMP OF CHICKENという看板が大好きで、誇らしくて、それを背負って音楽をやってきた、でもやっていくうちに、いつの間にかめちゃくちゃ重くなってきた。重たくてしんどくてもここまで来れたのは、きみたちが聴いてくれていたからだ。僕たちがいちばんしんどい時に、きみの存在が僕たちを支えてくれた。だからきみたちがいちばんしんどい時に、支えになれるような音楽を作りたい、きみたちがそうしてくれたように。そうやって音楽を続けていきたい──。
と締めたあと、しばらく間が空いた。と思ったら藤原、「だったら、歌えばいいんだよね」と、ギターを担ぎ直す。で、メンバー3人が戻って来て、「くだらない唄」が始まった。照明は白一色で点きっぱなしだったし、本当に急遽追加されたの演奏だったのだと思う。
4人で並んでつないだ手を挙げ、大きくお辞儀する4人に、オーディエンスはこの日いちばん大きな拍手を贈った。

取材・文=兵庫慎司 撮影=立脇卓

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