初披露曲を携え“第2のホーム” ザ
・シンフォニーホールに登場 『三浦
一馬キンテート 2022 熱狂のタンゴ』
インタビュー

ピアソラ没後30周年記念プロジェクトとして、三浦一馬が自らのキンテート(注:英語の「クィンテット」=五重奏団)とともにザ・シンフォニーホールでコンサート『三浦一馬キンテート2022 熱狂のタンゴ』をひらく。三浦一馬キンテートは、バンドネオンの三浦のほか、ヴァイオリンの石田泰尚、コントラバスの黒木岩寿、ギターの大坪純平、ピアノの山田武彦から構成されている。
――キンテートのバンドネオン、ヴァイオリン、コントラバス、ギター、ピアノという編成はユニークですね。
ピアソラが考案した編成です。不思議な編成ですね。突然、エレキギターが出てきたり(笑)。でもこれが本当にうまく溶け合うのです。4人でも、6人でもダメ。5人がポイントです。5人それぞれ、グラデーションのような棲み分けをしています。コントラバス、ピアノの左手、ギターなど低音に重心があり、その安定感の上で、ヴァイオリンとバンドネオンが気持ちよくメロディを歌うことができます。また、グルーヴ感やフットワークの軽さもあり、ピアソラは絶妙なところを狙って作ったなあと思います。
ピアノの左手とコントラバス、ピアノの右手とギターというように、誰が何をやっているかに注目するだけで、キンテートの構造が見えてきます。そして、ヴァイオリンやバンドネオンの歌いまわしを聴いていただければ、うれしいですね。
ピアソラの場合、楽譜はそんなに残っていないのですが、彼の演奏の音源がたくさん残っているので、それを原典として、なるべくオリジナルに忠実に楽譜を作っています。
――「三浦一馬キンテート」はいつから活動していますか?
2010年、2011年頃からでしょうか? 正式にみんなで組みましょうといったわけではありませんが、もう10年以上、ずっとこのみなさんでやっています。
――メンバーはどのように集めたのですか?
ご縁があり、関わりのあった方々ですね。石田さんと黒木さんは、僕が17歳で、神奈川フィルでオーケストラ・デビューしたときからご一緒しています(注:石田は神奈川フィルのソロ・コンサートマスター。現在、東京フィルの首席奏者である黒木は、当時、神奈川フィルの首席奏者だった)。山田さんは、タンゴに限らず、何が来ても大丈夫なピアニスト。常に全体を見渡して、見守ってくださる、安心感があります。大坪さんは、もともとクラシック・ギターや現代音楽を専門とされていますが、最初はエレキギターからギターを始めたそうです。
――今回のプログラムについて教えてください。
ザ・シンフォニーホールは、キンテートや室内オーケストラ(東京グランド・ソロイスツ)などで毎年のように演奏させていただいています。いつも来てくださるお客様へのお礼として特別なことをやりたいと思い、新しいレパートリーを入れました。「ブエノスアイレスの四季」などの定番も良いですが、ピアソラにはまだまだこんな曲がありますよ、という意味で、初披露します。それらが次世代のスタンダードとなって聴かれればうれしいなと思います。
――「ルンファルド」、「レビラード」、「カリエンテ」、「ムムキ」などですね。
「ルンファルド」は、ブエノスアイレスだけで通じるスラングという意味です。ピアノとコントラバスが4分音符でずっと刻んでいくオスティナートにいろんな楽器が絡んでいきます。
「レビラード」と「カリエンテ」は、ピアソラでは珍しく長調の曲です。「レビラード」は、変り者、ひねくれ者という意味です。ピアソラ自身を表しているという説もあります。「カリエンテ」は英語でいうホットという意味で、バスがどんどん巧妙に転調を繰り返していきます。非常にチャーミングな曲です。
「ムムキ」の意味は、いろいろな説がありますが、よくわかりません。今回のコンサートの最後に持ってくる10分ほどの大曲です。エレキギターのカデンツァがあり、ピアノのカデンツァがあり、これぞピアソラという官能的なメロディが続きます。
一つのコンサートで1、2曲、新しいレパートリーを入れるということはありますが、これだけの数を入れるのは我々として珍しいことです。
――「ミケラジェロ’ 70」や「悪魔のロマンス」はどうですか?
「ミケランジェロ‘70」は昔やって、近年また弾いています。「悪魔のロマンス」は、去年くらいに初めて演奏しました。
――ザ・シンフォニーホールについてはどのような印象をお持ちですか?
ザ・シンフォニーホールは、素敵なたたずまいの、品のあるホールですね。音がきらびやかに響いて、行くたびにいいホールだと思います。アーティスト・ラウンジからステージまでの動線に、いろいろなオーケストラやユニットのシールが貼ってあるのも好きですね。
――最後にメッセージをお願いいたします。
ザ・シンフォニーホールは、自分にとって第2のホームのように思っています。温かく迎えてくださって、ありがとうございます。今年はピアソラ没後30周年という節目でもありますので、我々にとって初めてのレパートリーを携えて、うかがいます。いつも応援してくださっている皆様に、このときが初めてという、その新しいレパートリーの披露をさせていただくことになります。是非、ご期待ください。
取材・文=山田治生

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