入門50年を記念した『桂雀三郎独演会
』開催、「長生きも芸のうち」「まだ
まだ自分の落語を面白いものにしたい
」と若々しい意欲を見せる

入門50周年を迎えた桂雀三郎が11月23日(火・祝)、サンケイホールブリーゼにて、恒例の独演会『サンケイホールブリーゼ米朝一門落語会シリーズ2021入門50周年「桂雀三郎独演会」』を開催する。
雀三郎は1971年3月に桂枝雀に入門。古典落語の稽古に励む一方で、1986年からは「雀三郎製(じゃくさんせい)アルカリ落語会」という新作落語の会を7年にわたって開催。中島らも作の「明るい悩み相談室」がその代表作にもなった。また、桂雀三郎withまんぷくブラザーズとして音楽活動もおこない、1996年には「ヨーデル食べ放題」が大ヒット。今ではメロディの一部がJR西日本大阪環状線鶴橋駅の発車メロディにも使われている。
先日、独演会に向けての取材会がおこなわれ、入門から50年を記念して開催される独演会や今後の抱負などを語った。
桂雀三郎
「改めて考えると早いような遅いような、長かったような短かったような気もするし、自分なりには一生懸命やってきたつもりやったんですけど、根がズボラなもんで、うちの師匠とかを見ていたらもっとやらなあかんかったんでしょうね……(笑)」と笑顔を浮かべながら、飄々と50年を振り返る雀三郎。
その一方で、「50年間、大した病気も怪我もなくやってこれて大変幸せなことやったと思います。まだ元気で、まだまだやれると思っていますので、長生きも芸のうちやから、新しいネタもやれるやろうし、もっと変わっていけると思っております。まだまだ自分の落語を面白いものにしたいと思います」と若々しい意欲を見せる。
かつておこなっていた新作落語の会、雀三郎製アルカリ落語会については、次のように語る。
「中島らもさんの「明るい悩み相談室」は、アルカリの進路を決めたようなところがありましたね。そんなようなネタは思い起こせばいろいろあります。桂雀三郎withまんぷくブラザーズもこんなことになるとは思わなかったですけど、アルカリをやってたからですかね。アルカリは何でもありの会やったので、おかげで芝居に出させてもらったりして、それで(まんぷくブラザーズのメンバーの)リピート山中さんとかとも知り合って。アルカリみたいなもがいている会をやったおかげで、思いもよらなかった仕事もできたように思います。映画に出してもらったり、なんか知らんけど音楽やることになって、音楽もちょっと仕事になっているので、ありがたいと思っています」
11月23日(火・祝)の独演会では、「宿替え」「宿屋仇」「寝床」の三席を披露する。
「宿替え」は引っ越しにまつわる騒動を描いたもので、うっかり者の亭主の言動が笑いを誘う。師匠の桂枝雀が得意とするネタでも知られ、雀三郎も内弟子時代に稽古をつけてもらい、とても思い入れがある噺という。
「「宿替え」は本当にバカバカしいネタです。おやじさんが面白いので、それをうまく演出できたらと思います。僕が内弟子の時は違うかったけど、後から聞いた話によると師匠は晩年、「宿替え」から稽古してはったそうです。師匠がその日の調子のバロメーターにしてはったみたいで。嫁さんを出さないとか、一人でしゃべるとか、師匠はいろんなやり方をしてましたね。私はそこまでやっていないですけど、おっちょこちょいで頼りない、そのくせ嫁さんには偉そうに言いたいことを言うてるあのおやじさんが好きなので、ちゃんと演じるようにと思っています」
「宿屋仇」は大阪日本橋の宿屋を舞台に、一人の侍と伊勢参りの帰りの投宿客による騒動を描いている。三味線や鳴り物が入る上方落語特有の演出「ハメモノ」が入っていることから選んだという。
「大阪では珍しい、侍が出てくる落語で。その割には堅苦しくないし、賑やかです。難しいと言えば難しいけど、ネタの構成とかよく出来ていて、大変おもしろい。楽しんでもらえるネタやと思います」
「寝床」は、店の大旦那が開く素人浄瑠璃の会の模様を描いた噺で、雀三郎も浄瑠璃の稽古をしていたことから、登場人物の気持ちがわかるのだとか。
「「寝床」は僕が内弟子の頃、師匠がやりだしはったんです。ずっとお稽古してはりますから、嫌っちゅうほど聴きました。だいぶん経ってから、やってみようかなと思って繰り出したら、ほとんど覚えていたんです。もちろん師匠とはちょっと違うところもあるんですけど、耳に残っているので、基本的なところはだいたい覚えていて。それから私なりのギャグを足したりしているので、だいぶん変わっていると思いますが、これも賑やかなネタですね。僕も浄瑠璃の稽古もやっていて、実際にお寺で浄瑠璃を語って、お弁当を出すという「寝床の会」というのもやりましたし、「寝床」に出てくる旦那の気持ちは分かります(笑)」
改めて落語の魅力について尋ねると、「落語はおしゃれなもの」と答えた。
桂雀三郎
「僕らが入門した時は、米朝師匠とかが出てきはった時で、その前まで落語というのは古臭いというイメージがあったみたいですけど、米朝師匠がテレビの演芸番組で「天狗裁き」「京の茶漬け」「猫の茶碗」などをされていて、それを観て「サゲ(オチ)がしゃれてんなー」、「落語はおしゃれやな」と思った人が多かったんです。私もそのうちの一人で、その頃に各大学、高校……小学校にまで落研ができたくらい、すごいブームになりました。僕は今でも僕も落語はおしゃれやなという印象が強いです。一人で座って、話を運んでいって、最後にオチがついて、「あー、しゃれとる」となるものが多い。改めて落語は洗練された芸やということを世間にもっと伝えたいと思います」
今後の抱負については、「もっと上を目指そうという気だけはあります。過去を見直しながら、ちょっとでもより面白くやりたいです」と雀三郎、落語への追求心はますます高まっている。
取材・文・撮影=Iwamoto.K

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