L→R 原 昌和(Ba)、川崎亘一(Gu)、木暮栄一(Dr)、荒井岳史(Vo&Gu)

L→R 原 昌和(Ba)、川崎亘一(Gu)、木暮栄一(Dr)、荒井岳史(Vo&Gu)

【the band apart (naked)
インタビュー】
エレキとは違う難しさがあるけど、
それがすごく面白い

the band apartのアコースティックユニット・the band apart(naked)が新曲3曲を含む全8曲を収録した、約3年半振りのアルバム『3』を完成させた。彼らの絶妙なアレンジセンスはもちろん、新たなチャレンジが詰まった新作について木暮栄一(Dr)に話を訊いた。

ネイキッドだと
縛られるものが少ない

昨年のコロナ禍以降のthe band apart(以下、バンアパ)の動きから聞かせてもらえますか?

結成20周年を記念した板橋での野外音楽フェス『AG FES』を筆頭に、いろいろなものが中止になりました。もともと2020年にバンアパとしてアルバムを出そうとしてたんですけど、こういうムードで出すのもどうかなってことで、8月から4カ月連続シングルリリースってかたちに方向転換したんです。あと、我々は事務所兼スタジオがあるので、月イチで配信ライヴやトークをやっていました。この状況ばっかりはどうしようもないので、いち早く配信に切り替えて活動してましたね。

そんな中、the band apart(naked)(以下、ネイキッド)の3枚目のアルバム『3』が制作されたわけですが、どんなきっかけでスタートしたんですか?

昨年、組んでたツアーが全飛びしたんですね。自分らで会社をやってるので、今年はコロナ禍に配慮しながらでもライヴをやっていかないとヤバいって話になってたんです。ただ、ツアーをやるにしても音源をリリースしたほうが分かりやすいし、ネイキッドのほうが時節柄フィットするかなっていうのは考えましたね。

今作ではネイキッド用に新曲も作ったそうですが。

実はネイキッド用の楽曲っていうのは、前にも会場限定CDで作ったことがあったんです。もともとは最近やらないうちらの古い曲に光を当てるみたいな側面から始まったけど、それ以上にネイキッドなら縛られるものが少ないことに気がついたんです。バンアパは4人だけでがっちりやるって感じだけど、ネイキッドはもう少し風通し良くやれるなって。アコースティックという縛りがあるだけで、鍵盤とかストリングスを入れてもいいし。そういうのもあって、過去曲だけじゃなく新曲があっても面白いと思ってやることにしました。「ラブレター」と「夢太郎 (Acoustic)」、最後の曲の「Where the light is」が新曲です。

あとの選曲はどのように選んだのですか?

「The Sun (Acoustic)」と「Snow Lady (Acoustic)」は、もともと2011年に震災のチャリティーシングルとして会場と通販限定で出した曲なんです。僕らも思い入れのある曲だし、今までのアルバムにも収録されてないから、10年ってタイミングを機にネイキッドでやろうと。あと、「Cosmic Shoes 2」は、それこそネイキッドの原型みたいな感じなんです。

「Cosmic Shoes 2」がネイキッドの始まりだったんですか?

そうなんです。まーちゃん(原 昌和の愛称)が一時期身体を悪くしてバンド活動ができなかった時、俺と荒井がカホンとアコギでライヴをやってたんですよ。その時、最初に原曲をリアレンジしたのがこの曲だったんです。でも、なぜか今まで収録してなかったので、今回やることにしました。「プリテンダー (Acoustic)」は月イチで配信ライヴをやっているうちに、だんだんやる曲がなくなってきてレア曲を掘り出してみたんです。で、いい感じだったからそのまま入れました。「Foresight」は、さっき言ったネイキッド用の楽曲として会場限定で出してた曲です。

なるほど。では、新曲に触れながら話を進めていきましょう。「ラブレター」はファンキーなアップチューンですね。

これは荒井が書いた曲なんですが、キャッチーでいい曲だなって思いましたね。最近の荒井の感じというか、「夜の向こうへ」(2013年4月発表アルバム『街の14景』収録)のネイキッド版なのかなって思ってます。最初は歌詞がちょっとフワッとしてたので、荒井とふたりで分かりやすくてキャッチーな言葉があったらいいんじゃないかって話してる時に“ラブレター”って言葉が出たんです。言ってみたら、ラブレターって死語じゃないですか。若い子はもう告白を手紙で送らないでしょ?(笑) あったとしても、ギリギリ俺ら世代までかなと思うので、そういう世代感が出た言葉が面白くて入れたんです。

歌詞は直接的じゃないですけど、《続く long long distance》《また会えれば その時は言えるかな》とあり、コロナ禍以降にできたような印象を受けました。最後のフレーズの《いつか辿り着ける》ももどかしさの先にある希望を見てる感じがします。

荒井が書いたので僕は分からないですけど、そうかもしれないですね。聴く人にそういうふうに受け取ってもらえたら嬉しいです。

ネイキッドを始めてしばらく経つ中で、エレキとは違うアコースティックでの表現の面白さはどんなところに感じてますか?

やっぱりアコースティック楽器なので、演奏のタッチがすごく出るんです。エレキだとごまかせるけど、アコースティックはすごくシビアだから、それがやってて面白いですね。

より繊細なニュアンスが大事になってくると。

そう。“the band apart(naked)”って名前は原がつけたんですけど、なかなか言い得て妙だったなと。やってて生々しいんですよね。気楽にやれるんだけど、エレキとは違う難しさがある。でも、それがすごく面白いし、楽しいんです。

挑んでる感覚もありますか?

ありますね。今回の曲で言うと、「夢太郎」は相当挑んだ感じが出てます。

そんな「夢太郎」について聞かせてください。

これは俺が作った曲ですね。普通はアコースティックでやらないだろうってノリの曲を、あえてアコギでやったら面白いと思ったんです。洋楽ってどこがサビかはっきりしない曲が多いですけど、“ここがサビなのかな?”って塊でできてる曲を作りたいと。コンセプトとしてあったのは、うちの5歳の子供とコロナ禍になって遊ぶ機会がすごく増えて…女の子なんですけど、公園に行くと清々しいほど無鉄砲なんですよ。見ていて“お前、そこまで木登るのか! 降りれないぞ”と思ったり、滑り台を横から飛び降りようとするとか(笑)。それに感動したんですよね。そういうのって、歳をとればとるほどなくなるじゃないですか。

安全を考えちゃいますからね。

そういう今の自分と真逆な感じを音楽に変換できないかなと思ったんです。イントロの無鉄砲な感じだったり、洗練されてないダサカッコ良いものになればいいなと。

歌詞も“狂ったレインボウ”とか無鉄砲感はありつつ、前向きさを感じますね。

そうですね。今ってひどいニュースには事欠かないじゃないですか。そこにシリアスに向き合ったものより、俺が5歳児の無鉄砲さに感動したような清々しいバカっぽさのほうが活力になる気がするんです。これもふざけてるっぽい歌詞ですけど、根本的には子供が希望の塊みたいなのと同じように、ほっこりしつつも明るくなれるものになったらいいなと思って言葉を選びました。

では、温かいメロディーが響く「Where the light is」は?

荒井が作った曲で、もともとのデモにはピアノが入ってたんです。最初はギターで弾くって言ってたけど、ネイキッドは何をやってもいいし、“ピアノを入れちゃおう”って三浦康嗣(□□□(クチロロ))に弾いてもらったんです。歌詞は日本語で作ってたけど、ちょっと内容がエモい感じなんですよ。

困難が教えてくれる大切なものというメッセージが詰まってますね。

それをまんま歌うとクサい感じになっちゃし、恥ずかしくない日本語にすると言いたいことがぼやけちゃうんです。なので、英語で作り直しました。英語は耳慣れしてるし、興味ある人は歌詞カードを見れば意味も汲めますしね。
L→R 原 昌和(Ba)、川崎亘一(Gu)、木暮栄一(Dr)、荒井岳史(Vo&Gu)
アルバム『3』

OKMusic編集部

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