首振りDolls、
マンスリーインタビュー第23弾は
ナオ vs 草野華余子!

ライヴハウスでライヴを
やるために頑張っている。
それがあるから頑張れる。

ナオ

ナオ

――まだまだ先が見えない状況にあって、まだ過去形になっていない現状を、2人はどう在りたいと思ってますか?

ナオ:たしかにね。完全にシーンが昔の景色の様に戻るのは、2年以上、下手したら5年はかかるのかもねってとこですよね。

草野:そう。もうみんなそういう現実があったことを、忘れかけてるところもある気がしてね。サブスクの時代と言われ、CDの売り上げが伸び悩んでいた中で、更にこういう状況が追い討ちになって、CDショップにも足を運ばなくなってしまった現状、ライヴハウスが生活の日常にあったのに、そこに行けない状況が続いて、自分の生活の日常から消えてしまったことで、それがいつしか当たり前になってしまって、だんだんみんながライヴハウスから離れていく未来になってしまうかもしれない。だからこそ、私は自分からCDショップに敢えて出向く様にしているし、ライヴにも行ける限り行こうって思っているんです。

――そうね。私たち編集者とかライターという立場でも思うところはあって、こういう時代だからこそ、本当にいいものを作りたい、残したいって思う様に改めてなったの。スピード感重視で即出しというものが主流になっていったりしていった中で、それが当たり前になってしまった中で、ちゃんとじっくりと時間をかけて作った、一生物をしっかりと作っていくべきときなんじゃないかって。

草野:本当にそう思いますよ。本当に。

ナオ:そうかもしれないですね、本当に。そういう意味では、首振りDollsも今回本当に妥協することなくジャケットや写真やデザインに気持ちを込めたアルバム(3月17日リリースの『ドラマティカ』)を作ったつもりだし。

――4月からはその『ドラマティカ』の個展ライヴもするんだよね。『ドラマティカ』を聴いてくれたクリエイターが表現するアートワークの世界を展示する、新しいライヴの形だよね。

ナオ:本当にお力添えを頂いたクリエイターの皆さん(ジャケットイラストはカネコアツシ。ブックレット・宣材オフィシャル写真は写真家の寫眞館GELATIN。デザインはcali≠gariのギタリスト・桜井青が手掛けている)は本当に素晴らしい方達なので、是非とも足を運んで欲しいです。ツアーらしいツアーが組めない分、首振りDollsの世界に空間ごと連れていけたら良いなと思っています。新しいリリースツアーの形を模索する中で、素晴らしい方々にお力添え頂いているので作品展示という見せ方で伝えられる事があるのかなと。でも、コロナが無かったとしても、本当に世の中の流れって速くて。平成に生まれた自分たちすらも、もう周りは新しいことだらけになっていて。昔はレコードやCDじゃなくちゃ音楽が聴けなかったのに、今はスマホ1つあれば何だって出来ちゃう。映像も音楽も情報も何でも手に入っちゃう。そんな世の中で、ロックバンドは順応して行かないといけない。新しい形になって行かないと、今まで通りを求めていたんじゃダメだなって思うんですよね。元どおりの日々が戻って来るのが一番だし、私は本当に一番ライヴハウスっていう場所が好きだし、そこから離れることはないけど、変わっていかなくちゃいけないのかなっていう思いもあって。ただ、いかん私達バンドマンは、ライヴハウスでライヴをやるために頑張っている訳で。それがあるから頑張れる訳で。それがしたいから音楽をやっている訳で。

草野:そうですよね。バンドはライヴハウスで観たいもんなぁ〜。

ナオ:ライヴが本当に好きだし、ライヴハウスが好きだし、ライヴハウスでお客さんとグチャグチャになるのが好きだし。それが生き甲斐だし、そのために生きてるから。変わらなくちゃいけないって思っているけど、まだ迷ってるのかもしれないです。

――変わりたくない?

ナオ:うん。本当は変わりたくない。

草野:そうですよね。あのライヴでの熱量があってこそ首振りDollsってことですもんね。

ナオ:そう。暴れたいし、暴れさせてあげたい。頑張って制限規制に沿って観てくれてるお客さんを観てると、本当に暴れさせてあげたいな、全てを忘れさせてあげたいなって思うし、暴れずに規則守って観てくれてるのを見ると、本当にたまらなく愛おしくなるんですよね。

草野:あぁ、その感覚分かるなぁ。ロックバンドのライヴって、お客さんと一緒に作るという大前提があるからね。シンガロングありきで作ってる曲とかもありますもんね。

ナオ:そうなんですよ!私、1人で歌ってますもん。寂しい、、、、。

草野:あははは!笑っちゃいけないけど、本当にそういう状態ですよね!私は、音楽というのは、作家活動もシンガーソングライター活動も、全部自分にとっての娯楽なんです。そこに隔たりはないんですけど、作家として曲を作る時は、作るまでにすごく資料集めをするんですけど、自分の曲を作る時には全くそういうのをせずに作るんですよね。

――作家として音楽を作るときは、タイアップありきで作ることが多いからね。

草野:そう。シリーズのアニメだったら、前作がこれくらいのエイトビートで、構成されている楽器がこれとこれとこれだってなったら、そこは絶対に避けて作るんです。歌って下さるアーティストさんにとってもそれは良いことではないから。同じアニメでも印象を変えていったほうがいい。自分の中で、楽器の座組みの段階で色々と考える。さっき、作家もシンガーソングライターも、どっちも100%100%って言ったけど、どっちが作る時に気を遣っているかって言ったら、確実に作家として音楽を作る時ですね。

――なるほど。ナオは首振りDollsとして作詞作曲をするときと、自分の弾き語りの為に作詞作曲をするときと意識は変えていたりするの?

ナオ:どっちも好きなことしかやってないかな。誰かに曲を書くということをまだしたことがないので分からないですけど、きっと書くことになったら、めちゃくちゃ考えると思うけど、今は自分が歌う為にしか作っていないから、本当に思いのままに自分勝手に書いてますね。

草野:自分で歌われる時に、シンガーの自分とライターの自分を解離させて、自分が歌いたくないなって思う気持ちを、ライターの自分が歌うことに課したりすることってあるんですか?それとも全く1人の人格ですか?

ナオ:あぁ、どうだろう、、、。メジャーデビューのタイミングとかでは、もう1人の自分っていう存在を考えさせられましたね。

草野:分かる!考えさせられますよね、メジャーデビューのタイミングって。

ナオ:はい。もう1人の自分が“おいおい、売り物作ってんだから、もうちょっと考えた方がいいんじゃない?”って言ってた気がする。

草野:うんうん。今までの作り方でいいのか?って、考えさせられたりしますよね。

ナオ:はい。もう1人の自分が“おいおい、売り物作ってんだから、もうちょっと考えた方がいいんじゃない?”って言ってた気がする。

草野:うんうん。今までの作り方でいいのか?って、考えさせられたりしますよね。

ナオ:でも、結局自分の曲だし、自分の言葉だから、もう1人の自分に言われたことを聞きながらも、いつもと変わらない“自分の作品”になったと思いますね。一瞬そういう葛藤はあったけど、そこからは逃れられたかな。今は1つですね。出てくるものを素直に出してる感じです。

草野:アーティストってそうあるべきだと思うので、それが正解なんじゃないかなって思いますけどね。何かに適応しようとか、融合してやっていこうとした瞬間に急に作品が良くなくなっちゃって、メジャーから2年で首を切られるっていうアーティストはたくさん見てきているので、ワガママなくらいに、ディレクターさんやプロデューサーや事務所の言うことを突っぱねてでも貫くくらいの強さは、今の時代必要なのかなと思いますね。でも、それを言うには、それだけの結果を残さないとですけどね。私、一時期ライティングに枯渇して、人の為にずっと曲を書き続け過ぎて、曲が書けなくなったことがあったんですよ。4年前くらいだったかな。音楽自体を聴けなくなっていたんです。でも、音楽で苦しんでいた時も、助けてくれたのは音楽だったんです。サブスクリプションでずっと音楽を聴いていられるこの時代に生まれたから、死ぬまでずっと音楽を聴いていられるんだ!私、音楽が書けなくなっても、こんなに音楽が好きだから、ずっとこの先も楽しく生きていける!って思ったら、その瞬間に吹っ切れたというか。そこを乗り越えた時に、もう大丈夫だって思えて。そこからはほぼ1つの案件を頂いたら、30分くらいでメロディが書けるようになったんです。私、一筆書きなんで。イメージだけして、目を開けて、ギターを弾いて、80秒くらいのテレビ尺を自分で歌って、それを最終的にちょっと修正して提出。情報を沢山体に入れておいて、打つ瞬間に瞬発力で打ち返すっていう。そういうのが私の作曲法かな。

ナオ:30分くらいで作った曲の方がいい曲っていうことありますもんね!

草野:そうなんですよね。まぁ、時間かけて作ったものもすっごく良く出来たなって思えることはありますけどね。爆発的にみなさんに聴いていただいている曲は、やっぱ瞬発力で書いた曲かなぁ。

ナオ:一筆書きで書いた曲が良いって、すごく分かります!

草野:そこ一緒?

ナオ:ツルッとね。

草野:そう!ツルッと出てきたやつがいいんですよ(笑)。Aメロだけで横たわってるやつとかもいます?

ナオ:いますよ(笑)。サビだけで横たわってるやつもいます(笑)。

草野:ところで、首振りDollsさんはヴィジュアル系ってわけじゃないんですよね?ロックンロール?

ナオ:いや、特に自分達ではカテゴライズしてたりはしないです。聴いて下さる方々がどんなジャンルを好きかってところだとも思うので、特に自分達的には何処と線を引くとかはなくて。

草野:なるほど。みなさんお顔立ちもよろしいから、何処にカテゴライズされるんだろう?って思ったりして。音的にはたしかに往年のロックを感じるところもあり、硬派な感じですもんね。

ナオ:お顔立ちもよろしくて(笑)!? ありがとうございます! すごくサラッと褒めていただけて嬉しいです(笑)! 首振りDollsは何処にカテゴライズされるんでしょうね?正直、何処にも属さない感じというか(笑)。自分達的には全くそこはこだわりないんですけど、お客さんも迷ってる感じがします(笑)。どう応援していいか分からないんじゃないかな?

草野:あははは。“ん? 咲いていいの?ダメなの?”って感じなのかな(笑)。

ナオ:あははは。そうでしょうね、まさしく(笑)。一応首振りDollsは、ロックンロールバンドとして結成したんですけど、私自身が音楽大好きで、自由に楽しむのが好きなので、聴いてくれる人たちが楽しく聴いてくれたらそれでいいんです!全然、咲いて下さって大丈夫です(笑)。

草野:なるほど。密室系のバンドとは確かに親和性ありますよね、首振りDollsさんの音とか歌詞って。密室系の音って、すごくディープで重くて歌詞も文学的だったりするけど、私の中ではヴィジュアル系っていうカテゴリーに括ったことはないですね。首振りDollsさんも、そういう立ち位置のバンドかもしれないですね。

ナオ:なるほど。聴かれる側からは、そういうイメージなんですね。草野さんのルーツって?

草野:すごく遡れば、少年隊とか安全地帯とか。歌謡曲と呼ばれる音楽が好きでしたね。小学校の時にB’zにハマって、中学生でL’Arc〜en〜Cielにハマって、そこからJ-ROCKにどっぷりでしたね。色々と聴くようになったのは、L’Arc〜en〜Cielのメンバーが聴いてる音楽を自分も聴いてみたくて追求するようになってから。洋楽も聴くようになって、モトリー・クルーとかを知って。北欧系のポップソングを聴いてるってのを聞いて、そこも追求してみたり。友達が聴いてたレッド・ホット・チリ・ペッパーズやリンキン・パークを聴くようになったりって感じでしたね。そこから一気に広がっていきました。マックス・マーティンっていうプロデューサーがいるんですけど、その人が作るトラックが好きになって、そこからクレジット買いするようになったんですよ!今みたいに全部検索したら出てくる時代じゃなかったから、MTVを全部録画して観て、マックス・マーティンの手掛けた作品を片っ端から聴いたんです。ナオさんは?

ナオ:私は80年から83年くらいのジャパコアなんですよね。基盤はハードコアなんです。スターリンとか大好きで。

草野:そっちなんですね。

ナオ:そうなんです。そこからグループ・サウンズまで遡って。遡っていく中でピンキーとキラーズに当たって、「恋の季節」にハマって、そこからオルガンサウンドがすごく好きになって、60年代の海外の曲とか聴く様になって、ザ・ソニックスとか大好きになって。どんどん音質の悪い方へ悪い方へってハマっていったんです。でも、普通にポップスも大好きだったから。どこがルーツなのかな? ルーツと言ったら、やっぱり83年組なのかなぁと思いますね。

草野:なるほど〜。深いなぁ。アナログですね。
ナオ:そうなんです。大好きなんです、アナログ。

草野:バンドのカラーとしてアナログなロックを歌っていくって、すごくいいと思います。この時代だからこそね。

ナオ:どんどん居なくなってってますもんね。

草野:そうですね。今、同期がすごいですもんね。私も質感にはこだわっていきたいなって思います。弾き語りとかもずっと続けていきたいですしね。

ナオ:そうですね。私、ドラムボーカルなんですけど、クリックに萎縮しちゃってるドラマーが多いなって感じることが多々あって。そういうの見てると、私はもっと人間らしい音楽をやりたいなって思うんですよね。古いって言われるのかもしれないけど、そこはずっと貫いていけたらいいなって思ってます。

草野:すごくいいと思う。1月27日にリリースされた、"カヨコ"から本名である"草野華余子"に改名して初となる1stフル・アルバム『Life is Like a rolling stone』は、シンガーソングライター界隈で知り合った仲間と一緒に作らせてもらった、1枚なんです。アルバム・コンセプトは"純J-POP"なんですけど、これが遺作になってもいいなって思えるくらい、大切にしたい音作りが出来たので、是非聴いてもらえたらと思います。1箇所も後悔して無いので、聴いて欲しいですね。

ナオ:すごい。本当にすごい。なかなか言えないですよ。これが遺作になってもいいって。1箇所も後悔して無いって。素晴らしいです!本当に! 

草野:あははは。ありがとうございます。でもね、今は作り上げた瞬間の気持ちから更に前に進んでいるので、もっとこれを超える作品作ってやる! っていう気持ちになってますけどね(笑)。

ナオ:カッコいいな。すごい。

草野:めっちゃ今日褒めてもらうなぁ(笑)。すごくいい対談でした!またライヴが始まったら、是非遊びに行かせて下さい。

ナオ:是非! 私も遊びに行かせて下さい! なんか、今日、すごく元気もらいました! 本当にありがとうございました!

草野:こちらこそです! ありがとうございました!

取材・文:武市尚子
動画撮影&写真:DOLL RECORDS Co., Ltd.

【草野華余子 プロフィール】

“ただのオタクですが、勇気を出してロックやってます”

大阪府出身・東京都在住、シンガーソングライターときどき作詞作曲家。3歳の頃からピアノと声楽を始め、中学生の頃に出会ったJ-ROCKシーンのバンドサウンドに衝撃を受け、18歳の大学進学を機にバンド活動を始める。バンド解散後、2007年頃から「カヨコ」として活動を開始、2019年に本名である「草野華余子」に改名。

包み込むように優しく人間味溢れる歌詞と、卓越した唯一無二のメロディセンスが持ち味。聴く人の背中を押すような、力強いライヴ力にも定評がある。 自身の活動に加え、そのメロディの力強さが認められ、数多くのアーティストやアニメ作品への楽曲を提供。2019年にリリースされたLiSA「紅蓮華」の作曲を手掛け、一躍注目を集めている。

2021年には草野華余子として初のフルアルバム「Life is like a rolling stone」が発売。シンガーソングライター兼作家という"二足の草鞋型アーティスト"として、より一層の活躍が期待されている。

草野華余子、ナオ
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草野華余子、ナオ
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OKMusic編集部

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