【宮野真守 インタビュー】
ウルトラマンだからこそ
発信できるメッセージを届けたかった
ピンチのときこそ新しいことを探して
可能性を広げていくべき
カップリングの「Beautiful Doll」は宮野真守ファンにとってはたまらない、もう蕩けてしまいそうなラヴソングなので、これがアニメのタイアップというのは意外でした。
僕が出演している『Levius レビウス』の瀬下寛之監督ご本人から、“ぜひTVアニメでは宮野さんにエンディングテーマを”とオファーをいただいたんです。瀬下監督とは以前も違う作品で音楽作りをさせていただいて、その時に“宮野さんの作品へのアプローチがとても好きだし、すごく真摯に向き合っている”と言ってくれたのが、何より嬉しくて! 当然、今回のオファーもとてもありがたいお話ではあったんですが、自分が演じているDr.クラウンはいわゆる敵役なので、最初はどういう方向性で歌っていけばいいのかイメージできなかったんですよ。作品自体はすでに配信していて、今回地上波放送するにあたって新たにエンディングテーマを作るという流れだったから、アフレコ自体は随分前に終えていたんですね。なので、監督とやり取りをしながら、もう一度自分の役を考察して作っていきました。Dr.クラウンの本心みたいなものを突き詰めていったら、そこに何かヒントがあるんじゃないかと。
Dr.クラウンの本心?
はい。マッドサイエンティストなキャラクターで、かなりエキセントリックな人なんですけど、彼の立場になって考えてみれば、真の美、真の平和、真の快楽を追い求めている気持ちの根っこにあるものって、とても純粋だったりするんですよ。だったら、そこを抽出すれば“真実の愛”という『Levius』の核心を突いたものになるんじゃないかと思ったんです。ただ、それを僕の言葉で書いてしまうとDr.クラウンの想いが強くなるので、より解釈の幅を持たせるために英詞をメインにしました。英詞であれば意味を理解しようとする時に、いったん翻訳して解釈する作業も入るので、受け取り手次第で世界観も広がるんじゃないかなと思って。
行きすぎた純粋さは、時に人を狂気に走らせますもんね。ゆえに、根っこのピュアな部分だけを抽出すると、これだけ美しい曲が生まれるという。
その普遍性みたいなもの、愛の素晴らしさを伝えたかったんです。特に日本語だけのブロックでは、こんな混沌とした世の中だからこそ生まれた愛を歌っていて、それもこの時期の制作だから出てきたワードになっていると思いますね。
他のパートが英詞だからこそ、より想いの強さを感じられました。しかし、愛する者への普遍の想いを歌っていながら、その対象を“Doll”と呼んでいるところが…
子供に対して“お人形さんみたいに可愛い”とかっていう表現をすることもあるとはいえ、Dr.クラウンのフィルターを通すと、ちょっと狂気じみたものになるという(笑)。
それだけ『Levius』という作品、Dr.クラウンというキャラクター、そして宮野真守のアーティストとしての力が、高次元で融合しているということですよね。3曲目の「HELLO!」はYouTubeでの動画配信プログラム『Road to LIVING!』のテーマソングで、制作の模様を打ち合わせの段階からYouTubeに公開しているのが新しい!
もう一曲のカップリングをどうするかって話になった時に、“YouTubeでテーマソングを作っては?”という案をスタッフにもらい、それならポップでハッピーな曲をSTYさんと一緒に作りたいっていうことになったんです。その結果、打ち合わせで出てきたワードを全部拾ってくださって、完璧な詞と曲を作ってくださったから、やっぱりSTYは天才だなと。“アイドルポップを作りたいね”ってSTYさんと話してた、あの打ち合わせをYouTubeで観ていた人からすると、“あの時の話に出ていた要素がこんなに素晴らしいかたちで作品になるんだ!?”って驚いてるんじゃないかな?
制作過程をファン自身も観ているわけですから、それだけ楽曲に対する愛着も強くなりますよね。
これも音楽制作の新しいスタイルですよね。YouTubeって好きな時間に好きなように観れるから、変な押しつけがましさがないのがいいんですよ。チラッと打ち合わせを覗き見ちゃったくらいの感じで、深いところまで知ってもらえる。撮影する方からしても、撮ったものを絶対に世に出さなきゃいけないわけでもないんで、気兼ねなく撮ってもらえるんです。
『Road to LIVING』では今後もさまざまな企画が発信されるんでしょうか?
そうですね、カラオケ企画とか(笑)。自分がYouTubeをやるなんて想像もしてなかったけど、人はピンチの時にこそ新しいことをどんどん見つけていって、可能性を広げていくべきだと思いますね。
12月12日にはオンラインライヴが控えていますが、どんなものになりそうですか?
初のオンラインライヴなので、これは僕にとってもチャレンジですね。今、この状況下ではいろんなやり方や受け取り方があるだろうし、正解も不正解もないと思うんですよ。ただ、僕の中で一番こだわりたかったのが“生配信”ということで、みんなと同じ時間を共有するっていう事実は、どうしても欲しかったんです。なので、各地の映画館でのライヴ•ビューイングも設けましたし、みんなとリアルタイムでつながりたいというところは、今回強く打ち出しているところではあります。
それにしても“STREAMING!”というライヴタイトルはさすがです! これまで毎回“ING”で終わるワードをライヴ名にしてきたんですから、もうこれしかない!
ねぇ(笑)。“宮野くん、今度のストリーミングライヴのタイトルどうする?”って言われて、“あっ、“STREAMING!”でいいじゃないですか。“ING”がついているんで”って(笑)。ライブ自体が1年以上振りになるだけに、海外にも発信できるっていうのも新たなかたちですよね。今はつらいこともたくさんあるけれど、この状況を悲観的にとらえるだけじゃなく、やっぱり一歩踏み出すきっかけにしたいんです。僕自身、今まで配信ライヴなんて考えたこともなかったですけど、加速度的にデジタルな未来が近づいてきている今、できることをやるしかない。きっとエンタメをやっている人たちはみんな同じ気持ちだと思いますね。
同感です。全人類にとって想定外だった2020年も終わりに近づいていますが、この先も“今、できること”を追求していくしかないですよね。
僕も6月のメットライフドーム公演が中止になったのは非常に残念で、チーム内でも“今までにないものにしよう”という期待が大きかった分、スタッフ陣もすごく悔しい想いをしてて。どうしたらいいのか分からない時間が続いて、一時は僕らも足が止まってしまったんです。でも、僕らはエンタメを届ける側だから、“じゃあ、どうすればいいのか?”っていうことを考えて、なんとか方法を見つけ出していくしかないんですよね。逆にファンの方たちからすると、本当に何もなくなって喪失だけが残ってしまった、その状況を誰よりも自分の事のように悔しがってくれた…変な言い方ですけど、ありがたかったというか。結果、2020年というのは“その想いをどうにかつないでいけないだろうか?”ということを考える年になったと思っているんです。そのタイミングで「ZERO to INFINITY」という絆をテーマにした曲が作れたことは非常に意味があることだし、その歌詞に書いた想いの通り“光る未来”を求めて一緒に歩んでいけたらいいなと。そのために僕らができること、提供できるエンターテイメントを常に考えて、生み出していきたいので、楽しみに待っていてほしいですね。
取材:清水素子
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シングル「ZERO to INFINITY」2020年12月9日発売
KING RECORDS
- KICM-2068
- ¥1,300(税抜)
- ※初回製造分のみプレイパスコード封入
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『MAMORU MIYANO STUDIO LIVE ~STREAMING!~』
ミヤノマモル:『DEATH NOTE』『機動戦士ガンダム00』『ポケットモンスター ベストウイッシュ』『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE』シリーズ『ちはやふる』などのアニメ作品に加えて、『ファンタスティックビーストと魔法使いの旅』などの吹き替えにも出演する人気声優。2008年よりアーティスト活動をスタート。声優、俳優の現場で培った豊かな表現力と類い稀な歌声、そしてダンスを駆使した高いライヴパフォーマンス力を武器に、独自のエンターテインメントを追求し続け、日本武道館やさいたまスーパーアリーナでの単独公演も成功させている。宮野真守 オフィシャルHP
「ZERO to INFINITY」MV