「YES AND NO」DREAMS COME TRUEから窮屈に生きている私たちへ

「YES AND NO」DREAMS COME TRUEから窮屈に生きている私たちへ

「YES AND NO」DREAMS COME TRUEから
窮屈に生きている私たちへ

投げかけられる問い

DREAMS COME TRUE - YES AND NO (Official Video)
DREAMS COME TRUEの通算54枚目シングルとなる新曲『YES AND NO』は、ドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」の主題歌として書き下ろされました。
配信リリースと同日に公開されたMVは、登場人物が宇宙のバンドからメッセージを受信して影響を受けていく様子をストーリー仕立てで描いたアニメーション作品となっています。

YES AND NO 歌詞 「DREAMS COME TRUE」
https://utaten.com/lyric/qk20038020
この楽曲の歌詞中には問いが多く含まれます。
少しずつ言葉を変えて登場するこの問いは、全て「許すこと」について言及したものであり「みんな」と「わたし」に投げかけられています。
そして「この世界で何が出来るの?」や「そしてわたしはどうするの?」から、許した後や許さなかった後の行動に何かを求めているようです。
他人には許せても自分は許せないと感じたことは、誰もがあるのではないでしょうか。

これは単に寛容であったり心が狭量であるといった話ではありません。
育ってきた環境や影響を受けた文化、教育など様々な要素によって積み上げられた常識が「許容」の判断を下しています。
つまり「許す」基準が人によって変わることは当然で、他人の判断に疑問を持つこともまた当然だということです。
境界線が曖昧になっていく善と悪
YES AND NO 歌詞 「DREAMS COME TRUE」
https://utaten.com/lyric/qk20038020
冒頭のフレーズから時間軸は「イマ」だということがわかりますね。
この世界では、人は「やらかしたら終わり」で「窮屈に生きている」そうです。
それにも関わらず「ビビリながら」「気配を普通にシェア」している様子は、どこか矛盾を感じます。
舞台背景や意味が読み取れる他の歌詞も見てみましょう。

YES AND NO 歌詞 「DREAMS COME TRUE」
https://utaten.com/lyric/qk20038020
「楽しいイヴェント」が少なく「ヒヨリミで生きてる」ことは、先程の描写とも繋がります。
3行目から読み取れるのは、悪いことが許されている世の中だということでしょう。
本質的に悪いことでも、完全に悪だという判定さえ受けなければ悪ではなくなる。
そんな理不尽がまかり通っている世界のようです。
さて、ここまでを読んで何か気付くことはないでしょうか。
私たちが生きる現代社会に似ていますよね。
特にSNSでのコミュニケーションや情報社会に限りなく近いと思います。

匿名性を盾にした誹謗中傷など、倫理観が危惧される近年のネット情勢には悪の定義が曖昧になっている事柄が多いです。
他人が気にも留めていなくても、自分には許せないことがネット上ではあるでしょう。
正義も悪もわからなくなって自分の判断に疑問を感じ、葛藤することも珍しくありません。
これを踏まえると、前述した問いとは私たち自身のものであり、この歌詞は現代社会の様相を描いたものだと言えるでしょう。
「選択をする」という選択
YES AND NO 歌詞 「DREAMS COME TRUE」
https://utaten.com/lyric/qk20038020
みんなが許したり、わたしが許せなかったり。
社会で生きていると納得のいかないことも多く経験します。
ですが、はじめに書いたように許せたり許せなかったりすることは当たり前のことで、それを気に病む必要はありません。
しかし、今の世間の基準は少しずつおかしくなっています。
声の大きい人が勝ったり、意見が多い方が正義と認められたり、物事の本質を捉えることなく是非が決まることも少なくありません。

そんな社会を描いた歌詞の末尾では「YES AND NO じゃない わたしだけの YES OR NO を手にする日思い描こう そこから始めよう」という言葉が綴られています。
どちらか一つのものを選ぶのではなく、両方を選んだり、どちらも選ばないこと。
「YES AND NO」は、それも一つの選択肢であることを教えてくれる言葉です。
裏を返せば、選ばないことなどはあり得ず、どんな答えも「YES OR NO」に内包されているとも言えます。
結局のところ私たちは、どう足掻こうと選択をしなければいけません。

だからこそ、この歌詞は「わたしだけの YES OR NO を手にする日思い描こう」と自分自身の選択を強く促す言葉で終わっているのです。
世間の言葉に流されるのではなく、自分自身で答えを決める。
その一歩が踏み出せれば、社会の様子も少しずつ変わっていくかもしれません。
『YES AND NO』を聴いて、自分自身の選択についてゆっくりと考えてみてはいかがでしょうか。

TEXT 富本A吉

UtaTen

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