【摩天楼オペラ インタビュー】
5つの個性が融合した
新たな音楽性
今回の歌詞は同じ主人公の
ストーリーをつなげたもの
「Reminiscence」はすごくシンセが活きる曲ですが、作曲したのはJaYくんなんですよね。
彩雨
JaYくんが作ってくれたデモのストリングスの重ね方がすごく良くて、それをもとに膨らませていったんです。だから、もともとシンフォニックだったものをよりシンフォニックにしようと思って取り組んだんですけど、ストリングスだけじゃなくて、キーボードだけになるパートのところでは打ち込みのドラムを入れたり、効果音を入れたり、映画音楽的な方向で作りましたね。
JaY
この曲を作った時は、別に大した想いはなかったんですよ。でも、苑さんがAメロやBメロのメロディーを付けてくれて、その上で書いてもらった歌詞が僕の中では刺さって。その瞬間、この曲に血が流れたというか。
苑
今回の5曲の歌詞は同じ主人公でストーリーをつなげて書いているんですけど、4曲目の「Reminiscence」のテーマは別れだったんです、恋愛的な意味での。僕、歌詞を書いている時は、その主人公になりきっているんで、これは結構納得できるものになりましたね。それをJaYに送ったら“刺さりました”って返ってきたので、“よし!”と思いました(笑)。
ストーリー仕立にするというアイディアの発端はどこにあったんですか?
苑
曲が全てが出来上がって、曲順まで全員で相談して決まったあとですね。EP…僕的にはミニアルバムなんですけど(笑)、ミニアルバムってシングルよりも作品めいている印象が昔からあるんですよ。今回の5曲は起承転結がものすごくあるので、これはひとつの物語にできるんじゃないかと考え始めたところから、これは恋愛だっていうことに気づいて。1曲目の「Chronos」の激しさだったりは出会いの時の印象に感じたんですね。2曲目の「Kiss」は“付き合うってこんなに楽しいんだ!”ってなったところ。3曲目の「Silence」では絶対にこの楽しい日々がいつまでも続くわけがない…少しアンニュイな雰囲気を持っている曲だったので、主人公的にもちょっとマンネリが出てきたり、ほつれが見えてくる。「Reminiscence」は切ないバラードだったので、ここで別れるんだなと。そして、5曲目の「Anemone」で現代に戻ってくる。“僕たちが歩いた時間はこういう時間だったんだね”というのを、やっと俯瞰できるようになるまでに主人公が成長するんです。そういうストーリーが見えたんですよ。
JaY
俺っすよ、これ(笑)。ほんまなんすよ!
“ほんまなんすよ!”って(笑)。こういう恋愛をしてきたと?
JaY
「孤独を知るには一秒も長すぎる」(2018年6月発表のシングル「Invisible Chaos」のカップリング曲)って曲があるんですけど、僕の曲なんですよ。別れの曲なんですけど、僕の中では主人公は死ぬという話なんですよ。その時に突き刺さったのもあって、アンサーソングとして『Human Dignity』に入っている「Cee」っていうインストを書いたんです。そして、今回のこの歌詞ですからね。「Reminiscence」の《足を止めたまま時は過ぎた》《この先にあなたはいなくても》って、ほんまに自分のことやって思ったんですよ。
とても興味深い逸話ですね。
燿
最初に歌詞のテーマを恋愛にするって苑くんが言ってきた時、一般的なというかルンルンした感じの…(笑)。
苑
ただ単に恋愛って言われると、ルンルンしてるイメージはあるよね(笑)。
燿
そうそう(笑)。でも、ちゃんと苑くんらしい世界観で仕上がっててすごいと思いました。
響
最初に歌詞が届いた時より、曲に乗せた時のほうが響きましたね。僕にとってはメロディーありきの歌詞なんですよ。あと、「Anemone」には「Chronos」と同じ一節が出てくるんですけど、そういう遊び心みたいなものもいいですね。
「Anemone」は花の名前をタイトルにしてますけど、ここでは赤いアネモネなんですよね。
苑
花言葉が色によって違うんですよ。赤いアネモネの場合、“君を愛す”なんですよね。他のものだと“あなたを信じて待つ”とか“儚い恋”とか、また少し違う意味合いになってくるんです。最初にこの花を知ったのは、村上 龍さんの小説『コインロッカーベイビーズ』だったと思うんですけど、曲の雰囲気と言葉の響きが合いそうだとふと思い出して、ここで使ってみたんですよね。
ライヴでは、このストーリーをそのまま再現するかたちになりそうですか?
苑
やりたいですけど、ちょっと強すぎる可能性も…要は5曲だけやって、そこからまた違うライヴが始まるみたいになってしまうと、それはそれでどうなんだろうとも思いますし。まだどうなるか分からないですけど、この『Chronos』の5曲が一番目立つような効果的なセットリストにはしたいですよね。
彩雨
このCDを再生すると、アカペラで始まるというのが結構美味しいと思ってて。それがライヴではどのように始まるのか…僕らも具体的なことはまだ詰めてないですけど、結構観どころになると思いますね。
苑
こういう世の中の状況なので、スケジュールが変わってくる可能性もありますけど、開催するものと思って準備はしてるんですけどね。
JaY
マジでどうなんですかね。俺らはやる気でいます!
取材:土屋京輔