【摩天楼オペラ インタビュー】
5つの個性が融合した
新たな音楽性
“パワーアップさせてやるぜ!”
という意気込みがあった
最終日の渋谷TSUTAYA O-EAST公演のエンディング映像では、ツアータイトルにも冠されていた“9038270”という数字の意味も明かされましたよね。全国を駆け巡った、その移動距離を表すものだと。そして、今春に新たなシングルをリリースすることも発表されましたが、結果的には今回のEP『Chronos』になるわけで。そんな今作はアルバム『Human Dignity』のリリースツアーで得ていた手応えもあり、よりポジティブな気分で制作に臨めたのではないかと思うのですが。
苑
『Human Dignity』で、この5人でどんな音が作れるかという第一歩が見えたんですね。“それをもっとカッコ良くするにはどうしたらいいんだろう?”というところで、話し合いをして作っていったんです。だから、何となく曲出しをしてということではなく、“パワーアップさせてやるぜ!”という意気込みがありました。
話し合いの場では、具体的にどういう言葉が交わされたんですか?
苑
発信者はJaYと響だったんですけど、僕たちがこの5人で音を合わせた時に、新しく入った彼らふたりのラウド系の音と今までの音とをどう合致させて、最終的に摩天楼オペラにするか。それが『Human Dignity』で見えて、さらにこの音でいくなら、もっともっとモダンに、もっともっとヘヴィに突き詰めたほうがいいという話があったんです。
JaY
自分が書く曲に関しては、常に自分がやりたいことを提示しているんですけど、苑さんがメロディーを持ってきた時、“こうしたほうがいいんじゃないか”や“ああしたほうがいいんじゃないか”とかをすごく言ったかな。例えば、今まで6弦ギターの1音半下げでやってたのを7弦ギターのG#にしてるみたいな。ただ音を太く、低くしてヘヴィにするのは簡単なんですけど、それ以上にフレージングであったり、バッキングが重要になってくるので、そこをどう組み合わせていくか。この『Chronos』に関してはそういった面ですごく凝ってますし、今までの摩天楼オペラの感じではないと思いますね。
実際に新しい摩天楼オペラだという印象を受けますよね。
響
JaYさんが持ってくる曲は今言ったように、ラウドっぽい要素がもともと入っているんですけど、苑さんがメロディーを持ってきたものに関しても、例えば「Chronos」に関して言うと、JaYさんがアレンジを加えていく中で思いっ切りブレイクダウンが入ったり。そこまでやるなら、僕もかなり得意としているそのスタイルを全力で出そうみたいな感じで作っていきましたね。
必然的に音像の広がりは出てくると思うんです。そこに関しは制作において新たな取り組みが求められる面もありそうですが?
彩雨
僕自身、摩天楼オペラの音像が変わろうとしていることについては賛成派というか、僕もそのほうがいいと思ったんですね。とはいえ、キーボード的には特に意識するところではないんですね。曲の世界観を深めていくという意味でも、別に意識的には何も変わってなくて。世界観を深め、高めるのがキーボード的な役割だし。だから、どんな音も自然と入れていったような感じにはなったのかなと、結果的には思いますね。
では、『Human Dignity』のツアーを終えた摩天楼オペラが次に出す作品として、どういうものにしたかったのでしょう?
彩雨
そうですね…ぶっ飛んだものである必要はないと思うんですけど、新しい面というのは常に必要だと思うんですね。同じことをかたちだけ変えてやり続けていくのはバンドとして良くないと思うし、今までやってこなかったアプローチ、個々の特性、そういうものをいかにバランス良く融合させるか。今回の5曲が集まったのはすごく良かったと思います。
燿
結果的にというか、そういうものを作ろうとも思ってましたけど、今までの摩天楼オペラの要素もありつつ、新しい色もブレンドされた一枚にはなったと思います。
その“今までの摩天楼オペラの要素”とは?
燿
これは聴いた人の判断になりますけど、パッと聴きで苑くんの歌、歌っているメロディーに広がりは感じられるかもしれないですけど、今までのものとそんなに違和感はなくて。アレンジ的にもベースは今までとアプローチをそんなには変えてないですし、アヤックス(彩雨の愛称)もそんなに変わってない。ただ、何だかんだで13年目ですけど、いい意味で“摩天楼オペラはこうだから”というのはまったくないんですよ。