シアターBRAVA!の精神を受け継ぐ大
阪の新劇場、MBSがプロジェクトの詳
細と現状を明らかに

NODA・MAPや劇団☆新感線などの注目公演を数多く打ちながらも、2016年5月末に惜しまれながら閉館した、大阪の放送局MBS(毎日放送)が運営した劇場 シアターBRAVA!(以下、BRAVA)。この後進となる劇場が、JR大阪駅西側に新設されることが昨年末に発表されたが、その詳細と現状を報告する記者会見が、1月16日(水)にMBS本社(大阪市北区)で行われた。
会見に出席したのは、新劇場の運営に直接携わるMBSメディアホールディングスの黒田雅浩氏と、武田浩治氏。武田氏はかつてBRAVAの支配人を務め、今回の計画でも中心的な役割を果たしている。
記者会見で説明する「MBSメディアホールディングス」の黒田雅浩氏(左)と武田浩治氏(右)。 撮影=吉永美和子
BRAVAが、用地契約終了のために閉館した後、MBSはすぐに代替となる劇場探しに奔走したという。その中で、大阪中央郵便局跡地の再開発「梅田3丁目計画(仮称)」で新設される複合ビル内に、劇場を設置する案が浮上。様々な調整が行われた結果、昨年末にようやく情報公開になった。
「梅田3丁目計画(仮称)」のエリアは、JR大阪駅と隣接するのみならず、JR北新地駅、阪急大阪梅田駅、阪神大阪梅田駅、大阪メトロ梅田駅・東梅田駅・西梅田駅が徒歩圏内。また2023年にはエリア北側にJRうめきた(大阪)地下駅が開業する予定なので、合計8つも最寄り駅があることに。日本でもトップクラスのアクセスの良さゆえ、関西圏だけでなく、西日本全域からの集客が大きく見込まれる。
「梅田3丁目計画(仮称)」 予定地と周辺のアクセスの状況
また劇場構造に関しては、基本的には舞台・客席ともBRAVAのものを引き継ぎつつ、今の時代に合わせてアップデートする。かつてのBRAVAは、舞台上の好きな所に穴を空けられたり、水や火が(法律の範囲内で)使い放題など演出上の自由度が高く、故・蜷川幸雄を始め多くの演出家に支持された。
ただそれでも当然「もうちょっとこうして欲しい」という声は上がっていたという。今回は一から新しい空間を作れる強みを活かし、利用者から直接集まった様々な意見を、今後の劇場づくりにどんどん取り入れていく。今のところ大きく進化する点として、舞台サイド花道を客席中通路付近まで伸ばし、宝塚大劇場の「銀橋」のように使える構造が採用される予定。また舞台裏には劇場専用のエレベーターが設けられるなど、商業施設内の劇場としては、搬入・搬出にかなり融通がきく見通しとなっている。
そして客席もBRAVAと同じく、どの席からもステージが近く感じられるとともに、舞台に意識が集中できるような環境づくりを重視。一方で、BRAVA時代にはなかった2階客席へのエレベーターなど、バリアフリー面は大きく進化させていく。またホワイエ(劇場の入口から観客席までの広い通路)は北側を一面ガラス張りとし、外の風景を楽しめるようにするなど、公演前後も快適に過ごせる空間作りが検討されているという。
「梅田3丁目計画(仮称)」 劇場客席イメージ ※変更になる場合があります。
ハード面が安心できそうであれば、当然気になるのはソフト面……こけら落としを始め、どんな演目の芝居や、アーティストのライブが行われるかだろう。こちらに関しては、現時点ではまったくの白紙。これからは、かつてBRAVAを愛用していた劇団や制作会社を中心に、本格的な交渉に入っていくという。
ソフト面について武田氏は「劇場の使命としては、3つ要素があります。一つは関西のお客様に、国内外の超一流のものを見ていただける劇場でありたい。二つ目は、それを外から持ってくるだけでなく、関西に根付いた伝統芸能などを、新しい人が取り込めるような企画や演目で紹介することで、関西の文化も活性化できれば。もう一つは、放送局が関わっているというポジションを活かし、放送や配信を通して、そういった取り組みを広く世間に発信していければと思っています」と展望を語った。
また2025年には『大阪万博』が開催されるが、この劇場も何らかの形で関わることを視野に入れている。武田氏は「70年の大阪万博の記録を見ると、万博会場以外の劇場でも大物アーティストの公演があったりと、世界のエンターテインメントがいろんな所に集結していたんです。この気概が今の大阪にあるんだろうか? と思いながらも、僕らの立場では何か元気づけるような、一流のものを紹介できることができれば良いなという思いがあります」と期待を寄せた。
「梅田3丁目計画(仮称)」 劇場ホワイエイメージ ※変更になる場合があります。
ちなみに劇場名は、BRAVAの名前を引き継ぐのか、あるいはまったく新しい名称にするのか、また最近流行りのネーミングライツを取り入れるのかなど、こちらもまだ討議中。この劇場が入るビルの名称もまだ未定なので、もしかしたらその名前に合わせた劇場名になるかもしれないとのことだ。
この会見中で武田氏は「BRAVAがない間、いろんな(BRAVAがあれば上演されていたような)いい作品が関西で観られなかったとか、(BRAVAを)使いたかった関西の劇団が、その期間行き場に困っていたというのを、具体的に色々伺っていました。ブランク期間ができたことを、大変申し訳なく思っています」と話していたのが印象に残った。確かにBRAVAがなくなって以降、特に東京の有力劇団&劇場プロデュースの関西公演が実現しなかったり、公演があっても京都や兵庫に流れる傾向にあった。この新劇場ができることで、以前の流れは多少なりとも取り戻せることが期待できる。
また、BRAVAを埋める集客力はまだ持たないが、将来が有望な劇団に対して、規模に応じた会場をマッチングするなど、若手の積極的な支援も行っていたBRAVA。この地元のアシストも「劇場」という本拠地ができることで、再び活発になるに違いない。2024年夏の開場に向けて、今後も様々なニュースが飛び出してくるはずのMBS新劇場。SPICEでもその動向を徹底的にチェックしていきたい。
取材・文・撮影=吉永美和子

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