MIYAVI

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【MIYAVI インタビュー】
日本語で歌うことが、
自分自身のアイデンティティーに
つながっていく

MIYAVIの歌ではなく、
聴いてくれる人の歌であるべき

“ヴォーカリストとしての自分のファンではない”とおっしゃいましたけど、これまでのMIYAVIさんの表現はやはりギターが中心だったわけですが、歌うことに対しては躊躇しているところがあったと?

海外へ行くようになって、言語もそうですけど、歌唱のレベルに関しても、やっぱり欧米はすごく高いですし、その中で自分が何をもってそこに存在するのかというと、やっぱりギターだったんですよね。でも、『SAMURAI SESSIONS』シリーズを経て、いろんなアーティストと一緒にやっていく中で、自分の中でも“自分の歌、自分の声で表現できる部分もあるのかな”と思い始めて。今回は久しぶりに…いや、初めて歌うことを抵抗なく楽しめた。…うん、基本的にどこかにあったんでしょうね、“自分はギタリストだ”という意識が。でも、歌がその表現の邪魔をしなくなってきたというか。コンポーザーにとって、コンポーズした時に自分の中にある楽曲のイメージを歌唱力が邪魔することがあってはならないわけですよ。ヴォーカリストにはあってもいいことなのか分からないですけど、コンポーザーとしてはあってはならないわけで、そこを意識しちゃうと、歌唱することに対してそこまで積極的になれなかったんです。でも、今回は自分のイメージを損なうことなく…MIYAVIなりにですけど、歌えるようになってきたかなと。Céline DionとSam Smithが歌ったあとで俺が歌えるかと言ったら、そこまでの自信はないですけど(苦笑)。でも、Eric ClaptonとかJohn MayerとかGary Clark Jr.とか、ああいったギターと歌とを含めて表現するという意味では、やっとそのステージに立てたかなという感じがしますね。

収録曲の歌詞はすごく前向きなものばかりですが、これは今話されたヴォーカリストとしての自信といったものと関係しますか?

いや、そうではないですね。歌詞の内容について意識したのは“聴いてくれる人たちにとっての一人称でいられるか”ということで。MIYAVIの歌ではないというか、聴いてくれる人の歌であるべきだと思ったんです。“僕たち”ではなく、“僕”なんですね。一人称で、聴いてくれる人たちに響いて、なおかつ聴いてくれる人たちが歌えるものであることは意識しました。

私小説ではなく、リスナーのための歌であるという?

そこは意識しましたし、歌詞は常に前向きなものであるべきとは思っています。ただ、センチメンタルな部分や切ない部分であったり、焦燥感や無力感であったり、虚無感や刹那的な感情であったりを表した歌詞もたくさんあって、あまり単にポジティブな方向だけに行かないようにはしましたね。

「Walk With Me」には《孤独と自由は 隣り合わせ いつか別れが 来るのなら 愛は要らないと 思ってた》なんてフレーズもあります。

そうですね。「Walk With Me」に関して言うと、やっぱりソロアーティストって“独りでやってる感”がすごくあるんです。でも、“自分は決して独りじゃないんだ”と。パートナーでもあり、友人でもあり、ファンでもあり…そうした人たちと一緒にこの時代を生きているという歌ですね。オーディエンスにも一緒に歌ってほしい。

その辺は「Under The Same Sky」にも同じテーマが横たわっているというか。いずれにしても、全体の聴き応えとしては、決して後ろ向きにとらえられるものではないですよね。

ええ。それはないです。「Other Side」にしても「We Can’t Stop It (Rewind)」にしてもそうで、冷たくて無慈悲な社会の中で生き抜くという決意を歌ったもので、時の流れは戻らない…「We Can’t Stop It (Rewind)」はまさにそういうことなんですけど、そこでの切なさを表してます。思い出は思い出であり、思い出の中に生きることはできない。でも、最終的には“次に行く”ということで、ベクトルは絶対に前を向いている。それはもう自分のモットーでありますね。聴く人をどういう気持ちにさせたいかと言ったら、ただドヨ~ンとさせても仕方がないし、やっぱりどこかで前を向いてもらうためにやっているというのが根本的にあるので。それはどの歌詞も、そうだと思いますね。ただ、そうは言っても“イエーイ!”で終わるだけの歌詞を書くつもりはないということです。

「Tears On Fire」のように世界の現状をシリアスに綴った内容もありますし。

「Tears On Fire=涙が燃えるほどに現状の社会は混沌としていて、やっぱりその中で無力さを感じるわけですよ。どれだけ俺たちが音楽で御託を並べようと世界は今すぐ変わらないし、“自分にもっと力があったら”“自分にもっと影響力があったら”…“もっと”というのは常にあります。「Tears On Fire」ではその気持ち自体を楽曲にしてみました。

個人的には「Tears On Fire」の《たとえ届かなくても この声 枯れるまで I cry, cry, cry 俺は叫び続ける》というフレーズがとても素晴らしいと思います。この前向きさは胸に刺さりますね。

そうであってほしいと思います。それは世界情勢に対してだけじゃなくて…ね。いろんなシチュエーションがあると思うんですけど、それぞれの人生、それぞれの環境の中で、この楽曲が背中を押してくれたらいいと思う。僕が歌うことで、“自分ももっと頑張ろう!”って再決心、再決意してもらえるんだとしたら、それはすごく幸せなことですね。

取材:帆苅智之

アルバム『NO SLEEP TILL TOKYO』2019年7月24日発売 Virgin Music
    • 【通常盤】
    • TYCT-60144
    • ¥3,000(税抜)

『MIYAVI North America Tour 2019 “NO SLEEP TILL TOKYO”』

7/25(木) Vancouver | Vogue   
7/26(金) Seattle | Neptune’s  
7/27(土) Portland | Crystal Ballroom
7/29(月) San Francisco | Slim’s
7/30(火) Santa Ana | Observatory
8/03(土) Tucson | El Rialto Theatre  
8/05(月) Dallas | Trees         
8/06(火) Houston | Scout Bar       
8/07(水) Austin | Come and Take It Live
8/09(金) Mexico City | Sala Puebla
8/11(日) San Antonio | Vibes Event Center
8/13(火) Chicago | House of Blues
8/15(木) Detroit | El Club
8/16(金) Toronto | Queen Elizabeth Theatre
8/17(土) Montreal | Otakuthon Festival
8/19(月) New York | Sony Music Hall
8/24(土) Atlanta | The Masquerade

MIYAVI プロフィール

ミヤヴィ:1981年生まれ、大阪府出身のソロアーティスト/ギタリスト。エレクトリックギターをピックを使わずに全て指で弾くという、独自の“スラップ奏法”でギタリストとして世界中から注目を集め、これまでに北米・南米・ヨーロッパ・アジア・オーストラリアなど約30カ国350公演以上のライヴを行なっている。13年6月には自身のアーティスト名を冠した世界デビューアルバム『MIYAVI』をリリースし、アジア、ヨーロッパ、北米など世界各国でリリースされワールドツアーと共に話題を呼んだ。また、アンジェリーナ・ジョリー監督映画『UNBROKEN』も出演し、俳優としてハリウッドデビューも果たしている。17年にはUNHCR大使に就任。常に世界に向けて挑戦を続ける“サムライ・ギタリスト”であり、ワールドワイドに活躍する今後最も期待のおける日本人アーティストのひとり。MIYAVI オフィシャルHP

DAOKO × MIYAVI「千客万来」MV

アルバム『NO SLEEP TILL TOKYO』
全曲試聴ダイジェスト映像

OKMusic編集部

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