桑田佳祐、3度目の
『ひとり紅白歌合戦』で
「YOUNG MAN」など
リスペクトを込めた演出を披露
桑田佳祐によるパシフィコ横浜での『Act Against AIDS(AAA)』コンサートが5年ぶりに開催された。今回は2008年、そして前回の2013年に行なわれ、大好評を博した桑田佳祐による名企画『ひとり紅白歌合戦』の第三回目。すでに発表されている通り、平成という時代が終わろうとしているこの時期をひと区切りとし、東京オリンピックを迎える2020年の7月末に、AAA活動がその役割を終えることに伴い、桑田の『ひとり紅白歌合戦』も今回でついに完結することとなった。
これまで同様、今回もボリュームたっぷりのステージを展開。古くは戦後間もない昭和20年代の名曲から、最近の平成のヒット曲に至るまで、アンコールも含めなんと全55曲を熱唱。どんな時代のどんな歌手の曲でもすべて自分のものとしてしまう力量は、まさに国民的歌手・ミュージシャンとしての桑田佳祐の面目躍如。『ひとり紅白歌合戦』自体が桑田佳祐の発明による企画だが、ゆえに桑田佳祐にしかできない企画であることが改めて明らかとなった。4時間弱にもわたるそのステージの中で、数々の極上エンタテインメントが披露され、桑田からのさまざまな素晴らしいメッセージが発せられた。
序盤ブロックで歌われた「涙くんさよなら」は、2017年末、本家『紅白歌合戦』内で放送された朝ドラ『ひよっこ』のスピンオフドラマの中で、桑田が浜口庫之助に扮して歌った曲。浜口が生誕100年であったことから、彼へのリスペクトも含め歌われた曲を今回も披露。桑田の唄に合わせて、バンドのバックメンバーがひとりひとりステージに登場する様に、会場は大きな歓声に包まれた。また『フォーク&ニューミュージック対決』と題されたコーナーでは、松山千春の「大空と大地の中で」、加藤登紀子の「知床旅情」が続けて歌われた。曲紹介では“今年、大きな地震があった北海道。みなさんへ歌でエールを!”とナレーションが流れるなど、桑田の細やかな気遣いを垣間見ることができた選曲、そしてパフォーマンスであった。
桑田は93年のAAA発足当時から、ライブを中心に様々な形でその活動に携わってきた。その完結編としての意味合いも持つ今回のコンサートの中では、もちろんエイズ啓発に対するメッセージも随所で発せられた。
「世界の国からこんにちは」では、“巡り会い 愛し合う 時が来たなら 大切な 大切な 人を守ろう”、“お互いに お互いにエイズを 知〜ろ〜う!!”と、また洋楽のヒット曲「Havana」でも、“真剣に もっと大切に愛し合い パートナーを大切に”、“性はもっと豊かなもので思いやりの気持ちを持って互いの命を守ろうよ それが愛というものなんだ”というフレーズを替え歌にして、AAAのメッセージを歌の中に込めた。
桑田佳祐は前川清の長年のファンであり、過去の『ひとり紅白歌合戦』でも二回とも“内山田洋とクール・ファイブ"の曲を披露している。その際桑田がコスプレをし、クール・ファイブのそれぞれのメンバーに扮した映像が流れて会場の大爆笑を誘うという演出はもはや定番だが、今回も期待通り「中の島ブルース」で、五人五役を演じた“ヅラ山田洋とクールファイブ"が画面に登場し会場を沸かせた。さらにその映像内に途中からは、同様のコスプレをした大泉洋が登場。ユーモアたっぷりの表情で五人の桑田と絡み、一際大きな笑いが会場中に巻き起こった。まさに“ヅラ山田洋と大泉洋とクール・ファイブ"誕生の瞬間であった(笑)
コンサート中盤、紅組でも白組でもない『特別枠コーナー』として、ザ・ドリフターズのテーマと共に現れたのはなんと法被姿のサザンオールスターズのメンバー。ドリフのメンバーも顔負けのギャグも織り交ぜつつ、「いい湯だな」をメンバー全員で歌い終わるとメンバーからは“来年はツアーでお会いしましょう!”という嬉しい言葉が飛び出すとともに“サザンオールスターズ来年もよろしくお願い致します”というメッセージがビジョンに映し出され、会場全体が大きな歓声に包まれ、2019年の全国ツアーに向けたファンの大きな期待の高まりがうかがわれた。
本編終盤では、今年惜しまれつつ亡くなった西城秀樹の名曲「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」で会場全体が、振り付けと共に大盛り上がり。盛り上がる気持ちの一方で、ビジョンに映された秀樹の姿に哀惜の念を禁じえなかった人も多かったはず。さらに“Y.M.C.A.”の連呼が“M.O.M.O.K.O”に変わるとともに「YOUNG MAN」からメドレーでつながったのが、さくらももこが詞を書き桑田が曲をつけて歌ったちびまる子ちゃんのテーマ曲「100万年の幸せ!!」。ビジョンに映ったのはもちろん、ちびまる子ちゃんをはじめとした、さくらももこが生み出した数々の登場キャラクターであった。極上にショーアップされた歓喜の中に、亡き人たちへのリスペクトを込めるという桑田佳祐にしかできない、すばらしい哀悼の表現に多くの人が涙したに違いない。
アンコールが始まると、桑田佳祐自身の声でナレーションが流れ始めた。“流行歌。ヒット曲”という出だしで始まったその口上は、現代社会と流行歌・ヒット曲の関係、そして大衆音楽作家としての自分の役割を、冷静に俯瞰しているかのような内容であり、その口上は次のような表現で締められていた。
“Act Against AIDSの活動自体は2020年に終焉を迎えるが、世の中にはその他にもさまざまな問題が山積みとなっている。流行歌。ヒット曲。大衆と、ほどよくがっぷり四つに組み、新たな音楽を作り続けていくことを、私は辞めないだろう。そして、そうした問題にこれからも向き合っていこうと思う。平成三十年というひとつの時代の節目に、私はそう思いを新たにするのだ”。ひとり紅白歌合戦という偉業を完結させ、AAA活動にひとつの区切りをつけつつも、桑田佳祐の新たな決意表明が今回のステージから滲み出ていたということができるだろう。
Photo by 西槇太一
■桑田佳祐 Act Against AIDS 2018『平成三十年度! 第三回ひとり紅白歌合戦』放映情報
※12月25日(火)夜7:00~WOWOWで放送
https://www.wowow.co.jp/music/kuwata/
これまで同様、今回もボリュームたっぷりのステージを展開。古くは戦後間もない昭和20年代の名曲から、最近の平成のヒット曲に至るまで、アンコールも含めなんと全55曲を熱唱。どんな時代のどんな歌手の曲でもすべて自分のものとしてしまう力量は、まさに国民的歌手・ミュージシャンとしての桑田佳祐の面目躍如。『ひとり紅白歌合戦』自体が桑田佳祐の発明による企画だが、ゆえに桑田佳祐にしかできない企画であることが改めて明らかとなった。4時間弱にもわたるそのステージの中で、数々の極上エンタテインメントが披露され、桑田からのさまざまな素晴らしいメッセージが発せられた。
序盤ブロックで歌われた「涙くんさよなら」は、2017年末、本家『紅白歌合戦』内で放送された朝ドラ『ひよっこ』のスピンオフドラマの中で、桑田が浜口庫之助に扮して歌った曲。浜口が生誕100年であったことから、彼へのリスペクトも含め歌われた曲を今回も披露。桑田の唄に合わせて、バンドのバックメンバーがひとりひとりステージに登場する様に、会場は大きな歓声に包まれた。また『フォーク&ニューミュージック対決』と題されたコーナーでは、松山千春の「大空と大地の中で」、加藤登紀子の「知床旅情」が続けて歌われた。曲紹介では“今年、大きな地震があった北海道。みなさんへ歌でエールを!”とナレーションが流れるなど、桑田の細やかな気遣いを垣間見ることができた選曲、そしてパフォーマンスであった。
桑田は93年のAAA発足当時から、ライブを中心に様々な形でその活動に携わってきた。その完結編としての意味合いも持つ今回のコンサートの中では、もちろんエイズ啓発に対するメッセージも随所で発せられた。
「世界の国からこんにちは」では、“巡り会い 愛し合う 時が来たなら 大切な 大切な 人を守ろう”、“お互いに お互いにエイズを 知〜ろ〜う!!”と、また洋楽のヒット曲「Havana」でも、“真剣に もっと大切に愛し合い パートナーを大切に”、“性はもっと豊かなもので思いやりの気持ちを持って互いの命を守ろうよ それが愛というものなんだ”というフレーズを替え歌にして、AAAのメッセージを歌の中に込めた。
桑田佳祐は前川清の長年のファンであり、過去の『ひとり紅白歌合戦』でも二回とも“内山田洋とクール・ファイブ"の曲を披露している。その際桑田がコスプレをし、クール・ファイブのそれぞれのメンバーに扮した映像が流れて会場の大爆笑を誘うという演出はもはや定番だが、今回も期待通り「中の島ブルース」で、五人五役を演じた“ヅラ山田洋とクールファイブ"が画面に登場し会場を沸かせた。さらにその映像内に途中からは、同様のコスプレをした大泉洋が登場。ユーモアたっぷりの表情で五人の桑田と絡み、一際大きな笑いが会場中に巻き起こった。まさに“ヅラ山田洋と大泉洋とクール・ファイブ"誕生の瞬間であった(笑)
コンサート中盤、紅組でも白組でもない『特別枠コーナー』として、ザ・ドリフターズのテーマと共に現れたのはなんと法被姿のサザンオールスターズのメンバー。ドリフのメンバーも顔負けのギャグも織り交ぜつつ、「いい湯だな」をメンバー全員で歌い終わるとメンバーからは“来年はツアーでお会いしましょう!”という嬉しい言葉が飛び出すとともに“サザンオールスターズ来年もよろしくお願い致します”というメッセージがビジョンに映し出され、会場全体が大きな歓声に包まれ、2019年の全国ツアーに向けたファンの大きな期待の高まりがうかがわれた。
本編終盤では、今年惜しまれつつ亡くなった西城秀樹の名曲「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」で会場全体が、振り付けと共に大盛り上がり。盛り上がる気持ちの一方で、ビジョンに映された秀樹の姿に哀惜の念を禁じえなかった人も多かったはず。さらに“Y.M.C.A.”の連呼が“M.O.M.O.K.O”に変わるとともに「YOUNG MAN」からメドレーでつながったのが、さくらももこが詞を書き桑田が曲をつけて歌ったちびまる子ちゃんのテーマ曲「100万年の幸せ!!」。ビジョンに映ったのはもちろん、ちびまる子ちゃんをはじめとした、さくらももこが生み出した数々の登場キャラクターであった。極上にショーアップされた歓喜の中に、亡き人たちへのリスペクトを込めるという桑田佳祐にしかできない、すばらしい哀悼の表現に多くの人が涙したに違いない。
アンコールが始まると、桑田佳祐自身の声でナレーションが流れ始めた。“流行歌。ヒット曲”という出だしで始まったその口上は、現代社会と流行歌・ヒット曲の関係、そして大衆音楽作家としての自分の役割を、冷静に俯瞰しているかのような内容であり、その口上は次のような表現で締められていた。
“Act Against AIDSの活動自体は2020年に終焉を迎えるが、世の中にはその他にもさまざまな問題が山積みとなっている。流行歌。ヒット曲。大衆と、ほどよくがっぷり四つに組み、新たな音楽を作り続けていくことを、私は辞めないだろう。そして、そうした問題にこれからも向き合っていこうと思う。平成三十年というひとつの時代の節目に、私はそう思いを新たにするのだ”。ひとり紅白歌合戦という偉業を完結させ、AAA活動にひとつの区切りをつけつつも、桑田佳祐の新たな決意表明が今回のステージから滲み出ていたということができるだろう。
Photo by 西槇太一
■桑田佳祐 Act Against AIDS 2018『平成三十年度! 第三回ひとり紅白歌合戦』放映情報
※12月25日(火)夜7:00~WOWOWで放送
https://www.wowow.co.jp/music/kuwata/
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