「臼井孝のヒット曲探検隊
~アーティスト別 ベストヒット20」
国民的アーティスト、
宇多田ヒカルのヒットを探る
全世代が新曲を期待している
数少ないアーティスト
その中で、宇多田ヒカルは、全世代が今でも新曲を期待している数少ないアーティストの一人ではないだろうか。彼女の音楽性については何冊もの評論本にされるほど興味深く、短いコラムでは語り切れないだろうから、ここではざっくりとヒット曲の変遷を中心に見ていきたい。
ノンタイアップの無名な新人ながら
デビューシングルが約4万枚をセールス
それよりもむしろ、業界関係者向けに行われたレコード会社(当時:東芝EMI)によるコンベンションの影響が大きいだろう。それは、1998年の秋に初めて行なわれ、まだデビュー前だった宇多田ヒカルの存在感に、多くの音楽系メディア(ラジオ局や衛星波チャンネル、音楽雑誌の出版社など)やCDショップなどがいち早く目をつけ、大々的に展開していった(同コンベンション後、椎名林檎の店頭や各メディアの扱いが格段に上がったことも、彼女の翌年の大ブレイクにつながっているだろう)。
それゆえ、タレント活動などでコアファンをつけていない新人だったにもかかわらず、初登場週でCDは12cm CDが12位、8cm CDが20位、合算し4位相当となる約4.1万枚を売り上げた。ノンタイアップでありながら、まるで当時大ヒットが確約されていたドラマ主題歌や清涼飲料水のCM曲のようなチャートアクションとなった(それゆえ、彼女にならって、デビュー前からラジオのレギュラーDJを始めたり、大量のFM局や衛星波チャンネルでパワープレイを獲得したりするアーティストが急増した)。
J-POPファンや煩型の洋楽ファン
さらには年配層をも巻き込んでいく
その後も2004年まではCDシングル、またはアルバムが常に年間TOP10に入るほどの高セールスをキープ。2004年に全米デビューを果たし、その一方で日本での作品はより内省的なものが目立つようになり、2006年頃にはCDセールスはやや落ち着いてきていた。
しかし、2007年のシングル「Flavor Of Life」でCDセールスが50万枚を突破、さらに2000年代半ばより活発になってきた音楽配信でも、着うた+着うたフルなどの総計700万ダウンロードという当時の日本記録を打ち立てて、新たに音楽配信世代にもファンを広げた。
2010年にアーティスト活動を休止するが
2016年には音楽活動を再開
その中で、2016年に音楽活動を再開。8年ぶりのオリジナルとなるアルバム『Fantome』はCD出荷+ダウンロードにてミリオンセラーとなり、その存在感をさらに知らしめることとなる。
2017年には20年近く所属していたレコード会社、ユニバーサルミュージック(デビュー当時は東芝EMI)からソニー・ミュージックに移籍し、「大空で抱きしめて」「Forevermore」「あなた」と立て続けに3作もの配信シングルを発表。中でも温かなバラードの「あなた」は発売2か月足らずで25万ダウンロードを超えるヒットとなっている。
いくつかの試練を乗り越えつつも、20年間ヒットを出し続けている宇多田ヒカルの総合的なヒットは何になるだろうか。
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