She, in the haze、ツアーファイナル
で中毒者続出!
仮面で顔を隠した“彼女”は長い巡礼の旅を終え、霧の中から私たちの前に現れた。2017年6月25日、下北沢MOSAiCにてShe, in the haze(以下、SITH)の『“Paranoid Tour 2017”-東京-Tour Final Oneman』の始まりだ。
まずは1st EPから「Doubt」「Paranoid」、そして1st ミニアルバムから「Claudia」「Freezing」と圧倒的な轟音が世界を破壊していく。vo.gtのyu-kiの操るままに、最前列を占める10代のファンを中心に会場全体のボルテージは一気に上がっていく。轟音に身をまかせた私たちに、その後も次々とHeavyな、あるいはPOPな新曲が届けられる。SITH自身が言うところの「非日常の物語空間」の幕開けである。
ライブ中盤7曲目「Mama said」冒頭、yu-kiはひとこと「ここからは時系列、彼は何を求めていたのか?」とオーディエンスに謎の問いを投げる。SITHの作品の多くは“死”が起点となる。“死”のみが全ての人々に平等であり、“死”に向かう時系列の中で、人は人格や個性を、喜びや悲しみを形成する。彼は、何を求めて“死”へと向かうのか。「Behind」の轟音を通過し、「Calling」でついにオーディエンスは、yu-kiに導かれ大合唱に加わることとなる。溢れんばかりの観客とメンバー。yu-kiが後のMCで言うところの100人以上の“She, in the haze”が誕生した瞬間だ。大勢のオーディエンスが上げる声は、自らの慟哭なのか、霞の向こうに消えた彼女を呼び戻す声なのか、それとも神を讃える賛美歌なのか。
大合唱の余韻を残したまま、さらなる新曲を経由して、いよいよ「Stars」へと世界は昇華していく。全てが英語で歌われるSITHの楽曲だが、たとえ言葉は分からずとも“音”だけで、私たちはステージの向こう側に「死への憧れ」だけではなく「生への喜び」をも内包させた壮大なヴィジョンを目撃する。そしてついに12曲目「Teddy」。この美しい世界にサヨナラを言う。
なんて美しいライブなんだろう。観客だけが白い霧の中に取り残されてしまった。アンコールの拍手を届ける相手はどこにもいない。アンコールはいらない。“彼女”は再び霧の向こうへ行ってしまったのだから。
yu-kiはステージ上で多くを語らない。その本質は“音”から判断するしかない。そして音源と全く違う音をSITHはLiveで出す。それは音源よりも相当にハードな音だ。果たしてSITHは世界を救う神なのか、あるいは破壊を目的としたトリックスターなのか。音源を聴き考え、ライブで判断して欲しい。彼らは何者なのか。彼らから目が離せない。
text by 荒木敦史
photo by 硯谷昭広
まずは1st EPから「Doubt」「Paranoid」、そして1st ミニアルバムから「Claudia」「Freezing」と圧倒的な轟音が世界を破壊していく。vo.gtのyu-kiの操るままに、最前列を占める10代のファンを中心に会場全体のボルテージは一気に上がっていく。轟音に身をまかせた私たちに、その後も次々とHeavyな、あるいはPOPな新曲が届けられる。SITH自身が言うところの「非日常の物語空間」の幕開けである。
ライブ中盤7曲目「Mama said」冒頭、yu-kiはひとこと「ここからは時系列、彼は何を求めていたのか?」とオーディエンスに謎の問いを投げる。SITHの作品の多くは“死”が起点となる。“死”のみが全ての人々に平等であり、“死”に向かう時系列の中で、人は人格や個性を、喜びや悲しみを形成する。彼は、何を求めて“死”へと向かうのか。「Behind」の轟音を通過し、「Calling」でついにオーディエンスは、yu-kiに導かれ大合唱に加わることとなる。溢れんばかりの観客とメンバー。yu-kiが後のMCで言うところの100人以上の“She, in the haze”が誕生した瞬間だ。大勢のオーディエンスが上げる声は、自らの慟哭なのか、霞の向こうに消えた彼女を呼び戻す声なのか、それとも神を讃える賛美歌なのか。
大合唱の余韻を残したまま、さらなる新曲を経由して、いよいよ「Stars」へと世界は昇華していく。全てが英語で歌われるSITHの楽曲だが、たとえ言葉は分からずとも“音”だけで、私たちはステージの向こう側に「死への憧れ」だけではなく「生への喜び」をも内包させた壮大なヴィジョンを目撃する。そしてついに12曲目「Teddy」。この美しい世界にサヨナラを言う。
なんて美しいライブなんだろう。観客だけが白い霧の中に取り残されてしまった。アンコールの拍手を届ける相手はどこにもいない。アンコールはいらない。“彼女”は再び霧の向こうへ行ってしまったのだから。
yu-kiはステージ上で多くを語らない。その本質は“音”から判断するしかない。そして音源と全く違う音をSITHはLiveで出す。それは音源よりも相当にハードな音だ。果たしてSITHは世界を救う神なのか、あるいは破壊を目的としたトリックスターなのか。音源を聴き考え、ライブで判断して欲しい。彼らは何者なのか。彼らから目が離せない。
text by 荒木敦史
photo by 硯谷昭広