【e-sound speaker】
取材:石田博嗣
日常の地続きにあるような身近な作品
e-sound speakerのメジャー1stアルバムが完成した。そのタイトルは“瞬間”。まずは、そこに込めた思いについて尋ねてみた。
「雲間からふっと覗いた、力強い光のようなイメージが込められています。“瞬間”という言葉には刹那的だからこそ感じられる強いものがあると思ったので」(大迫)
そんな本作を聴いて印象的だったのは、どの楽曲からもリアリティーが感じられたこと。まさに、自身の日常の中の“瞬間”が切り取られていると言えるだろう。
「そうですね、その瞬間感じた思いを書いてあります。日常の地続きにあるような身近な作品を作れたらと思っていました」(大迫)
アルバムはプロローグ的な「瞬間、雲の切れ間から」で幕を開け、さまざまな日常のシーンを切り取った等身大の楽曲が続いていく。しかし、「小さな真実」は少し違った。こうしている現在でも海の向こうで起こっている怒号と銃声。自分とは直接的なことではないものの、それもまた日常の中で起こっている出来事だ。そのことを思った時の“瞬間”の気持ちが歌われていた。
「毎日のように起きる事件、悲しいニュース。同じ世界にいながら、まるでどこか遠い世界の出来事のように感じてしまうことがあります。『小さな真実』は、そういった虚無感を歌ってます」(大迫)
また、2ピースロックバンドとしてドラムとキーボードをサポートに加え、精力的にライヴ活動してきた彼ららしく、体温を感じさせるほど生々しいバンドサウンドが構築されているところにも注目したい。
「ライヴ感をそのままパッケージできればと思ってました。バンドによる一発録りにもトライしています」(大迫)
“不確かな永遠より 触れていたいよ現在だけ”と歌う「one」で幕を閉じるアルバム『瞬間』。聴き終わった時、12編の短編集を読み終えたような感覚が胸に残った。
「これまでで最もバラエティーに富んだアルバムながら、日常のある“瞬間”を切り取るという意味において統一感のある作品になったと思います。曲順や曲間もこだわって作っているので、それも含めて一本の映画のように楽しんでもらえたらうれしいです。僕らにとっても新しい始まりの一枚になったと思います」(大迫)