【やなぎなぎ】ギュッと結んだかたち
につながる思いを託した
TV アニメ『凪のあすから』新EDテーマソング「三つ葉の結びめ」。前作「アクアテラリウム」が隔離された世界、断絶感を表していたのに対し、今回は人と人とが“結ばれる”様子を描いた疾走感あふれる楽曲となった。
取材:桂泉晴名
新曲「三つ葉の結びめ」はアップテンポで、前作のしっとりした「アクアテラリウム」とは対照的な曲ですね。
前回はアニメ『凪のあすから』がまだ物語の中盤で話が解決していなかったので、ループしているような楽曲になっていたんです。でも、今回は物語の結末に向けて全体を俯瞰して見て、希望が持てるような明るい曲にしようと思いました。
作曲は『凪のあすから』音楽制作の出羽良彰さんですね。
出羽さんはamazarashiというバンドの編曲をやられていて、 私も耳に馴染んでいたんです。そうしたら『凪のあすから』の音楽は出羽さんが担当されていることを知って。出羽さんご自身も作品の世界観が頭に入っているから、その上で作られるものは、またいつもと違ったものになるかな、と考えて今回お願いすることにしました。
制作はどういった感じで進んでいったのでしょうか?
最初にデモをいただいて、そこに私が“もう少しイントロでぐっと掴む感じが欲しいです”とか“最初からベースをガーンと入れちゃっていいです”といったリクエストをさせていただいて。また、サビの《鮮やかに結んで》という歌詞を伸ばすところは当初短めだったんですけれど、サビを一気に印象付けたいのでちょっと長く伸ばしたり。そういった試行錯誤した後、今のかたちになったんです。出羽さんは柔らかい感じの方なので、私のお願いに対しても“分かりました!”と柔軟に対応してくださって、すごく歌いやすい曲になりました。
ちなみに“三つ葉の結びめ”とはどういうものなのですか?
もともと“三つ葉結び目”という紐の結び方があって、一見単純そうに見えながら、結構しっかり結ばれるんです。『凪のあすから』は“人と人とのつながり”が一番のテーマとして描かれていたので、自分に自信のない人でも周りの人たちがその人の気持ちをギュッと結んで引っ張ってくれる…そんなイメージにしたくて、このタイトルになったんです。
今回のジャケットにはやなぎさんが登場しないのですね。
三つ葉結び目のシンボルが印象的だったので、これを生かしたいな、と思って。実はジャケット写真にはこっそり私が作った結び目も混ぜていただいているんですよ(笑)。CGではなくて、ひとつひとつ作ったものを写真撮りしてはめていて。いろいろな毛糸や紐で作ったものを並べています。
やなぎさんがどの結び目を作ったのか気になります(笑)。 そんな「三つ葉の結びめ」のMVは白い部屋にやなぎさんがカラフルな絵を描いていく映像になっているという。
曲ができて“どういうMVを作ろうかな?”と考えた時に、真っ白い部屋にいろいろな色が入っていったら面白いと思って。MVは3日かけて撮影したのですが、床を含めて4面の壁に絵を描くのは初めてで、かなりドキドキしました。
傘や靴、蝶々といった絵を描かれたのはどんな理由から?
最初真っ白な部屋に自分だけがいて、そこにだんだんと他の人のものが加わっていくイメージですね。その人が愛用している靴とか、傘とかが自分の部屋に増えていく。最後に描いた蝶々は自分自身をモチーフに描いているんです。
なるほど。そして、2曲目「インテンション・プロペラント」は 宇宙に関連するワードがかなり使われていますね。
曲を先に作っていただいていたんですけれど、聴いた時にサビの部分で上に上がっていく感じがあるなと思って。結構ノイズが混じった音源を多く使っている楽曲で、バチバチッて音が入っていたりして。そこから“宇宙っぽいなぁ”と感じて、前から宇宙に対する憧れや恐怖感をテーマとして詞を書いてみたかったので、ここにうまくはまるんじゃないかと考えたんです。この曲を作曲・編曲してくれたのはARCHITECTさんという若手の作家さんで、曲を聴かせてもらったらすごく良くて。そしたら実は昔知り合いだった人なんですよ。まだすごく若い方なのですが、とても引き出しが多いので、もっと曲を聴いてみたいですね。
3曲目の「unjour」はやなぎさん作詞作曲ですね。
『unjour』という絵本があって、文字が一切なく、絵も簡単なデッサンだけで完成されているんです。明確なストーリーは何も書かれていないんですけれど、デッサンがすごく正確で、ちょっとした線でもちゃんと人に見えるんですよ。犬が主人公のお話 で、冒頭に捨てられたんだろうな、というところから始まっていって…車を見送っている犬の絵があるんですね。そこから“もしかしてこの子は1回人間に裏切られているのかな”と。そして、最後に犬がもうひとりの人間と出会うのですが、そこで“もう1回人間と一緒に生きてみよう”という気持ちが生まれたのかなと思って。この曲はその絵本『unjour』のスピンオフとして考えました。
ちょっと浮遊感のある曲ですね。
乗せている歌詞は必ずしも明るいものではないのですが、別にまったく希望がないわけではなくて。だから、沈みすぎないように気を付けましたね。最初の部分《テクテクと歩いてる》というところは、テクテク感というか(笑)、跳ねる感じを合わせてみたりして。『unjour』の世界は別に絶望だけじゃないっていう気持ちを込めたくて、こういうふわふわした感じの曲になりました。
この曲も「三つ葉の結びめ」と対照的だと感じました。
確かに「三つ葉の結びめ」は音数も多いですし、パーッと開けている感じがするんですけれど、「unjour」は私ひとりで作っているので、1カ所に収束していく感じはあります。
やなぎさんはアンコールツアー真っ最中ですが、ライヴに対する手応えはいかがですか?
今回はライヴでやるために作った「You can count on me」でお客さんが盛り上がってくれるんです。私も引っ張られてかなりステージで動いていて。新曲も発売前だけどお客さんがワンコーラス覚えてくれていて、すごく嬉しいですね。
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「三つ葉の結びめ」2014年02月19日発売NBCユニバーサル・エンターテイメント
- 【初回限定盤(DVD付)】
- GNCA-0325 1680円
ヤナギナギ:2006年からライヴハウスやインターネット上で音楽活動を開始。12年2月にTVアニメ『あの夏で待ってる』EDテーマ「ビードロ模様」でメジャーデビュー。繊細な声質と印象的な楽曲の世界観で、活躍の場を広げている。13年7月リリースの1stアルバム『エウアル』はオリコンウィークリーチャート初登場4位を記録。13年10月には1stアルバム発売 記念ワンマンツアー『エウアル』、翌14年1月から2月にかけて『エウアル』アンコールツアーを開催した。やなぎなぎ オフィシャルHP