【GRANRODEO】わざと聴き取りづらく
歌うというのが裏テーマ
活動11年目に突入したGRANRODEOが放つニューシングル「TRASH CANDY」は、ロックでキャッチーという従来の魅力を継承しながら、ふたりの中二病的な感性も伴った、新たな魅力を発揮した一枚に仕上がった。
取材:榑林史章
何を歌ってるか知りたいだろ? 歌詞カ
ードを見たいだろ?って(笑)
アニメ『文豪ストレイドッグス』のOPテーマでもある新曲「TRASH CANDY」は、最初からシンセが鳴っているという意外性がありますね。
e-ZUKA
そうそう。どういう曲にしようかという会議があったんだけど、そこで“シンセから始めよう!”ということだけ決まりまして。とりあえずシンセから始まっておけば、オッ!と違いを感じてもらえるんじゃないかって。舞の海(元力士)の猫だましっていうか(笑)。
でも、すぐギターリフが入ってくるという。
e-ZUKA
そのギターリフも、すごくヘヴィロックな感じでね。前シングルの「メモリーズ」もヘヴィな感じがあったけど、あれは青春のさわやかさもテーマになっていたから、今回みたいなヘヴィなリフがくれば、久々に“俺の(私の)好きなグランが帰ってきた!”と、昔の「tRANCE」(2009年4月発表の10thシングル)とかが好きなファンは思ってくれるんじゃないかな。でも、そう思わせておいて、歌が始まったらバックはまたシンセだけになるんだけど(笑)。
いい意味での裏切りが。
e-ZUKA
そうですね。フックだらけです。落とし穴だらけっていうか(笑)。ラジオでフルバージョンを流した時に、“また新しい感じがきた!”という反応が結構あって評判が良かったので、ひと安心しています。
ひと安心したということは、結構苦労したと?
e-ZUKA
まぁ、しましたね。実は2テイク目なんですよ。最初に作ったのはもっとメロディアスなもので、それこそ今までっぽいというか、「カナリア」(2009年10月発売の3rdアルバム『BRUSH the SCAR LEMON』収録曲)みたいな憂いや切なさがあったんですけど、結果それを排除して、メロディーはもう少したたみかけるようにして、やさぐれた感じを出しています。
KISHOWさんは、この曲を最初に聴いてどんな印象を持ったのですか?
KISHOW
「メモリーズ」と比べると、こっちはフラットで音数が少ない感じだったので、ギャップを感じましたね。でも、わりとシンプルなので、歌い方次第でいろんな色が付けられるなと思いましたね。
サビ前の譜割りが、独特ですよね。
KISHOW
そうなんですよね。「メモリーズ」の時から、すでにこの兆候はあるんだけど。“そこで言葉を区切るの?”みたいなのは自分でも思っていて、多少気持ち悪くても、聴いているうちに慣れて癖になったらいいなっていう。
そこがフックになって聴き直しちゃう。
KISHOW
そうそう。それが裏テーマです。わざと聴き取りづらく歌うという。わざと何を歌ってるか分からなくして、購買意欲を煽ろうかと。何を歌ってるか知りたいだろ? 歌詞カードを見たいだろ?って(笑)。
歌詞検索サイトというのがありますが…
KISHOW
うわ〜、もう世知辛い世の中ですな(笑)。
リズムのノリ方もちょっとストレートではないような。
e-ZUKA
分かんないけど、そうなっちゃったんですよね。1番と2番のメロディーや構成はまったく違いますから。Bメロの長さも違うし、バックの音も違うし。何ででしょうかね? やる気が出てきたみたいです(笑)。
やる気が出るきっかけが何かあったのですか?
e-ZUKA
これを作ってる時かな? FLOWのアルバム『♯10』を聴いたんです。そうしたら、これがまぁよくできたアルバムで。それに励まされたというか、モチベーションが上がったところがあって。今回のシングルの他の2曲も、1番と2番が違っていたりするんですよ。そういう仕掛けが散りばめられているのは、やる気スイッチが入ったんでしょうね。FLOWが僕のやる気スイッチを押してくれたという(笑)。
2番はちょっと違う曲みたいな。
e-ZUKA
「偏愛の輪舞曲」(2013年4月発売の19thシングル)の時は、フルサイズをまず作って、そこからいいところを摘んで編集してテレビサイズを作ったんですね。でも、今回は1番は頭からテレビサイズに合わせて作っているから、CDでフルサイズを聴いた時、少し違和感があるかもしれない。“もう終わりなの? そのパート”って感じで、すぐ次のパートにいっちゃうんです。2番のBメロは僕がいつも作る自然なメロディーの流れなんだけど、その代わりにAメロからBメロにいく、つなぎのパートがなかったりするし。そういうのもやりながらできていった感じですね。
いわゆるAメロ、Bメロ、サビというような、単純な構成とは違うんですね。
e-ZUKA
そうですね。カラオケとかで1番を覚えたから歌えると思ったら、そうはいかないという。わりと僕が作る時って、昔はもっとシンプルな作りで、ちょっと変化を入れるくらいだったんです。でも、今回はもっと細かく流れを作りましたね。最近の曲っていうか、そういう作り方をする人っていっぱいいて。ヒャダインの曲とかは、構成がわけ分からないし(笑)。
昨今のアイドルの曲とかアニソンの曲は、複雑怪奇な構成が多いですよ。
e-ZUKA
そう。昨年、森口博子さんのシングル「星より先に見つけてあげる」のカップリング曲「悲しみたちを抱きしめて」を作ったんです。表題曲をまさしくヒャダインが作っていたんだけど、1番と2番のメロが全然違ってて。“1番で出てきたメロディーがもう出てこないんだ〜! それでもいいんだ〜!”って、衝撃的でしたね。僕なんか古い人間だから、同じメロディーがもう1回出てきてほしいって思っちゃうわけですよ。“1番のあのメロディーを、もう1回歌いたいのになぁ”って。でも、そういうのが現代のポップスなんだなって。早送りさせないみたいな。飛ばそうとすると“あ、お客さん、そこ飛ばすと違うのが出てきますから”っていう(笑)。それも最後まで飽きさせずに聴かせるテクというか、上手いもんだな〜って関心しちゃった(笑)。